再誕
目が覚めた。
ここは………先刻、僕が焼け死んだ場所だ。鼻につく人間の焼けた臭い。何が好きで一日の内にこんな臭いを嗅がないといけないのだろう。そう思っていると……
「なんだ、コレ…………ん?」
転がっていた袋の存在に気付き、声を漏らした途端…………僕はとんでもない事に気付かされた。
――――――声が異常に高いのだ。男の太く、逞しい声と比べ……この声は、あまりにもか細く、華奢なものだった。
「まさか………」
そんなはずはない。そんな事は有り得ない!触れば懐かしきあの胸板があるのだ!そう、男という割には頼り無さげだったあの胸板が………
ふにっ。
どうやら、今まさにこの服を押し上げている膨らみは、偽物ではないようだ。…………どうしよう。これまで1度も女性とは関わりを持ったことはないのだ……そんな僕に、こんな仕打ちをするなんて!最高だ!……とは言えない。第一、今はそんな事を気にするより、もっと気にするべき袋がそこに転がっているではないか。そう思って、僕は袋に手を伸ばす。
「………マジックバッグか」
まるで小物を入れておくような大きさの袋…しかし、その中身はかなりの貯蔵量を誇る。これが空間を作り出す魔法を用いた「マジックバッグ」だ。それを僕は用心しつつ、ゆっくりと口を開けていく………
「なんだ?これは……」
ただの棒だった。重い灰色、巻かれた包帯の様な何か…きっと、ここを持てということだろう。
………しかし、この棒からは底知れぬ魔力が感じられる。もしかして、これはとんでもない代物なのでは?と思索に耽っていると……
「グルルァアッ!!!!」
と唸り声が近付いてくる。これは振り向いただけでは間に合わない!
「はあぁっ!!!」
振り向きつつ、身体の回転とともに棒をブン回す。
ジュッという音が聞こえた後、ドサリと魔物は地に倒れ伏した。
非常に危なかった。この棒が無ければどうなっていたことやら……そう手元を見ると、僕は我が目を疑った。
手には、紅く、まるで炎のように輝く……剣が握られていた。形云々は魔力を含むアイテムだったので、特に問題視する訳ではない。しかし……咄嗟であったというのに……
何故、魔力を込めたというのに壊れてしまわないのか。