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「……因みにシロロっち、今オカ部は何を追ってんの?」
「色々と同時進行だけど、ここ神奈川にも少し気になる場所があってね。明日、そこ向かうわ」
「楽しみだなぁ。モノさんも行くんでしょ? ウサギ島」
「温泉で泳がないでよ沙羅君」
「……、旅行中も相変わらずだね二人共」
とモノさん、背泳ぎをする沙羅さんからさり気なく目を逸らす。【つちのこ】がコンニチハしてるからね。
「ま、オカ部としては、他の仕事を止めてまでも、その脳筋の樒が興味を持った【相手】について調べたい所だけど(チラッ)」
ヒッ。完全に我ら五色神社組は蚊帳の外だったのに、またシロロさんがこっち見たっ。
「ふんふん。確かに、樒が好きそうなタイプね。沙羅君みたいな手の掛かる子っていうか、言う事聞かない生意気な弟タイプっていうか」
「(ピクッ)わかりますか?」
おっと糸さんが反応したぞ。てか褒められてないよね僕? あと『弟タイプ』って、まさかシロロさん……
「わかるわよ、雰囲気で。私から言える事はね五色さん、このタイプはしっかり捕まえとかないとダメって事。フワフワしてるから、重い女にならないと、あっちこっちに行っちゃうから」
同時に黙りこくる糸さんとモノさん。
「(スィー)ね? シロロさんって面白いでしょ」
おわ、沙羅さんいつの間に僕の隣に来たんだっ。同意を求められても困るんですけどっ。可愛いツチノコが丸見えなんですけどっ。
「あほをぬかすな、わっぱども」
久し振りに口を開いた鋏。今までずっと、室内風呂でのぼせていた身体——小さくなった分貧弱になるらしい——を湯船側の床の上で寝ながら冷ましていたのだ。僕におぶられて来た癖に偉そうだな。
「貴方は確か、因幡さんの妹さん……よね。アホとはどういう意味かしら?」
「とんちんかんなことばかりをはなして、あほがすぎてわらえてくる。そもそも、みつはつるぎいがい、きょうみなぞない。もりあがるのはかってだが、みつのおらんところでやっとれ」
寝転んだまま好き勝手言う鋏の所為で、
「蜜ちゃんの女性事情歪みすぎだよぉ」
とモノさんが僕に変な印象を抱いてしまった。
「アハ、面白い幼女ね。そうそう、これ位重くてクレイジーな女が良いのよ五色さん。じゃないと、あの欲しい物は必ず手にしたがる樒を止められないから」
「……重い女も何も、私は別に……飽くまで家族として……」
「クレイジーといえば、シロロさんは酷かったねぇ。僕が転校して来た初日、僕と再び仲良くなりたいが為に『僕の弱みを握って』近付いて来たりしてさ」
「懐かしいわねぇ」
——何てクレイジーな会話なんだ。重い女になるとこんな会話を普通にこなせるようになるのか。糸さんはそのままの君でいて。
「……、お先に失礼します(じゃぽん)」
糸さんが立ち上がり、湯船から出る。彼女の金魚のフンな僕も、必然、同じ行動に。
「あ、じゃあ私もこれ以上二人の邪魔は」
「操觚さんは少し残りなさい。明日の事で頼み事があるから」
「ふえええ」
と泣きそうな顔になるモノさん。頑張ってね。
鋏の側に行くと、鋏はカサカサと僕によじ登り、オンブの体勢でしがみついた。前足で上手く僕の股間を隠して貰う事も忘れずに。
「楽しかったわ。五色さんも因幡さんも、あと妹さんも、いつでもオカルト部に遊びに来てね。依頼があるなら優先してあげるし」
「……その時は」
と糸さんは頭を下げ、スタスタ足早に去る。僕も着いて行こうとして、
「ふん。やはり、ふろにつかろうがきえぬものじゃな。おまえらからかおる、あの【めすねこ】とおなじにおいは」
鋏がボソリ、何か重要そうな台詞を沙羅さんとシロロさんに吐き捨てた。案の定、その余計な一言にシロロさんは目を細め、
「……へぇ、本当に面白い幼女。やっぱり、貴方達は『こちら側』なのね」
ニコリと嬉しそうに、邪悪に、はにかんだ。
キ——ンと、一瞬で寒くなったように感じる外気。本能的に『長居は危険』と感じた僕は、鋏を背負ったままスタコラサッサと糸さんを追う。
『ギャー』と遠くから男子達の悲鳴。
樒さんに絶賛千切られ中の猛者達の断末魔だろう。成仏してくれ。




