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和室へと案内された僕達は、中央にある囲炉裏を囲む様に座る。目の前にはお茶と饅頭。それを用意した幼女は今、席を外していた。


「ちょっと沙羅っち、毒味してみてよっ」

「いいよぉ。(モグ)……普通にうまい。うま過ぎるくらい。ん? なに『あーあ』みたいな顔してんの?」

「……、樒っち。オカルト部から見て、ここはどんな場所だと思う?」

「普通の旅館だろ? ――と、言いてぇ所だが、さてな。アタシは部長ほどオカルトに熱心でも専門知識もねぇが、本能的にここはおかしな所だとは思うぜ。モノは何が言いたいんだ?」

「実は……昨日シロロっちから一つ頼み事をされてね。『ウサギ島には神出鬼没な幻の旅館がある、出来れば一緒に調べて』と言われてたんだ。島の人に訊いたり、撮影中でも周りを注意深く観察してたんだけど見つからなくって……、そう思ってたらコレだよ」

「あ、それで思い出したけど、アタシもその件調べる為にウサギ島来たんだった。――ん? 何でシロロはモノにも頼んだんだ?」

「『どうせ樒と沙羅君は遊びそっちのけで忘れるから』だってさ」

「あのバタ臭アマ……」

「まぁ私の『ニュースを引き寄せる力』を期待してたのもあるらしいけど。で、私の見解だけど……ここは【迷いまよいが】の類じゃないかと思ってる」

「あ〜なんだっけか、『訪れた奴に幸福が訪れる』っていうオカルトな家だっけ」

「そう。『家の中には誰も居なくて、何か一つ物を持ち帰ればその人は幸福になる』ってのが話の基本かな? 今の状況とは微妙に違うけど……共通する部分は、そこは『異界』という点だね。現世とは異なった世界。注意すべきは、『異界の物を食べてはイケナイ』という事。戻れなくなるらしいから」

「マジかよモノさん最低だな」

「アリガトウサラッチ、ワスレナイヨ」

「心にも無い事を。っていうか、饅頭ならもう、因幡さんらも食べちゃってるよ?」

「え?」


『饅頭もお茶もうめぇ』と鋏と夢中でモチャモチャ食べていたら注目された。もう無いよ?


「……ええいっ、これで蜜ちゃんに何かあっては糸っちに顔向け出来んっ、毒を食らわば皿までっ、ジャーナリストは時には体を張らねばなのだっ」

「もっと静かに食えんのか」


饅頭を口に含むモノさんと樒さん、二人もその美味しさに目を見開いている。お代わりあるかな? お土産でもいいけど。


「ふぅ。さて、次は本題、あの『蜜ちゃんと見た目が似てる』幼女こと卯月ちゃんについてだけ「呼んだウサ?」ドワッハ!?」


足音すら無く幼女が戻って来ていた。


「え〜、えっとね! 今卯月ちゃんの話をしてたんだよ! お手伝いえらいなぁって!」

「ふふ、ありがとピョン。でも、卯月はお手伝いでは無く、ここ【月あかり】を一人で切り盛りしてるウサよ?」

「え?」


と口を開けるモノさんに、「では改めて」と幼女が三つ指をついて、


「本日は遠方より奥野島へ御足労いただき、ありがとうございます。わたくし、女将の卯月と申します。……こう見えても、皆様より一回りも二回りも年上なんだウサよ?」


俄かには信じ難い挨拶をした。あと、お付きのウサギもペコリと頭を下げる姿は何とも可愛らしい。


「卯月……卯月ねぇ。間違いないな」


と顎に手をあて何か納得してる様子の樒さんには誰も触れる様子は無く、


「と、年上って本当? 若作りってレベルじゃないねぇ……そもそも、この旅館は何なの?」

「何なの、とは? 『神出鬼没な仕様』についてウサ?」


誤魔化す素振りすら無くあっけらかんと言い放った幼女こと卯月さんに、モノさんは小さく頷く。


「御察しの通り、ここ月明かりは普通の旅館じゃないピョン。『悩み多き者だけが辿り着ける癒しの空間』――それがここウサ」


『何故奥野島で?』な理由は、単純に、この島の気候がウサギ達に合ってるからだと。ウサギは癒しの象徴、人々を癒すのが自らの使命だと、卯月さんは語る。


「ええっと……ちょっと整理させて。――云一0年前から奥野島に居て、数十匹以上のウサギを放ったのも管理してるのも、神出鬼没な癒しの宿を一人で切り盛りしてるのも、私達より年上なのも――全部卯月ちゃんって事でいいんだよね?」

「ウサッ(コクリ)」

「冗談だよね?」

「ウピョピョピョ」


と不気味に笑う卯月さんは、


「時に皆様、この和室に来てから何分が経過したと思うウサ?」


と唐突に問い掛けてくる。


「え、そりゃあ三0分以上は経って……アレ?」


腕時計をチラ見した沙羅さんの目が訝しげに細まる。


「まだ、五分も経ってない?」

「はぁ? 何言って――ッッ」


スマホを見たモノさんも動揺を隠せない。


「この部屋は、月明かりに七つある癒しの空間『七天国』が一つ【怠惰の間】。時間がゆっくり進む間だピョン!」

「……冗談、だよね?」


と、オカルトを目の当たりにし再び頬をひくつかせるモノさんに、


「ウピョピョピョ」


と再び不気味に笑う卯月さんであった。

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