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「ッハ」
目を開けると、周囲は闇。辛うじて、ボヤけた視界に天井の常夜灯だけがボヤけた橙色を照らしている。
……ぅぅ、頭がクラクラする。確か、ウィスキーボンボンを食べて……それで……
ハァ。まさか、自分にこんな弱点があったとは。んん? 口の中がサッパリしてる。糸さん、僕の歯を磨いてくれたのかも。要介護系居候。
「……トイレ」
フラフラな足取りで何とか洗面所まで行き……
「ふぅ」
……きっちりおしっこを済ませる。もし酔ったまま寝床で垂れ流しなんてしたら、糸さんと顔を合わせられなくなる。粗相をしても彼女の態度は変わらなそうだけど。
手を洗い、再びフラフラ布団の所に戻って――あれ?
どっちで寝てたっけ。部屋は暗く瞼が重い上に視界が掠れてるから、何が何やら。
ああん、もうどっちでもいいや、考えるの面倒い、二人の間で寝よう。
布団の下から潜り込み、二人の少女にぶつかりつつ上を目指す。
「ぷはっ。ふぅ」
――到着。もぅ動けない、このまま寝る……『ゴソゴソ』……ん……流石にどっちか起きちゃったか。
衣擦れ音はするけど、それが上下左右どこからなのかも判断出来ない。目を開ける気は無い。
サワサワ、サワサワ――んん、頬とか脇腹とかめっちゃ触ってくる。鋏か? ええぃベタベタとやかましい。
我慢出来なくなった僕はその方に手を伸ばし、グイッと浴衣を掴んで引き寄せ、相手を抱き締める。
「ッ……」
と、拘束され息を飲む相手。だが抵抗する様子は無い。これでもう、僕の眠りを邪魔できまい。
抱き心地はムッチリ柔らかく、触れる肌と髪は湿っぽく、ソープの落ち着く香りがして……
(あ、これ鋏じゃねぇな)
普段の冷静な僕ならここで解放してやる所だが、しかし、今は只々眠い。
余計な事は考えず、抱き枕の癖になる感触に酔いしれながら、このまま睡魔に身を委ねるのであった。




