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1-3『魔法炸裂』

町の外れ。グラと共に町を出た木月は目の前に広がる鮮やかな草原に目を見張った。


「おお……綺麗だな……」


彼が目にした光景はファンタジーの世界そのものだった。

広大な草原には色とりどりの花々が咲き、その光景の先、空向こうには広大な山々がひしめき合っている。

地元から出たことの無い木月には、草原の風も、草花の匂いも新鮮そのものであった。

永遠に居られる世界ではない、それは木月もよく知っている。

だが、一度は体験して良かったと心の底から思えるのも確かだ。


「しっかし、これだけ世界が広いと仲間を探すのも一苦労だよなぁ……」


グラがため息交じりで足元の石ころを蹴り上げる。


「だけど探しがいがあるってもんだよ。

 これだけ綺麗で素晴らしい世界だ。

 回るだけで楽しいだろう」


「まぁなー!と言っても当てもなく探し回るのも何だか……。

 途方もないというか、やっぱり目標が欲しいよ。

 このゲーム、ファンタジーの世界に入り込めるのは良いけど、放りっぱなしだからな。

 少しぐらいストーリーとかあったら良いのに」


「ストーリーかぁ」


言われてみれば、ゲームにこれと言ったストーリーが無いのもおかしな話だ。

どんなゲームでも進行を支えてくれるキャラクターとか、プロローグがあるのが鉄板だ。

こんな良く出来た世界観と技術を兼ね備えたゲームに、その鉄板が無いのも不思議である。


「ストーリー忘れたの?あったじゃない」


その時、グラと木月の背後から少女の声が聞こえた。

2人はその声の方へ同時に振り向く。


「1章はゴブリンキングの撃破でしょ?

 説明書があったけど、読んでない?」


そこに居たのは黒いローブを羽織り、黒い三角頭巾を被った魔法使いのような風貌の少女であった。

大きな丸眼鏡が特徴的で、丸っこい可愛らしい輪郭をしているが目は細く鋭い。

少女は町の入り口に存在する小さな岩場に腰を据えている。

丸眼鏡を整えて左手に持つ分厚い皮の本を閉じた少女は、ポカンとした表情を浮かべる2人を見てため息をついた。


「何ボーッとしているの?私の顔に何かついてる?」


「あーっ!見つけた!3人目!」


グラは突如大声をあげて飛び上がった。

あまりに突然過ぎた行動に魔法使いの少女は思わず耳を塞ぐ。


「ちょっといきなりビックリするじゃない!

 そんな驚く事じゃないでしょう!」


「いや!まさかこんな近くに仲間がいたなんて思わなかったからさ!

 ははは!いやはや不思議な偶然もあるもんだな!」


グラは大笑いしながら少女の隣に座り込む。

しかし少女はグラの行動に不満気な表情を浮かべて、離れるように立ち上がった。

どうやら気安く近付いてきたのが気に入らなかったらしい。

そのままグラに対して、そっぽを向いたまま、腕を組む。


「あらら……やっちまったか……?」


「おいおい……友達じゃなかったのか……?」


「まぁ、ゲーム始まる直前まであまり話したことなかったし……ははは」


「やれやれ……」


木月はグラの安直な行動と気安さにため息をついた。

しかし気を取り直して木月は少女の元へ近づく。

明らかに不機嫌だが少女の事は気になる。


「なぁ、仲間ってことはお前も20人の内の1人?ゲームの参加者?」


「何言ってんのよ、私達同じ場所で説明を受けたじゃない。

 って、見たことない顔ね……いや。

 見たことある……?」


少女は木月の顔をまじまじと見つめて首を傾げた。


「えっ?知り合い?どういう関係?

 このゲームってAIが無作為に選んだ参加者で構成されているんだろ?

 そんな偶然あんのか?」


グラは2人の間に立ち、顔を見合っている。


「いや……見たことあるような無いような、ちょっと曖昧なのよ」


少女はしばらく考えに耽ったが、思い出せなかったのか開き直ったように空を仰いだ。


「まぁいいや。多分似たような人が学校か塾にいたんだわ。忘れて」


「あぁ……分かった。そういうことにしとく」


木月は心の中で思った。

きっとこの少女は俺と同じ学校の生徒なんだと。


塾は通っていなかったし、そもそも別の学校の生徒とも触れ合う機会は無かった。

目の前の少女と出会うとしたら学校しかない。

だが自分はしばらく不登校気味だった。

忘れているだけだろう。俺もきっと少女を知っていたのかもしれない。

だけど、学校の記憶は忘れたかった。

だから覚えていないんだ。


「名前なんだっけー?確かー……さな、さなー……」


学資早名恵(がくしさなえ)


「そうそう!早名恵ちゃんだ!改めて宜しくなー!」


グラは避けられた事実にめげず握手しに近づくが、

早名恵は容赦なく差し出されたその手を叩いた。


「ごめん、ちょっと馴れ馴れしくて怖い。

 それに私うるさい人嫌いなの」


「あらら、そうか!そりゃ悪かった!はははー……」


流石に連続で不快感を突き付けられた事実に落ち込んだのか、グラは俯きながら木月の方へ振り向いた。


「振られた……」


「気が早いよ、おい……」


早名恵はグラの事は一切気にせず、再度空席となった岩場に腰を落ち着かせ、本を開く。

木月は落ち込み続けるグラの肩を叩きつつ、早名恵の読む本を見つめた。

しかし木月の様子が気になった早名恵はすぐさま本を閉じて空を仰ぐ。


「まだ何か用?それともこの本が気になるの?」


「あぁ、何読んでるのかなって」


「町の図書館で買ったこの世界の歴史本よ。

 興味あるならあなたも買ったら?安いわよ」


「いや、いい。折角こんな素晴らしい世界にいるんだ。

 読書する時間が勿体ない気がして」


「あらそう、じゃあ何で本に興味を持ったのかっていう話から始める?」


「それは……何で今の状況で本を読んでるのかなって思ってさ。

 ゲームってレベル上げて、強い敵に挑んで、最終的にラスボス倒すのが目的だろ?」


早名恵は真顔で首を振った。


「それはあなたの価値観でしょ。

 私、戦うとか、レベル上げるとかそんな事、一切興味が無いの。

 それより色んな本を読んで、色んな人から話を聞いて、様々な場所を旅して……。

 そうやって世界観に浸っている方が楽しいわ」


「成程……いや俺もそれは好きだけどさ、でも……」


「でも何よ。ゲームの世界ぐらい好きにさせてよね。

 はぁ、今のやり取りで1つ明確に分かったことがあるわ。

 どうやら私達は致命的に気が合わないみたいね。

 仲を悪化させる理由で話しかけてくるのならそれは時間の無駄だからやめてくれないかしら」


「いや、別にそういう意味で話しかけた訳じゃ……」


「フンッ」


早名恵は鼻息を荒くして、木月に背を向く形で座り直した。

木月は失敗したと言わんばかりの険しい表情で頭を掻く。

しかし、木月には早名恵から聞きたい事が山ほどあった。

ここでめげては何も進まない。

そう思い、木月は勇気を振り絞る。


「さっきは悪かった。機嫌、取り戻してくれないか?」


「別に機嫌を損ねてはいないわ。ただあなたが嫌いになっただけ」


「……本当に申し訳なかった。

 ただ教えて欲しい事があるんだ。それを聞いたらここからすぐ離れるよ。

 1人の時間をこれ以上邪魔することはしない」


最悪な空気の中で木月は息を飲んだ。

どんよりと重い空間の中で、早名恵はしばらく黙り込んでいたが、

諦めないで立ち尽くす木月に根負けしたのか、ため息をつきながらその方へ振り向いた。


「分かったわ。で、何が聞きたいの」


「ありがとう。教えて欲しいのはストーリーだよ」


早名恵は首を傾げる。


「あなたも覚えていないの?ストーリー」


「いや、俺はそもそもストーリーの説明もされずにこの世界に飛ばされた。

 だから全然知らないんだ。グラも覚えていないみたいだしお前から聞きたい」


「そう、じゃあまずは形式上自己紹介ぐらいしましょうか。

 私、お前呼ばわりされるの好きじゃないから」


「あ、悪い……早名恵だったっけ」


「いや、本名だと嫌だからウィズって呼んで。

 私職業ウィザードみたいなの。だからウィズ」


「あぁ、分かった。宜しくウィズ。

 俺は木月。峠木月」


「木月ね。それは良いんだけどあだ名は?

 あだ名の方が覚えやすいから、そっち教えてよ」


「いや……実は無いんだ。職業も分からなくて」


「えっ?説明受けたでしょ?」


「その説明も無かったんだ。

 本当に何も情報が無いままこのゲームに参加させられてる」


「そんなことあり得るの?やけに雑なスタッフさんね。

 あなたの言っている事、本当?」


「ほ、本当だよ!

 俺からしたら他全員に説明があったのもビックリだ。

 むしろ他の参加者がいたことすらもビックリ」


ウィズは斜め下を見つめて考え込む。

その時、木月は感じ取った。

先程とは違うウィズの警戒心を。

先程までは単純な嫌悪から来る警戒心、心の壁を感じていた。

しかし今は違う。

自分に害を成すであろう対象がその場にいる。

つまり、目の前の木月という男は自分の敵である、という意味の警戒心を犇々(ひしひし)と感じることが出来る。


「おい、俺を疑ってるのか?」


「ええそうよ。あなたは私達を騙そうとしているのかも」


ウィズの言葉に木月は驚愕した。


「な、何だと!?そんなことしようとは思ってないぞ!」


「それを証明できるのかしら?

 あなたはゲームの住人で、ストーリー上私達の敵って事もあり得るわよね」


「俺はサイトの存在を知っているんだぜ!?

 普通、ゲームの中のキャラクターが外の世界にいる人間の事なんか知らないよな!?

 それに現実世界の事も!この世界がゲームであるってことも知ってる!

 それが何よりの証拠だろう!?」


「本当にそうかしら?

 そういうキャラクターがいてもおかしくないんじゃない?

 結局ゲーム作成者の意向でキャラクターなんて幾らでも作れるんだから」


ウィズは完全に木月の事を疑い始めていた。

木月もウィズの誤解を解きたいが、解く術が無い。

木月があたふたしている間に、ウィズはゆっくりと杖を構えて不適な笑みを浮かべた。


「1つ、この状況を打破する良い方法があるわ」


「ほ、方法!?」


「あなたを倒してしまえば良いの、簡単でしょ?」


木月は息を飲んだ。

目の前に突き付けられた杖は完全に殺意がある。

その殺意を杖から、そしてウィズの真っ直ぐな鋭い眼光から感じ取った。


「くっ!?俺を殺す気か!?」


「いいや、殺すのではなく、倒すのよ。

 だってこれはゲームの世界。

 あなたが本当の参加者であれば、ここで倒されても現実で目が覚める。

 もしゲーム内の敵であれば消滅する。

 ただそれだけよ」


「それだけって……!」


「あなたが参加者なら、目が覚めるだけなんだから別に害は無い、そうでしょ?

 私達にとっても一番リスクの軽い良い解決方法だわ!」


木月は後退る。


「待てよ……!確かにそれが一番いい方法なのかもしれない!

 だけど俺はこの世界から消えたくない!少しでも長くこの世界に居続けたい!

 だからやめてくれ!」


「良い方法と理解できているなら素直にやられてくれないかしら!

 私だってこの世界を少しでも長く楽しみたいの!

 なら、少しでも大きなリスクは排除すべきなのよ!

 それも理解してほしいわね!」


「くそっ……!やはり駄目なのか!?」


「あなたが本当に参加者なら申し訳ないけど!覚悟してもらうわ……!」


早名恵が杖を力強く構えた。

何かが来る、そう感じ取った木月は早名恵の反対方向、

大きな木々が生い茂る森の中へ向かってダッシュした。


「ライトプリズム!」


早名恵が大声で叫んだその瞬間、彼女の杖から握り拳程の光輝く球体が姿を現す。


「いけっ!」


球体は勢いよく逃げ走る木月の背中を追走した。

速さは球体の方が遥かに早く、一瞬で遠く離れた木月の背中を捉える。

木月は背後から放たれた閃光から何かが起きたことは理解していた。

しかし背後を確認する間もなく、接近していた球体と接触する。

その瞬間、木月は背中に激しい熱を感じた。

羽織っていたローブが燃えている感覚を感じながらも、今立ち止まっては確実に殺されると思い、逃走をやめない。

頼む間に合え!そう心の中で祈るが、そんな祈りも束の間、背中に感じる熱が全身に弾け広がったと感じたその瞬間、

辺りに爆音が(ほとばし)り、激しい痛みと熱風が木月を包み込むように襲った。

そして木月は空に舞い吹き飛び、森の茂みにまるでミサイルのように着弾した。


グラはその唐突なウィズの叫びと爆音に体を震わせた。

何が起きたのか把握できないまま、辺りを見渡す。

彼の目には杖を構え、不適な笑みを浮かべるウィズの姿があった。


「おいっ!何だ今の!?まさか早名恵がやったのか!?」


「凄いっ……!本当に私魔法使ってる……!」


「おいっ!俺の話を聞けよ!?お前何した!?何で魔法を使ったんだ!?

 てか木月は何処だ!?」


しかしウィズはグラの言葉には耳を貸さない。

目の前に広がる爆発の凄惨な後を見てただただ不適に笑うだけ。

そんな異様なウィズの振る舞いにグラは思わず後退った。


グラには今の状況が飲み込めなかった。

だがウィズの目線の先に明らかな爆発の後があるのは確かだった。

そこで何かが起きたことは明白。

周りに敵は居なかった、そして今は木月もいない。

となれば、結果は1つ。

グラはすぐに爆発したのが木月だと気が付いた。

そしてその木月を爆破させた張本人がウィズだと理解できた。


「早名恵!まさか木月に魔法を使ったんじゃないだろうな!?」


「ええ!そうよ!使ったわ!」


早名恵は自身あり気にそう言い放つ。

グラは顔を横に振り、頭を抱えた。


ここがゲームの世界であることは分かっている。

例えこの世界で参加者が死んでも現実世界に戻るだけだ。

しかし、目の前で起きた初めて経験する爆発の感覚が彼の思考を狂わせた。

何故なら、その爆発があまりにリアル過ぎたからである。

そのリアルな感覚がこの世界が現実であるという錯覚を生んだ。

そして、その錯覚がウィズへの怒りに変換される。


「何故使ったんだ!?お前……人殺しに……!」


「グラ!何言ってるの!?これはゲームよ!

 この世界で人を殺すという表現を使うのは間違ってる!

 それに私はウィズよ!?お前って言わないで!」


「今そんなことは別にどうだって良いだろ!?

 それより何故木月に対して魔法を使ったか今すぐその理由を教えろ!?

 お前は何故魔法を使った!?」


「関係無い……?

 私には木月に対して魔法を使ったことより重要な事なの!

 それでも関係が無いって突き通すなら私許さないから!」


憤怒に身を任せてウィズは杖をグラに向けた。

グラはその場で即座に一歩後退して、剣を構える。


「分かった!分かったから落ち着け!

 俺はお前と戦う気は無い!

 さっきの事は謝るよ!」


「はぁはぁ!」


ウィズは必死なグラの表情を垣間見て、冷静さを取り戻したのか、すぐさま杖をおろした。


「わ、悪かったわ……杖なんか向けたりして」


グラも冷静さを取り戻したウィズを見て、息を整えた。

そして完全にウィズがその場にへたり込むとグラも剣を背中に仕舞い、倒れこむ。

静かな草原の中、2人は先程までとは大きく変わった状況を真剣に飲みこんでいた。


グラはウィズの心境が分からない。

しかし、今、ウィズを残して木月の安否を確認しに行くのが先決なのか、

それとも情緒不安定なウィズの傍にいて様子見していた方が良いのかが分からなかった。

とにかく今は何故、ウィズがあんな行動をしたのか聞く他無い。


「なぁ……木月に対して……魔法を使ったのか?本当に?」


「ええ……本当に使ったわ……」


「ど、どうして……?」


不安げな表情を浮かべるグラを見てウィズは思わず俯く。

ウィズは冷静に自分の行動を振り返って反省した。

いつもの自分ならあんな暴挙には出ない。

では何故あんな行動をしてしまったのだろうか。

彼女はそう自分に何度も問いかけるが真意が自分でも理解できなかった。

しかしたった1つだけ分かることがあった。

それは自分は自分自身を守りたかったのだ、ということ。

それだけは紛れもない事実だ。


「私、怖かったのよ……彼が」


「怖かった?……怖い要素があったか?」


「私、あなたみたいに素直じゃないから人を簡単に信用できないのよ。

 木月君に対して小さな疑問が生まれた瞬間、私は嫌な方向にばかり思考を巡らせるようになってしまった。

 今の最高な瞬間を、この世界に居るという最高の事実を、彼に壊されるんじゃないかって思って……だから……」


グラはウィズの言っていることが理解できなかった。

確かに木月の言っている事を完全に理解するのは難しい。

何せ、自分もウィズも、そして他の参加者も、

ミーティングルームにいた人間だけがゲームに参加していると思うはずだからである。

いきなり知らない人間がゲームの参加者と言っている状況は確かに異質だ。

だがそこまで強く疑う理由がグラには分からない。


グラは人との関わりこそが現実世界で一番大事なものであると考えていた。

どんな仕事にも、どんな遊びにも必ず他人が関わっている。

その絶対的な存在、人間を大事にさえすれば、全てがうまくいく、そう信じているのだ。

しかし、経験も考えも未熟故、彼はその考えだけが先行し、

良し悪し関係なく他人に良い顔をしてさえいれば良いという捻じ曲がった思想を持つようになった。

だからこそ、疑いもせずに木月を受け入れることが出来たのだ。


だが、理解できないからこそグラはウィズをそれ以上責めたりはしなかった。

人には人それぞれの感覚や価値観がある。

一概にその考えを否定するのも間違っている、それをグラも分かっていた。


「まぁ……もう気にするな、過ぎた事でクヨクヨしても何も変わらないしな。

 俺はとりあえず木月が無事か見てくるよ。

 少しでも悪い事をしたって思ってたらなら、木月に謝れよ」


「……そうね、あなたに対しても謝っておく。ごめんなさい……」


「気にすんな!それに俺に対して謝る事なんて何も無いだろ!」


グラは目が細くなる程の満円の笑みを返した。


「……グラ」


「にしても派手にやったよなぁ!あいつ生きてるかな!」


「た、多分」


ウィズの中でグラの印象は大きく変わっていた。

最初はただのチャラ男と思っていたが、必死に木月を心配する姿を見てその考えを改めていたのだ。

しかし、印象が良くなった半面、分からないことも増えた。

何故、そこまで木月を信用し心配できるのか、ということである。

もし木月が嘘をついていて、騙そうとしていたなら、その場で罠に嵌りゲームオーバーかもしれない。

ゲームオーバーとなったらこの世界からもおさらばだ。

なのに、そんなリスクを背負ってまで何故正体不明の木月を信用できるのか、本当に気掛かりだった。

ウィズ自身、グラの人の良さに感心する反面、単純に阿保なのではないかと感じる部分も存在したのである。


「おい、どうした?また考えに耽って!早く確認しに行こうぜ!」


「う、うん……」


2人は爆発があった茂みへと入った。

しかし、辺りには凄惨な焦げ跡と血の跡しかなかった。

弾け飛んだ血の量を見るに爆発の衝撃がいかに強かったかが伺える。


その光景にウィズは思わず嘔吐しそうになる。

グラも生々しい血の臭いに思わず笑顔を崩した。


「確かに此処に吹き飛んだんだよな……?」


「そうよ……私の魔法が炸裂した後、彼はこの茂みに吹き飛んだわ……。

 でも姿が見当たらないのは何故!?」


「分からない……でも何故血の跡だけ……。

 絶命していたとしても、死体はあるはずだろ……何で無いんだ」


そう、2人は木月の姿を見つけることは出来なかったのだ。

木月は一体どこへ消えてしまったのだろう。

木月の行方の謎は2人に何とも言えぬ不安感を残した。


続く。

(参加者パラメータ)


学資早名恵(がくしさなえ)/ウィザード

[パラメータ]

体力:D

筋力:D

精神:C

俊敏:E

防御:E

成長:D

[所持パッシブ]

・図書館:紙切れや書籍から読み取った文章を記憶する。

[所持スキル]

・Lv1:ライトプリズム:光の球体を生成し操る。球体には燃焼効果がある。

・Lv1:???

・Lv2:???

・Lv3:???

・Lv4:???

[使用可能武器]

杖/箒


<<<<<用語について>>>>>

●パラメータ :能力値。A~Eでランク分けされており、ゲーム内のあらゆる事象に作用する。

●体力    :生きる力。尽きるとゲームオーバー。

●筋力    :力の強さ。物理攻撃のダメージに作用する。

●精神    :心の強さ。魔法攻撃のダメージ、魔法ダメージ軽減に作用する。

●俊敏    :動作の速さ。反応速度、回避率、攻撃命中率等に作用。

●防御    :守る力。物理攻撃のダメージ軽減に作用する。

●成長    :育つ素質。能力上昇、スキル取得に作用する。

●所持パッシブ:プレイヤーが持つ固有能力。参加プレイヤーの素質で変わる。

●所持スキル :職業別のスキル。最大5つのスキルが設定されている。成長によって覚える。

●使用可能武器:プレイヤーがゲーム内で扱える武器。使用不可の武器は所持しても攻撃に使用できない。

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