クジラ
某動画投稿サイトで見つけたクジラの鳴き声を見ていて思いつき、書いてみた掌編です。
いつもとは少し違った空気感で書けたかな、と思います。
読んでいただけたら幸いです。
某動画投稿サイトで偶然見つけた、クジラの鳴き声の動画を、取り憑かれたように毎晩聴いている。
クジラは人間に近い哺乳類の一種だと言われている。例えば、母子が寄り添って水中遊泳する姿は、人間の母親が子を慈しむように抱く姿に重なる。
水中に陽光が差して、どこまでも深い青の中を泳ぐクジラが発する鳴き声が、泣き声に聞こえてしまうのは、そんなのは、わたしの勘違いに過ぎない。
わたしが物心ついた頃には何処かへ出て行ってしまったままの、母のことを時折想う。
あのとき母がどんな気持ちだったのか。
母は、わたしのことを少しでもいとおしいと想ってくれていたのか、と。
トン、と元気にわたしのおなかを蹴るまだ見ぬ我が子。
わたしはクジラになりたい。
あなたを愛して、いとおしみ、慈しみ、クジラのお母さんみたいになりたいんだよ。
桜が咲く頃には君を抱くことができるかな。
おやすみなさい、クジラの子。
稚拙な文章を読んでいただきありがとうございます。
良ければ感想など残していただけると励みになります。