1 ネクロマンサーになる条件
VRMMORPG『ゼイレキレ』略して『レキレ』とも呼ばれるゲーム、睡眠中に夢を見る様にプレイでき、日常生活に負担が掛からないゲーム、まあ、時代最先端のゲームを俺はプレイにする事になったんだ。
リアリティーの為か見た目の変更はできない仕様でプレイヤーネームと職業を、前衛職の見習い戦士、後衛職の見習い魔法使いの二つから選択。
レベル十で一般職に転職できる、あとから知った事だが、多数の職業が有り、ある特殊な条件でしかクラスチェンジできない職業があるそうな。
……まあ、俺が現在クラスチェンジした『ネクロマンサー』もその一つ、他にもピーキーそうな職業があったが、ソロを強要されそうな現状、死体とはいえ壁役を用意しないとこれからやっていけそうも無い。
パーティーを組めば、いや、組めればいいのだが、俺のプレイヤー名、案山子が赤字に染まっている。
本当は英語でスケアクロウにしたかったんだが使用済みネームですと弾かれた、悔しかったから世界観無視で漢字にしたら、割と漢字ネームいたんだよな。
それは置いといて赤字はプレイヤーキラー、一般プレイヤーから敵対している事を意味していて、そこらを、例えば街中を歩くだけでPKKやNPC兵士に殺されてしまう、まあゲームだから死んでもペナルティを受けて復活だがプレイヤーキラーは経験値低下がある。
まあ、どんどんレベルも下がりじり貧になるわけだな。
しかし、ちょっと転職の時に関係NPCのババアが気に入らなくて無理矢理追い越そうと押し退けたらババアが階段から落下死だもんな、リアルでそんな事にならなくてよかったと思う、こればかりはゲームでよかった。
そのあとババアの生死を確認してたら転職条件を満たしましたってのと、プレイヤーネーム案山子がPKになりましたって連続で流れてそのまま俺はNPCから逃げて現在に至る、と。
しかし『ネクロマンサー』ね、ホントはヒーラー職に就いて後衛したかったんだがなあ、まあ後衛っちゃ後衛だけどさ、死体の後ろってことだけで。
さて現状をまとめよう、俺、レベル十、職業ネクロマンサー、スキル、マイナーヒール、マイナーアロー、クリエイトアンデッド。
ん?クリエイトアンデッド?ああ、ネクロマンサーのスキルね、使ってみるか。
「クリエイトアンデッド」
死体が必要ですと、アナウンス的なのが響く、そうか、なんか地面からスケルトンとかゾンビが出てきたりしないのか、そうかそうか、恥ずかしいわ、説明文付けろや。
どうすっかな、リセットするか?とか考えてたら誰か来た。
「おや?PKですね」
「ほほう、我らPK滅殺撲滅快楽主義者の前にPKですとな?」
やべえ、普段なら目を反らすレベルの奴らだが今の俺にはPKK三人に囲まれたPKでしかない、しかも杖装備の俺が後衛だからってジリジリ接近してくる。
あんまり認識したくないがプレイヤーネームもやべえ、セラフにクロス、ミカエル、中二的な症状の名前は、まあ青ネームだけど、インパクトが凄い、しかもそんな名前の癖に包囲しながら接近してくる、クソが、笑い殺す気かよ。
まあ殺されるのは俺だろうけどさ。
逃げ道を探す、だが目敏くセラフが俺の視線を遮り。
「逃がしませんよお」
と、道を塞ぐ、うるせえよ、お前ら天使ネーム被ってんだよ、統一するかバラすかしろよ。
「悪の芽は浄化致します」
クロスがそんな事を言う、お前じゃ無くて天使的なネームの奴に言わせろよ、なんか違げえよ。
死ぬまでに何回ツッコミをさせられるんだ俺は、まあ会話したくない連中だから全部脳内ツッコミなんだが。
「さあ罪人よ死ぬのです」
三人が剣を抜く、タイミングが同時なのが笑いを誘うんだが俺の現状は笑えない、一発マイナーアローでもぶち込むかと思った瞬間パーティー申請が舞い込む、即決でイエス、その瞬間なんか黄色い爆発が俺ら四人を包み込んだ。
「イーッヒッヒ、麻痺爆弾だよ気分はどうだね」
女の声が聞こえる、俺以外の三人はアバババと痺れて固まっている。
「マイナーアロー」
俺はこれ幸いとクロスに魔法攻撃を仕掛ける、二割くらい減ったか、まあ、相手は動けないんだ、時間を掛けたらいいか。
そう思ったのも束の間。
「イヒッ、ボクも攻撃しよう、ゆけ、スライム達よ」
麻痺爆弾を使った女はクロス達三人に黄色いスライムをけしかけた。
……俺は、トラウマを植え付けられた、スライムが三人に取り付く、三人からは悲鳴が上がり、シュウシュウと煙が上がる、三人は俺の前で生きたまま溶かされホネが残った。
「イヒッ、危なかったね」
女は言った、振り返り、女を見ると、天然パーマの肩まで伸びたボサボサの黒髪、度の強そうな眼鏡に白衣を着ていた。
プレイヤーネームは赤字でスワンだった。
白鳥か、俺はそんなシンプルなプレイヤーネームがよく使用済みじゃ無かったなと、場違いな事を考えていた。