表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/151

21

「ん? お、ウチの学校の奴らバスに乗り出したぞっ。もう旅館に行くのか」


樒さんの言う通り、正気を取り戻した皆が既に移動を始めていた。クラス担任のヤンキー教師――今更だが名は尾裂狐おさき――も『早く乗れー』と叫んでいるから、僕らも急がなきゃだ。


「アタシは沙羅達と合流してくるわ、じゃあな。……っと、ホラよ蜜っ」


デジャヴ。昨日と同じように、樒さんは僕にコーラグミを放り投げ、去って行った。


「――、それ、樒さんからの頂き物だったのですね」


何故糸さんから粘っこいジト目を受けねばならんのか。


「お? 何やらネタの匂いがするよ? これは泥沼痴情のもつれスメ〜ルだッ」


モノさんがうるさい。


『ドンッ』


と。モノさんがうるさい所為で注意力散漫になった僕は、男の人とぶつかってしまう。


「すいません」


と顔を上げる。……イケメンだ。見た目は同い年ぐらいか。しかし、なんというか、目が死んでて負のオーラが凄い。

ぶつかった相手は、ギロリ――と僕を睨め付け、


「お、お前もぼくの邪魔をするのか!」


いきなり、意味不明な台詞を叫びながら襲い掛かって来た。

が……


「あ」


……ガッと、避け際の僕の足に引っ掛かり、相手は地面へヘッドスライディング。こ、これって事故だよな?


「かかかっ、やるのぅみつ。――ふむ、こやつおもしろいぞ。もつ【えんし】のほとんどが『くろい』」


芋虫のように蠢く彼を「ゆかいゆかい」とつま先で突つく鋏。

今の言葉が本当なら、さぞや辛い人生だったろう。ちょっとしたきっかけで爆発するのも止むなし、不幸ぶってた自分が恥ずかしい。


「ぼ、ぼくに楯突く事の意味を教えてやる! ママー! 助けてママー!」


どれ、鋏に黒いのを切って貰おうと思ったが……やめた。イラっとしたんで。


「どうしたのれんちゃん!?」


どこからともなく現れた、スーツ姿の品のある女性。転んだ蓮ちゃんの膝をさすりながら


「痛いの痛いの飛んでけ〜」


と励ましている。


「あちゃ〜、面倒臭い事になりそうだよ蜜ちゃん」


と耳元で囁くモノさん。


「あの女の人、【椿建設】の社長さんだよぉ。総資産額世界トップテンに入ってる大企業のねぇ。親バカでも有名で、息子【椿 蓮華(つばき れんげ)】の為ならどんな手段も辞さないとか」


はぇ〜、これがジャーナリストの情報網。しかし、確かにそれは面倒臭い事になりそうだ。


「しかたないのぅ」


と鋏は今にも僕の為に無茶する気満々だし。お前が頑張ったら赤レンガ倉庫が【別の赤】で染まっちゃいそうだし。どうしたものかと燻っていると、蓮ちゃんママが此方を『キッ』と睨み出し、


「貴方達、ウチの蓮ちゃんに――――え?」


だが、すぐ驚愕の表情に。


「そ、その制服って」

「おやおや? どうしたんだい蜜ちゃん達?」


おっ、良いタイミングで校長が現れた。地に伏せる蓮ちゃんを見た校長はすぐに状況を察した様子で。


「奇遇ですね椿さん。それより、ウ チ の 子 達 が な に か ?」

「い、いえ……乙女おとめ校長……ま、また、ウチの蓮華が人様に迷惑を掛けたようで……」


蓮ちゃんママが校長に虐められてる。大人の世界って怖い。というか校長の名字? って乙女かい。


「はぁ。息子さんを甘やかし過ぎですよ椿さん」

「お恥ずかしい限りです……ついつい、良くない事続きな我が子に甘くなってしまって」

「お気持ちは察します。ですがご安心を。蓮華君も来月から我が校の生徒、今の腐った性根も叩き上げられ立派な男になるでしょう」

「どうか……お願いします」

「ママが頭を下げるなんて!? ママ! この人何者なの!?」

「……帝釈学園の校長よ」

「あ、あの悪名だかい……?」


と身震いする蓮ちゃん。何をやったんだ乙女ちゃんは。


「ママ! やっぱりぼく学校行くのやだ! 今まで通り仕事の手伝いするから何とかしギャフン!?」


蓮ちゃんが面白い声を出した原因は、【糸さん】が彼の髪を掴んで地面に叩きつけた所為だ。レスラーか。

糸さんはグイッと蓮ちゃんの髪を引き上げ、自らの瞳と鼻血を垂らす彼の怯えた瞳とを合わせる。

――ん? 気の所為か、今一瞬、糸さんの瞳と髪が『黄色く』光った?


「男がピーピー泣き喚かないで下さい。……私は縁を扱う神社の巫女です。不本意ですが、貴方に今、『良縁』の願を掛けて上げました。どう活かすかは貴方次第です。コレでダメならばもう諦めなさい」


掴んだ髪を離し腰を上げた糸さんは、そのまま僕の所まで来て、


「行きましょうか」


と僕の手首を掴み、バスの方へと引っ張る。

チラリ……振り返ると、蓮ちゃんは呆然と糸さんだけを見つめ、僕の視線に気付いた蓮ちゃんママは此方に一度お辞儀をし、校長に至ってはヤレヤレと肩を竦めていた。


「ひとがよすぎるのぅ、おまえは」


と意地の悪い顔の鋏に、糸さんは


「フン」


としか反応しない。


「ほっ。何はともあれ、糸っちに願掛けされた彼はもう安心だねぇ。蜜ちゃん知ってる? 糸っちの手に掛かればさ、どんな相手にもすぐに【欲しいもの】か訪れるんだよぉ。それは友達だったり、限定品だったり、物や概念を問わずにね。縁切り神社で生まれた縁結びの巫女……興味は尽きないなぁ」

「ふぅん」


――糸さんの顔を見る。

ムスッと苛立ってる様子。コーラグミをあげてみた。

一瞬柔和になるも、すぐ、さっきより苛立った顔を向けられた。

何故だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ