8.作戦会議
美波視点になります。
成り行きとはいえ、親友となった真紀とは色んな話をしたい。
(そんな中でも大事なのが…)
「じゃあ作戦会議をしましょう」
「え、いきなり?」
ガクッとしている真紀の気持ちもわからなくはないけれど、遠慮なく話を進めさせてもらうことにした
「二人だけで話せる時間は少ないのだから、外や学校でもできる話は後回しにしましょう?とりあえずノートにメモしながら話しましょうか…」
友情の乾杯は?ハグは?とか真紀が言っているけどそんなことは無視して、私は鞄から筆箱と未使用のノートを取り出した。
「気になる点がいくつもあるのだけれど、お互い出しあっていきましょう?一人では思わなかった点も出てくるでしょうし」
私はただ遠慮なくゲームの話が出来ればいいと思っていただけだけれど、真紀は親友になってくれるならと言った。もちろん私にとってもありがたかった
(気が付いたら親密な友達が高校生にもなってゼロって、なんだか悲しかったのよね…)
考え方の違う二人ならきっと何か問題があっても対処できるかもしれない
「まぁ、それもそうだね!まず私が気になっているのは…キャラとか出現条件とか!」
「出会い方…ねぇ…大体は普通のキャラなら、ステータスを上げてたら自然に出会うものだけれど…」
「隠しキャラとかも気になるよね!どんなキャラなんだろう?」
(必ず学校外に隠しキャラがいるのよね、ときスクって)
「でもこの場合全員と出会う必要は無いんじゃないかしら?」
「え、どうして?」
「もちろん攻略キャラは気になるけれど…現実だとエンディングが終わったらまた最初からって訳にはいかないのよ?全員と出会っても結ばれるとしても一人でしょう?」
「あ…」
気になる対象者全員に手をつけたあげく誰とも結ばれないなんてパターンだってあるのよ、恋愛なんてしなくていいなら話は別だけれど…
「真紀は今のところあの学園の王子様…花守くんが気になるのよね?それなら、わざわざ他の人と出会わなくてもいいのではないかしらと思って。攻略の過程で出会ってしまうのは仕方がないにしても、相手にしてみたら異性の友人が多いのは良い気はしないわよね」
「確かに…美波は色々考えてるね!」
(そういうあなたはあまり細かく考えないようね…大丈夫かしらこの子。)
無邪気そうに笑う真紀を見て、少し心配になる。
「ねぇ美波?美波は今のところ気になる人はいるの?昨日あったっていうスチルに関係してる人?」
わくわく、なんて擬音後が似合う顔で真紀が聞いてきた。
(う…痛いところを突くわね…)
「それは二人だけでなくても話せるから今後にしましょう!」
「あ、逃げた!」
「時間は有限なんだから今しか出来ない話をしましょう…次!気になる相手がいるんだから好感度の上げ方!」
不満そうな目をしながら真紀がじろじろ見てくるけれど、無視無視!
「うーん、ゲームならデートとかデートの服装とか会話の選択肢とかプレゼントがあるよね?あとは成績とか?」
「ええ。でもそれらで本当に好感度が上がるのかしら?」
「え?」
「そもそも出会い方についても出てきたけれど、ステータスを上げるってどうするのかしら?」
ステータス
これが私の中では一番の疑問だわ。
「勉強するとか…?」
「ゲームだと1日2回までしか行動できなかったでしょう?それも扱いは授業の休み時間と放課後。でも現実的にはやる気があればコマンド全部の行動が1日でも出来る上に、わざわざコマンドで休まなくても毎日寝るんだから休むことにわるわよね」
「1日で全部は大変そうだけど、確かに!」
あくまでも1日は極論だったのだけれどね…
「その場合ステータスはどうなるのかしら?勉強すると知識は上がるけど体力は少し下がったわよね、運動すると体力は上がるけど知識やおしゃれ度は下がる…」
「全体的にバランスよく上がるから序盤は苦戦しても後半は凄いこなるよね!」
「ゲーム通りにステータスが上がるならそうだけれど、もしそうなると困ったことが起きない?」
「え、そうかな?文武両道でかつおしゃれだなんてすごく理想だと思うけど?」
ええ、そんな超人になったら起こるゲーム現象があるじゃない…
「ステータスに惹かれる攻略対象よ…」
「あー…あれはキツい上に、攻略中のキャラ以外からデート誘われるからつらいよね」
攻略キャラとの時間という可能性を潰されるイベント…
こちらの行動回数が制限されているから、攻略キャラから誘われるというのはすごくありがたいのよね
…でもある程度好かれてたらそれ以外のキャラからも誘われるっていう残念仕様だったわ…
現実だと好きではない人からデートに時折誘われるなんて、断るのにも疲れそうだわ…
「でも、美波は考えすぎじゃない?今私達にとっては現実なんだし、現実的に考えたらそんな仲良くない相手を誘うわけがないじゃん!普通に考えても学校で話すくらいだよ!そもそも本当にステータスってものがあるのかもわからないんだもん!考えてたって仕方がなくない?」
そうね…確かにそういった考え方もあるわね…
こういうことがあると、一人で考えるよりも二人で考える意味もあるなと思うわ…
「私ならそんなに考えないなぁ…せっかくのときスクの世界で人生なんだもん、一緒に楽しもうよ!」
「それもそうね、どこまでがゲーム仕様でどこが現実仕様かはわからないけれど、全部が全部ゲーム仕様とは限らないわよね…」
「うん、なるようになるよ!きっと!」
えへへと笑った真紀につられてつい、ふふっと笑ってしまった
…真紀の楽観的な考えも悪くないわね
さっきは大丈夫かしらこの子って思ってたけど
私達はいつか近い未来
今みたいな少し変わった共通点のある友人ではなくて…
本当の意味で親友になれるかもしれない
なんて、不本意ながら思ったのは
(絶対この子には言ってやらない…!)
美波さんはクーデレです。