4 迫るPKK
ミカエル、セラフ、クロス、見覚えのある名前が一番に目に入る、二、三十人はいないか?
おいおい、馬に乗ってる奴までいるよ、全身鎧になんかフヨフヨと剣を回りに漂わせてる奴とか、弓持ちが結構いるのがヤバいな、あんまりやりたく無いが使える手段は全部使うしかねえか?
「イヒヒ、ボクが麻痺爆弾で先制しよう」
「男前だなスワン」
「なに、死んだら素材にしてくれたまえイヒッ、アンデッドになってみるのも一興だからね」
「悪いが先制は、ウルフにさせる、んで、逃げるぜ」
「PK案山子、よくも殺してくれましたね、今回はPKKギルドを連れてきましたよ」
なんかミカエルが懇切丁寧に説明する、まあ、威圧感を与えたいんだろう、俺とスワンはスケルトン五匹とジリジリ後退してせめて囲まれ無いようにしている、偶然潜伏している形のウルフ達が見付からない事を祈りながら。
「イヒヒ、案山子くんモテモテだね妬けるよ」
「嬉しく無えがな、スワン、ウルフが突撃したら逃げるぞ」
「わかったよ、脚には自信が無いから足手まといなら置いていっていいよ」
コソコソと打ち合わせをしながら後退を続ける、ベラベラとミカエルやクロスが自分達がいかに正義かと語っていて隙だらけなんだが弓持ちが矢をつがえ、騎馬が突撃しやすい様に一団から距離を空ける。
たった二人相手に逃がす気は無いらしいな、ミカエル達なんとか主義の連中みたいな奴らだけだったら楽勝なんだが。
「貴様が不浄な死体を操るなら我らがその死体ごと浄化の炎で焼き払ってくれる」
それ、元お前なんだけど、凄く言いたい、まあ何人か魔法の詠唱始めやがったからもう時間は無いんだがな。
「喰らい付けお前ら」
俺は運善く発見されなかったウルフ達をミカエル達一団にけし掛ける、おお、混乱してる混乱してる、数人は。
幸い弓持ちへの牽制と魔法の霧散に成功、百一匹のウルフは混乱するミカエルら三人+アルファを喰い散らし、明らかに格上な連中に襲い掛かる。
一撃でウルフ数匹が力尽き、戦闘不能に陥る、俺とスワンはそれを見届ける事無く、スケルトン達と逃げる、ガードスキルを使わせていたスケルトンはなんとか耐えているが、飛んで来る矢に二匹が戦闘不能、ついでに馬の走るドドッドドッという規則正しい音が俺らに迫る。
「イヒヒ、山勘だが仕方ない」
スワンは後ろに麻痺爆弾を見もせずに投げる、当たればラッキーだがドドッドドッと音が大きくなるのは変わらない。
我慢出来なかった俺は後ろを振り返る、少し遅れてスワン、ガードするスケルトンが二匹、残り一匹は馬の上で槍に貫かれに串刺しされていた、まあ砕けたあばらの隙間に絡まって持ち上げられただけだろう、しかしそのスケルトンは槍を掴み時間を稼いでくれる、本体より役に立つな。
「イヒヒ、コイツもあげるよ」
スワンが麻痺爆弾を手にした、その時ヒュッと風切り音が走りスワンがよろめく。
「スワン」
「イヒヒ、痛いじゃ無いか」
矢が刺さったまま立て直すスワン、我ながらこんなに感情的になるとは思わなかった、スワンに矢が刺さった事で一瞬ゲームだと忘れてしまっていた。
「しぶといな」
弓を引きながらアルテミスなる青ネームが言う、騎馬も健在と、騎馬はジャンヌか、他の連中はまだウルフ達に夢中だ、この二人をなんとかできたら。
「あっ」
スワンの声と倒れる音、アルテミスは矢をまだ放っていない、見るとスワンには槍が突き刺さっていた。
「…………」
無言でジャンヌが槍をスワンに投げた様だ、スワンの体力は無くなり、死亡と表示されていた。
「イヒヒ、すまない」
「死んだまま喋れるのかよ」
死体のスワンが普通に会話して来てなんか怒りが萎えた、まあ、落ち着いたんだが逃げられ無いのは変わらない。
「スケルトン、ジャンヌとアルテミスにしがみつけ」
ジャンヌに捨てられたスケルトンが偶然アルテミスの近くにおり、油断していたアルテミスを捕まえる、残り二匹はジャンヌの馬にしがみついた。
「放せ変態」
「パトラッシュに触るな骨ごときが」
馬に名前付けてんのかよ、てか犬の名前じゃねえか。
遠くでウルフ達も善戦しているが、スワンを殺されたからには後には引けないよな。
「アンデッドボム」
俺はすべてのアンデッドを自爆させますかと出たアナウンスにイエスと答えた。
目の前のジャンヌの馬に取り付いた二匹が赤く光り、轟音と共に爆発した、俺は抱えたスワンの死体ごと吹き飛ばされ衝撃でクラクラする。
ウルフ達も次々爆発していく、助かる為で、すでに死んだ奴らだったが少し罪悪感を感じて抱いたままのスワンを少し強く抱きしめた。
「イヒヒ、派手にやるじゃないか、あと触りすぎだよ」
「すまん、が今は逃げようか」
「死んでてもドロップはもらえるんだね、イヒッもう少し検証したいが生き残りがいたらたまらないから諦めようか」
あと、高レベルの奴を倒したのかレベルもガンガン上がってるな。
スワンを担いでこの場を後にしようとした、その時。
「よくもパトラッシュをぉぉぉ」
「久しぶりに死にかけたよ、案山子くんか覚えたからね」
ジャンヌとアルテミスが爆煙を引き裂き現れた。