【四章】46
—— 四章 —— 糸 —— ——
〈一〉
蜜さんが来てからひと月が経った。
10月から11月になり、季節も秋から冬になった影響でか、ぐんと寒くなった気がする。漏れる白い息。まぁ寒いのは、今私が居るのが早朝の外だというのもあるが。
目的の場所、木天蓼荘に着く。見た目はごく普通の二階建てアパート。特徴があるとすれば、敷地内に多くの【猫】が屯っている点だろうか。
一歩、敷地内に足を踏み入れると、一斉に猫が此方を見た。大抵の者はここで睨まれた鼠のように物怖じして帰るらしい。
猫らは訪問者が私と解ると、すぐに興味を無くしたようにそっぽを向く。度々訪問する私を覚えていたのだろう。こんなに寒々しく澄んだ空気の中でも、平気な顔でアパートを護る彼等は優秀な番人である。
一◯一号室の前に立ちインターホンを押すと、扉の奥から呼び出し音が聴こえ、すぐに『トテトテ』と足音が近づいて来て、
「(ガチャ)あ、待ってたよ糸さん」
透き通るような(少し伸びた)白髪。ゾッとする程に綺麗な顔立ち。
割烹着姿の蜜さんが柔らかな表情で私を出迎え、「寒かったでしょ」と私の両手を包む。ジンワリと染み込んでくる温もり。
「やっぱり、冷たい」
慈しむような彼のそんな伏せ目に、内側から温かくなって来る。前までこんな自然な表情も、気の利いたクサイ行動も自然と出来る子では無かったのに。
「ねぇ。ドキッとした?」
ニヤケつつ訊ねて来る。此方の反応を楽しんでるのだ。捻くれぶりも成長している。




