7.相談
閲覧ありがとうございます。
少し書き方を変えてみましたので違和感があったらすみません。
「お邪魔しまーす」
「適当に座ってて、今お茶でも用意するわ」
「本当?ありがとう!」
お礼を言うと、私はお客さんのいない喫茶店の席に座った。
(素敵な喫茶店だなぁ…なんか落ち着く)
お店の入り口の扉はオープンの日付の書かれたポスターが貼られcloseの木札がかけられていたので、きっと他にお客さんは来ないだろう。
照明は消されたままだけれど、レースカーテンの隙間から漏れる光だけで室内は充分明るい。店内を見回すと植物の多いウッドナチュラルな内装で寛げる空間が広がっていた。
テーブルに猫の描かれたコルクのコースターを、その上にコト…とガラスのコップが二つ置かれ
アイスティーで良かったかしらと聞かれたので私は頷いた
その声の主、このオープン前の喫茶店の店主の娘の美波ちゃんは私の前イスに座ると腕をくんで右手を顎に当てながら言った。
「きっと速水さんは情報とか好感度を教えてくれるタイプのサポートキャラよね…」
速水ゆかりちゃんと連絡を交換した後、私達は話ながら喫茶店まで向かい、速水ちゃんとは駅で分かれた。
(明日ゆかりちゃんって呼んでいいか聞かなくっちゃ…!!)
会話の中で速水ちゃんは…
『私、学校には小学校や中学からの知り合いが多いから気になる人がいたら色々教えてあげるね!!知らない人でも調べてあげる!』
と言っていた。
今思えば確かにサポートしてくれる感じだった!
「言われてみればそうだよね!明日のフリーマーケットも知らなかったから助かっちゃった!」
「ええ、言われなかったら今月のイベントスケジュールなんて確認しなかったもの、すごくありがたいわ。序盤のフリーマーケットは特に大事よね…ファッションは好感度に大きく関わるもの…」
「だね!」
そう、ゲームではデートに着ていく服だけで好感度が上がったり下がったりするんだ
もちろん相手の好みの色や服を着れば上がるし、流行とか季節感も大事。
(クラスの花守くんが気になるけど、ゆかりちゃんに聞けば花守くんの好みとか誕生日わかるのかな?)
でも私はそれよりも聞きたいことがあった
「ねぇ美波ちゃん」
「何かしら」
「美波ちゃんは…その…クラスメートの花守くん狙い?」
ゲームなら推しが被る方が話は盛り上がるけど、現実問題そうはいかないよね!確認大事!
「そうだったらどうするの?」
「えっ」
被った後のことは考えてなかった!
まっすぐこっちを見て言う美波ちゃんに、えーと、うーんと、なんてしどろもどろになっていると
くすっと笑われた
「ふふ、冗談よ。でもあなたがあの王子様が好みだということは教室で気付いていたわ。私もゲームならもちろん攻略するだろうけれど…現実だと何か違う気がしているし、応援するわ」
(良かったぁ~!!)
「でも」
(ん?)
「実は私、このゲームが発売する前に死んでしまって情報は一部のキャラクターしか知らないのよ…」
「美波ちゃんも?私もほとんど発売決定!って時くらいの情報しかわからないんだ…」
「攻略する気は無いけれど、花守くんも他の人もスチルは気になるのよね…どんなことがあったか、それっぽいことは知りたいわ、もっと言えば見たい…」
「えーと、つまり?」
先程ふふっと笑った時は違い
美波ちゃんはわざとらしい笑顔を浮かべた
「応援する変わりに、何かあった時は教えて欲しいわ」
(花守くんは狙わないけどもスチルが気になるってことか…気持ちはわからなくもないけど…)
「ねぇ、そもそもスチルってあるのかな?」
(ゲームだからあるけれど…現実の写真とはまた違うよね?)
「スチルというと変かもしれないのだけれど…実は私、昨日それっぽい状態なものを感じたの」
「それっぽいもの?どんな感じなの?」
「不思議なのだけれど、思い出そうとするとその情景が…その時の声が…鮮明に頭に浮かぶのよ。それこそ、言葉にするなら心のアルバムって言うのが分かりやすいのかしら…」
心のアルバム…
「真紀さんは記憶が戻る前にそういうことはあった?」
「うーん…ここ最近のことでは無いんだけど、昔の思い出でぼんやりしてるけどなんだかずっと覚えてることはあるんだ…今日夢でも見たけど」
「あら、どんな夢?」
「小さい頃に迷子になって、助けてもらった記憶…
でも相手が思い出せないんだよね、同じくらいの年齢だとは思うんだけど」
(他にも色んな思い出があるはずなのに、その出来事だけはずっと心にあるんだよね…)
助けてくれた人の笑顔に安心して、この人みたいに笑顔で人を助けられる人になりたいって思ったんだ…
「完全に攻略対象よね、それ」
(う…)
考えれば考えるほどそう思うけれど、自分にとっての大切な思い出がゲームの伏線だったなんて…
「大事な思い出もなんだか補正って思うと悲しいな…」
「レールの上を真っ直ぐ進んでたのよね…お互いに…。まぁとりあえず、スチルは多分そんな感じだと思うのよ」
美波ちゃんはアイスティーを一口飲んで、真剣な目で私を見た
「私も何かあったら話すから、真紀さんも私に教えて欲しいの。他の人には包み隠さずだなんてもう話せないじゃない…?」
確かに、あの特別に覚えてる感じは確かに他の人に伝わるとは思えない
それに、人に話をしたい気持ちもわかる…
ゲームは一人用だったけど、終わったあと感想を言い合う友達がいるだけでそのゲームの楽しさは何倍にもなるもんね!
「いいよ!……美波ちゃんが私の友達に…親友になってくれるなら!」
私がそう言うと美波ちゃんはぱちくりと驚いた顔をしている
「だって親友には何でも話せるものでしょう?」
「え、ええ」
「同じ記憶持ちで、ゲーム発売前に死んじゃって、クラスメートで、同じヒロインで…
もちろん私達にとってはゲームの世界だもん、ゲームの話だってスチルの話だってすると思うけど。…私は美波ちゃんほど何でも話せる女の子はいないと思う!」
高校生活、友達が出来るか心配だったんだ
美波ちゃんがいるなら一人にはならないし、悩んだときに何でも相談できるし、ゲームトークもできる!
すると美波ちゃんは少し考えた素振りをした後頷いた
「そこまでの発想は無かったけれど…そうね、あなたの言う通りかもしれないわ」
「じゃあ!」
「ええ、改めてこれからよろしくね?真紀さん…」
「親友なら呼び捨てでいこうよ!美波!」
「もう…わかったわ、真紀」
あなたは最初から呼ばれ方にこだわるわね、と美波は笑い私もつられた。
攻略対象はもう少し先まででてきません。