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帰りの船に乗り、特に海も荒れる事無く予定道理の運行で一時間後、無事港へ。


「やぁやぁ、おかえり。災難だったね」

「お前らあんま心配かけんなよ? ってか因幡も白錆もなんでボロボロなんだ」

「……」


船からおりた先には校長と担任の尾裂狐先生、それから、糸さんの三人が待っていた。

時刻は既に逢魔が時も越えた一七時過ぎ。他の生徒らは今頃箱根旅館行きのバスの中だ。


「いやぁ大変でしたよ校長ぉ。奥野島で神隠しに合ってですね(モグモグ)」

「おやモノちゃん、珍しい物を食べてるね。……彼女に会えたって事かな?」


言って校長は樒さんと僕をチラリと見、微笑。


「校長は知ってるんですか? 卯月ちゃんの事。まぁ知っててもおかしくないけど」

「うん、私もあの人には色々世話になっててね。でも彼女が月の萩を渡すなんて本当に稀だ。それ、裏の取引だと『都市部に城が建てられる』ぐらいの値がつくよ」

「ボァッ!? ゴホッゲホッ」


とむせるモノさん。だが時すでにお寿司、もう皆で食べ終わった後である。大変美味しゅうございました。


「ホラ、そろそろ行くぞお前ら。校長とアタシで送ってやるから」


と、いうわけで、僕と糸さんと鋏は尾裂狐先生の運転する車、他は校長の車で旅館に向かう事に。



——発進して少し経つも、未だ糸さんとの会話は無い。三人とも後部座席なのだが、糸さんたら此方も見ず外を眺めてらっしゃる。鋏は相変わらず(僕の太腿を枕に)寝てらっしゃる。


「何だ何だ五色家ぇ、辛気臭ぇなぁ。いつも臭ぇが今はよりヒデェぞ。……あ、聞けよ因幡ァ! 五色の奴な、竜宮城じゃあずっと携帯持ってソワソワしてて、お前からの連絡を(ゲシゲシッ)おいコラ五色! 後ろからシート蹴んな! 足跡つくだろ!」


怒鳴られた糸さんは、一瞬僕と目が合い、素早く再び窓の外に目をやった。……へぇ。


「ったく、因幡が来るまで五色はこんな荒れる生徒じゃ無かったってのに(ブオンブオン!)ん? ゲッ! あいつら!」


けたたましいマフラー音に狼狽する先生。後ろから、オラついた改造バイクやら車の集団が迫って来てるようで……しかし先生の反応を見るに、煽られて焦ってる様子でもなく。


「え〜っとあいつらはな、一0代の頃のアタシがヤンチャしてた時の仲間でな。ハマ(横浜)一番のチームの頭だったんだよ、アタシ。で、どこから嗅ぎつけたのか、アタシをからかいに来たらしい」


先生の言葉通り、よく見ると【先生の名が書かれた旗】やらを振っていたり、クリスマスのイルミネーションばりの光を放っていたりと歓迎ムード一色。


「はぁ。そんな社会のはみ出し者がよく教師になれましたね」

「本当の事だがオブラートに包めよ五色。……ヤンチャに明け暮れてたある日な、ハマで集会してたアタシらの前にあの人、校長がヒョコリと現れたんだ。で、騒音やら何やらで揉めて……校長一人に物理的にチームを潰されて……逆恨みでその後何度も校長に突っかかってたら、いつの間にか教師になってた」


ベタだなぁ……そう思っていたら、糸さんも同じ感想らしく、


「青春ドラマで使い古されたような展開ですね」

「うるせぇよ。——ま、お前らに言うのも変な感じだが……人の縁てモノはわからんもんだ」


うまく纏めてくれたな。何にせよ、先生が甘酸っぱい過去を僕らに吐露して黄昏るのは一向に構わない、のだが、


『ブオンブオンブオンブオンブオンブオンブオンブオンオオオオオンンンンン!!!!』


……。


「むぅ〜、なんじゃ〜、やかましいのぅ」


目を擦りつつ体を起こす鋏。チカチカと眩しい後ろの窓に目をやって、


「きせつはずれのほたるどもが、つるぎのあんそくをさまたげおってぇ……いくぞ、みつ……あのむしけらどもに、ほたるのたんめいさをじっかんさせようぞ」

「付き合おう」

「尾裂狐先生、今すぐ後ろのお仲間を静かにさせた方がいいですよ」

「なにするつもりだ五色家!?」


小田原厚木道路横に火垂るの墓を作るのです。

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