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君に再会するまでのX X年間  作者: ふくろう亭
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75 調子に乗ると

 暑い。八月に入ったからというわけでもないだろうに律義に暑い。

 春先に帰省した時に散々怒られたからというわけでもないが、お盆には長めの休みを確保出来ている。いろいろと課題は多いのでこの際片付けなければな。

 春からこっちの赴任先は航空の方で、茨城県百里基地にほとんど居た。ここには救難隊がいて、訓練に問題がないか、改良点はないかの調査が任務だ。ほとんど訓練に参加しましたけど。

 空いた時間に航空団も覗いて飛行機にも乗れたのは嬉しかった。プロペラ機じゃなくてジェットですよそれも、勿論練習機だけどね。

 NASAでT-38を少し操縦したことを話したら、ここでも操縦の許可がおりたのだ、T-33でちょっと機体は古いし遠出は禁止だけどね。それでもプロペラに比べるとジェットはいいわ、離陸のときもスッと上がれるし、何と言ってもパワーがあるから空中機動が安定する。アメリカの宇宙飛行士は飛行経験が必須だったけど他国の候補者にはどう適用するんだろう。向こうは広いから幾らでも滞空時間を稼げそうだけどね。日本ではそうはいかんわな。飛行空域だってやたらと制限があるしな。NASA経由でお願いしたら許可をとれるかもしれんな。

 別に遊んでいるわけじゃなくて、ちゃんと隊内環境の改善に取り組んでいます。大事なことです。

 久しぶりに王さんに手紙を書いた。相談があるから会いたいと。内容はそれだけなのだか随分と長い前置きを書いてしまった、恋文のつもりだったのだがどう見ても業務報告だな。他の人に見られてもいいようにした、ということにしておこう。

 お盆には春先に会えなかった皆んなも再集合するそうだしね。

 春に写真を見て以来、俺はあの母子にメロメロだ。今まで俺は何をしていたんだと反省の日々だ。

 もちろん妻に会いたいというもともとの気持ちに間違いはなかったと思っている。だが調査会社まで使っても彼女を発見できない。これはこの時間線上には存在していないものと思わざるを得ないのだ。会えなかったかつての友人たちも何人かは発見出来ている。手がかりがまったくないのは彼女だけなのだ。

 俺の都合で振り回してしまった僕ちゃんには本当に申し訳ない気持ちで一杯だ。その僕ちゃんも王さん母子にはイチコロだった。まあ同じ人格だからな、当然だ。

 問題は、いまさらだが王さんが俺を認めてくれるのかどうかだ。実は一度断られているのだ。子供が生まれると仮定して、俺は認知だけでもしようかと提案したことがあった。だがあっさりとその時は不要と言われたのだ。「誰にも内緒にしたいの」だからヒントを残すようなことはしないと。まるでマリアのように有りたいと、嘘ですけど。冒涜では、と言ったら「信者じゃないし」とあっさりとしたものだった。

 そんな彼女が俺を認めてくれるだろうか、さらりとかわされてしまうのだろうか。もうすぐ結論は出てしまうのだ、後数日で。

 などと浮かれているとろくなことにならない、という教訓を俺はいつになったら学ぶのだろうか。

 基地の食堂で夕食をとり食後のお茶を飲みながらのんびりしている時のことだった。晩ごはんとしては遅めの時間帯だったので、俺のまわりにいたのは数名で、いづれも救難隊の連中ばかりだった。俺のレポートをサカナにワイワイと話が盛り上がろうとしていたところに隊内放送がかかった。つけっぱなしのテレビではニュースが流れている。のんびりとした季節ネタだったのに不釣り合いなアナウンスが食堂に流れた。

 「18:20現在日本航空羽田発大阪行きの旅客機が操縦不能で相模湾上空を飛行中である。各員は発令に備え待機せよ」俺の頭の中は一瞬のうちに真っ白になった。来た、また来た。発生して始めて蘇る記憶。今度はこれか。日航ジャンボ機墜落事故か。

 「なんだ、操縦不能って」「旅客機がってジャンボか、500人以上乗ってるぞ今時分なら」「海上に不時着かな」まわりは騒然とする。テレビの画面に速報が流れている。

 長い夜の始まりだった。

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