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「そんなに今の彼が苦手ですか?」
「否定はしないけど……今のあの子、カメラに嵌り出したってのもあって。常に持ち歩いてて、大方明日もウサギの写真を撮りに行くんだろうけど……私、写真家と写真があまり好きじゃないんだ。ゲスいスクープ写真撮る奴は以ての外。そうなった原因は糸っちには前話したけど……ふふ、語らねばならぬようだね、蜜ちゃんにも私の過去をッ」
何も言ってないのにモノさんの語りが始まった
一般男性の父と女優の母から生まれたモノさん。
静かに暮らしていた操觚家に、ある日、悲劇が起こる。
とある有名カメラマンの男が撮った飲食店の風景写真に、意図せず、モノママと若手俳優が二人きりで食事をする様子が写ってしまったのだ。
モノママからすれば若手俳優とは仕事仲間同士の付き合いでしかなかったのだが、マスコミがそれで納得するワケがなく……
これを機にモノママは女優業を引退、モノパパとも離婚するという最悪の結末となってしまった。
「そんな事が中等部時代にあってねぇ。流石のモノさんも凹んだわけさ。……そんな時、糸っちがね、色々相談受けてくれたんだよ。縁切り神社の巫女らしく、『夫婦なんて所詮他人、縁なんて切れる事もある』ってズバッとさ。アレには救われたねぇ」
当時から相変わらずだったんだな糸さんは。
――その後、モノママは再婚をするワケだが……その相手男性は何と、問題の写真を撮ったカメラマン。
「ママと義父は幼馴染同士で昔から仲良かったってのもあったしね。……え? 義父を恨んでないかって? やぁ別に、面白い人だし、当時の事も必死に謝ってくれてたし、そもそも本人も悪気があったわけじゃないからね。ママも言ってたんだ、『あそこまで前夫が話の通じない奴だと思わなかった、別れて正解』って」
ならば、モノさんが恨むべきはマスコミであろう筈なのに、彼女が今注力している行動はマスコミのそれで。
「自分でもキッカケは忘れちゃったなぁ。でもニュースとか記事ってさ、悪くてゲスい内容があればさ、ほのぼので温かくなるのもあるじゃない? 前者を思いっきり喰らった私としては、後者を思いっきり盛り上げたいわけよ。自分自身が癒されたいのかもね。理解出来ない? 大丈夫、私もだから」
そして現在、彼女は報道部の枠を越えフリーランスとして実際に活躍している。元女優の母と我が校の校長のコネをフルに使い、あっちこっちと飛び回ってるようだ。
「ふふ……不幸な過去を持つもめげことなく、世界中を幸せにするニュースを届ける美少女フリーランサー操觚モノ……まだまだ稼ぐでぇぇ!」
でぇぇ――でぇ――ぇ――と彼女のゲスい声が浴場に響く中、糸さんがポツリ。
「沙羅さんと協力すれば、もっと素晴らしい記事が完成するでしょうに」
「しつこいよ糸っち!」
「聞いた話だと沙羅さんのカメラの腕前は天才のそれで、以前出した写真集は飛ぶように売れたとか。写真無しの記事ではこの先厳しいのでは?」
「ぅぅ、解ってるよぅ。でも上手く撮れないんだよぅ。一眼デジでもコンデジでもスマホでも毎回謎のブレが生じるし……」
「『ニュースを引き寄せる力』を持つが故の呪いかもしれませんね。以前のように、沙羅さんと仲良くしたくはないのですか?」
「ぅぅ……それは……でも私なんか……は!〜 い、いや、知らない! 関係ない! 何言ってるか解んない! 言葉解んない! 露天風呂行って来る!」
『ジャボン』と勢い良く風呂から上がったモノさんは、そのままズンズンと露天風呂の方へ去った。後ろ姿の肉付きが未成熟な中学生のソレだな(褒め言葉)。
「私達も露天風呂へ向かいましょうか」
普通今の展開からモノさんと同じ場所へ向かうか? と思ったが、この空気の読めなさはいかにも糸さんらしい。断る理由も無いので頷く。
『チャプン』っと静かに立ち上がった糸さんは、湯船のふちに畳んでいたタオルを縦に広げ、それで前を隠す。はみ出る横乳が扇情的でセクシー。
「ほら、出るよ鋏」
「(ゴボッ!)」
また逆立ちをして遊んでいた鋏のお尻を叩くと良い音が反響する。お返しとばかりに湯の中でおチ……体の一部を噛み付かれた。イタイイタイ。




