才能
1
僕は生まれた頃から魔法の才能があった。
並外れた魔力量、詠唱を破棄して発動することの出来る無詠唱魔法の体得、そして、魔導師を志す上で必ずぶち当たる壁……属性の偏りすらも僕には無かった。
両親は僕の誕生を心より祝った。我が一族最高の逸材だ、とか魔術の申し子だ、とか。
その期待と重圧は留まるところを知らなかった。道具や書物はいつだって良質な物を買い与えてくれたし、優しくだってしてくれた。幼い僕は、大人達がこの身に余るような想いをかけているのも知っていた。
―――もっと。もっともっと、高みへ。
僕は彼らに誉めてもらえるのが嬉しかった。その笑顔が見たくてひたすらに、試行錯誤を繰り返した。
何度も、何度も、何度も、何度も何度も何度も何度も何度も。
何時からだっただろうか。
大人は僕を閉じ込めた。厄災の子だ、悪魔の加護を持つ人でなしのバケモノだと罵った。そのうちに外出をしなくなり、部屋に篭りがちになった。
それでもよかった。何故なら、僕の周りには両親が居て、それさえあれば僕は世界が敵になろうとも構わないとさえ思っていた、しかし――――
世界は僕を裏切ったのだ。
隣人が扉を蹴破った時、彼らはもう居なかった。過度の魔力供給で使い物にならなくなったゴーレムの横で…厄災の子は笑っていた。悲しい笑い声だった。 だが、そんな物で消えうる恨みではなかった。
刹那の後。
彼の周りを静寂が包んだ。焼け焦げた匂いとどろどろとした感情だけを残して。