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旅館に着いたのは二○時過ぎ。既に夕食の時間も過ぎていたが、途中、尾裂狐先生のお仲間達とラーメン(家系)を食べたりしたので問題無し。
昨日と同じ自室に着き、
「蜜さん脱いで下さい」
早速制服を脱いだ。糸さんに言われる前に脱いだ。人目が無くなったらリラックス出来る格好になりたいのだ。
「……制服、貸して下さい」
「いいけど、どうするの?」
とタンクトップ&パンツスタイルの僕が訊くと、糸さんが旅行カバンから取り出したるは【ソーイングセット】。
流石にそのボロボロな制服を手作業だけで修復するのは無理があるだろう、そう思っていた僕だが、
「……(チクチクチクチク)」
ボロ雑巾のようだった制服がみるみる……というか、『傷自体』が痕跡無く消えていってる?
「わぁすごぉい」
と絶賛する僕に、糸さんは得意気にフフンと鼻から息を漏らす。
縁だけでは無く、物理的な傷まで繋げられるのか。 『糸』と名乗るに相応しい力だ。
「なんというか、いじらしいなぁ、いとよ(ぺろぺろ)」
「……(チクチクチクチク)」
ジュルルルジュッポジュッポとアイスキャンディーを頬張る鋏の言葉には無反応な糸さん。肩を竦めた鋏は、
「ふん。みつ、ふろにいくぞふろっ」
「あれ、何かデジャヴ? まぁ、いいや。糸さんは」
「私は先にこれを済ませます。お先にどうぞ」
「だ、そうだ。いくぞっ」
と鋏は僕に浴衣を着せ、手を引いて廊下へ連れ出す。何というか、相変わらずギスギスな二人だなぁ。似たような力を持ってて、性格というか本質もどこか似てるのに。同族嫌悪、とかいうやつ?
「――あれ。ふむ、見るに二人ともこれからお風呂かい?」
途中、浴衣姿の校長とバッタリ遭遇。長話でもさせられるかと警戒していたが、
「なら丁度いい。君達、この旅館特製の家族風呂があるのだけれど入らない? 私が『招待した者だけ』が入れる空間でね」
「?? みつ、かぞくぶろとはなんじゃ?」
「大浴場みたいに不特定多数の人が入る所と違って、家族だったり恋人同士が二人きりで入れるとこ」
「ことわるりゆうはないな!」
そんな訳で、校長から風呂の場所を教えて貰い、向かう事に。
「あ、そうだ蜜ちゃん、新しい制服の事だけど」
「必要なくなりました」
「何だか変な返しだね。まぁ、分かったよ、それじゃ『またね』」
……、……あ、失敗した。男子の制服くれって言えば男に戻れたな。今更もう遅いか。




