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「ウピョピョピョ! なるほどぉ、つまりは卯月と蜜は運命のカップルってことウサねぇ! もう離さないピョン!」と抱きついて来る卯月さん。

「なにをぼけとるんじゃこの〈ろうがいうさぎ〉! きさまとみつが『きよくなまぐさくじょうねつてきでびょうてきなあか』でむすばれとるわけなかろう!」

「じゃあ翠の糸かウサ?」

「むむっ、むぐぅ……」


と黙る鋏。沈黙は肯定。完全にしてやられてる。


「ふむ、やはりね。――突然だが蜜ちゃん、憶えてるかい? ひと月前、私と君が初めて会った日の事を」


頷く。多分、校長も僕と『同じ結論』に達してる。


「君の縁が復活したのは数日前、五色神社に訪れた日からだ。なのに、ひと月前に私に『会えてしまっている』。これはつまり……私と蜜ちゃんも『特殊な縁で繋がれていた』という事だよね?」


鋏は何も言わない。恐らく肯定なのだろう。


「苦労してんだなぁ蜜はっ」


とケラケラ笑う樒さん。彼女らしい反応だ。同情されるより良い。


「さて。糞ガキの要望通り、そろそろ卯月が蜜に拘る理由を話すピョン。少し長くなるウサよ」


出来れば短くして欲しい。そろそろのぼせて来た。


「まず第一に……蜜は卯月と『同じ一家』の人間ピョン」


【因幡一家】。現在、卯月さんが長をつとめる一族である。傲岸不遜、天真爛漫、慇懃無礼……そのずる賢さで永く続いていたヤンチャな一家であったが、それも時代のうねりには勝てず、今は減少傾向。

そもそも、因幡一家は女系らしく産まれるのは女ばかり。男など滅多に……そう卯月さんが頭を抱えていたある日、僕が産まれた。


「蜜が誕生したのは月あかりの怠惰の間なんだウサよ〜。取り出したのも卯月ウサ! ちんちんを確認した時はそりゃあもう嬉しくって!」

「きさま! やはりみつのちんちんを!」

「ガキは少し黙ってるウサ」


加えて……産まれて来た男の子には特徴があった。初代の因幡一家を彷彿させる特徴の【白い髪と赤い瞳】。卯月さんは思った。『この子は大物になる』と。

愛情と期待を一身に受ける僕。全ては順調に進んでいると思われた――が――異変が起こる。


『ある日』を境に、誰も、僕の話題を出さなくなった。誰もが、僕の存在を認識出来なくなった。


例外としては、その『誰も』に、卯月さんが含まれて無いという事。翠の縁糸を持つがゆえの救いであり、苦悩。


「卯月は考えたピョン。蜜を卯月の元で育てようかって」


だが結局、行動には出なかった。そもそも運命に翻弄されやすい因果な因幡一族だ、『これは蜜に科せられた試練』と卯月さんは陰で見守る事にしたのだ。勿論、解決策を水面下で必死に模索しつつ。


そうして月日は過ぎ……ある朝……乙女校長が訪ねて来る。『縁の無い少年に心当たりは無いか?』と。

不思議な事に、この時この瞬間まで卯月さんは五色神社の『存在に辿り着けなかった』し、校長でも僕を見つける事は出来なかった。卯月さんに関しては、まず初めに行き当たってもおかしくない場所なのにだ。

複雑に絡まり合った縁が齎した不幸か、あるいは……。


「その後は、今までの停滞が嘘の様に、流れるように事が進んだピョン。乙女ちゃんは蜜を見つけて神社へと招いて――今に至る、ウサ」


卯月さんの話が(漸く)終わった。聞いての僕自身の思いは……うん、知らない所で色んな人に動いて貰っていたという感謝の気持ちと申し訳なさかな。


(僕なんかが、どう恩返しすれば卯月さんは喜ぶだろう)


そう考えた時、


「み、蜜?」


モミモミとその小さな肩を揉むぐらいしか思い付かなかった。何も無い僕の、しょうもない孝行。


「ぅぅ(ぐすっ)……本当に良かった……報われたウサ……」


肩を震わし俯く卯月さん。他の誰もが、鋏ですら何も言わずに成り行きを見守っている。それが少しだけ、むず痒かった。


「一族復興のぐすっ……沢山の女の子と、産めや増やせやするウサよ」

「させるかぼけ!」


流石に黙ってられなくなった鋏に苦笑しつつ、改めて、今温泉に入ってる面子でまともな人間は(文字通り二重の意味で)居ないのだなと、思う僕であった。


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