38 選挙
部員たちには断って下校した。僕ちゃんに家につくまで散々説教されながら。まいったまいった。
どうも最近は僕ちゃんに注意されることが多くなったような気がする。自我としては分裂ではなく融合の度合いが高まって来ているように思えるし、互いをすり合わせるなかで小さな違いを修正しているのだろう。俺自身は二人でいるほうがなんか楽しいんだが、今日みたいな時も便利だし。
さてどうしよう。生徒会かあ、今年は高校生活をエンジョイ出来ていたのにな。部活も部員数が増えていい感じになってきているのに。それに俺が会長に立候補するとして他の役員はどうするんだよ。あの先生そこらも含めて丸投げか?しかし小池のやつ(かの立候補しようとしているらしい三年生の名前だが)いらんことしてくれるわ、まったく。
少し考えを整理してみよう。学校側が恐れているのは生徒会がK◯派に乗っ取られることだろう。東京のW大に代表されるようにK◯派に自治会を取られると学内が荒れることはよくある話だ。彼等は学内を力で指導しようとするし、それに反発する勢力との争いはあちこちで必然的に発生してきている。ただそれがうちのような高校でも起きるのかというと、それには疑問が残る。だいたい俺の記憶では全国的に見ても高校のレベルでは内ゲバに至ったところはなかったんじゃないかな。
ただ、トラブルの種にはなるだろうな。衰退期に入っている学生運動、特に高校生のなかでこの時期に生徒会を握りなんらかの政治的活動を行っているところなんてあんまりないから目立つのは間違いない。つい二三年前には結構あったのにな。しかし大学じゃないんだから高校の生徒会なんてなんの実益もないだろうに、自分とこの宣伝にはなるか、そんなこと成果にして自慢してなんになるんだよ、今更学内に党派的なあれこれを持ち込まれてもろくなことはないのに。しかたがないか、学校側の策に易易と乗るのも業腹だけど。
しかしおれが立候補するとして勝てるのか?うーん、どうなんだろう、ちょっと相談してみるか。
翌日の昼休みに、俺は近藤さんを中庭に呼び出した。弁当でも食べながら今回の経緯を説明して、俺が生徒会選挙に出て勝てるのか、客観的な評価を尋ねてみるために。
「そういうことですか」近藤さんの表情が固くなった。「実は……」
なんと近藤さんのところにも立候補の打診があるそうだ。それも二つ。学校側と小池グループと。
元担任からは背景の説明は抜きで俺が出るから君もどうか、というあいまいなものだったらしい。ちなみに副会長枠にとのこと。立候補予定のK◯派であるの小池クングループからは(ちょっと長いから奴らの使っている部活名の社研でいこう)社研部の二年生が近藤さんのクラスにいて、その彼からしきりと勧誘をうけているとのこと。まだリーダーである小池クンとは直接話しはしていないが、一度会ってほしいとは言って来ているそうだ。
なるほどね。彼女が自派の副会長候補なら小池クンの会長当選率も上がるわな。二年生ナンバーワンの才媛だし、可愛いしな。新一年生からの票も見込めることだろう。うまいこと考えるね。
「何言ってるんですか、嫌ですよ。だいたい社研部ってあまり良い印象を持っていませんし」
社研部の同級生はクラスの委員長らしい、自ら立候補したというからこりゃ計画的だな。近藤さんは投票の結果副委員長だそうだ。実質的な仕事は彼女がこなしているようだが「だってやることが遅いし」すぐに話しが違う方向にずれていくそうだ。あげくに生徒会か。なんだよ、近藤さん水臭いじゃないか、普通に困ってたんじゃないか、相談してくれてもいいんじゃないの。
「だってもうクラスが違うし」いや違うでしょ。「いつも忙しそうだし」それはそうだけどね。
近藤さんとしても俺に直接詳しいことを聞きたかったんだそうだ。ちなみに俺が立候補するなら「そりゃ当選するでしょ」とのこと、本当かね。
で、あっさりと当選して生徒会をやる羽目になりました。当然近藤さんには付き合ってもらいます。




