第3話「異世界の神はどうしようもないクズでした。」
「お! 来たきた。やぁよく来たねおはよー。でさ、如月 駈くん突然だけどちょっと異世界行って調子に乗っている悪魔さん達跡形も残らず皆殺しにしてきて。」
真っ白な空間の中、俺はどこか適当で重い要求を何日も寝ていないような掠れた少女の声で告げられた。
8畳ほどのこの空間には、様々なゲームカセットやPC、ペットボトル、積まれたカップラーメンの空容器とお菓子の空袋などが散乱しており、とてもじゃないが少女が1人で生活していいような場所ではない。
まさにこれは引きこもりニート部屋だ。
いきなり意味のわからない要求をしてきた少女は、隅の敷布団の上にごろんと寝っ転がっている。
目には酷いクマをつけ、全く手入れをしていないのか髪がボサボサになっており太陽に当たってないことがすぐわかるぐらい真っ白な肌をしている。
まるで、引きこもりの見本のような姿をしているが────
それなりにかわいい顔をしているのはずるい。
年はおそらく中1といったところか。
胸が全く出ていないことをいいことに、男の俺がいるのにもかかわらずシャツも着ずゆったりとしたぶかぶかの服を着ている。
俺は、焦りもせずいたって冷静に返す。
「ごめんなさい、無理です。」
「じゃあ! 死んで」
満面の笑みを浮かべ、手の先で火の玉を出すと俺の方に投げつけてきた。
俺は残り数cmのぎりぎりの距離で避けた。
「避けちゃだめじゃん、避けなかったらすぐ終わったのに」
何この子、本気で殺す気だよ! 終わったのにとか言ってるよ怖いよ!
そうゆうとすぐさま続けて俺の方に手を向ける。
「ちょっと、待てぇぇ」
久しぶりに大声を上げ、散乱しているゴミを蹴り倒しながら、布団に飛び込み彼女の上にまたがり手を抑える。
「もぉ、いきなりなにするのだよ! この変態!」
「いきなり殺されそうになったら、誰でも抵抗するでしょ!」
「人聞きが悪いこと言わないでよ。あなた、異世界に行かないんだったら結局地球にも帰れないんだし、親切な私が一番楽な天界に送ってあげようとしたんじゃない」
「どうしてそうなる 」
········いや待て。俺帰れないの?
「君。 移動式型カメラでここに来たんでしょ。あれは地球から異世界に行くカメラで地球に戻りたかったらとりあえず異世界行くしかないのよ」
「じゃあ、ここはどこなんだ? 」
「ここは地球と異世界をつなぐ、ま、言ったら中間の世界かな?」
「は? 」
言っていることがでたらめすぎて意味がわからない。
何? 中間の世界ってそんなんあんのかよ。
「ここすごい便利なんだよ地球と異世界どっちも遊びにいけるし···」
「え? どっちもって、お前ここからでも地球に帰れるじゃねぇかよ! おいぃぃ」
思わず話の途中につっこんでしまった。
よく考えれば分かったはずだ。
なんでここに地球の食べ物があり、ゲームがあるのか··それはあの少女が嘘をついておりここからでも普通に地球へ戻れるわけだ。
だが、少女は嘘がばれて焦った顔を一つも見せず冷静に話を続ける。
「あ、私だけね。 私、こう見えて神様なので」
俺も随分と耳が悪くなった····
最近暇あればずっとイヤホンを付けて、アニソンを聞いてたからか?若い時からイヤホンを付けていると耳が悪くなるから外せっていつもお母さん言ってたっけ····
こんなどうしようもない引きこもりニート野郎が神様だったもうこの世界はもう終わっている。
「おい、その目はなんだその目は! まさか私がほんとうの神ではないと疑っているのか?」
えぇ、疑っていますとも、もしもマジで何かの間違えであなたが本物の神様ならみんな絶望します······
「じゃあ、お前こんなことろで何やってんだよ」
ふん、だいたいこいつどっからどう見てもニートだろ。 神様なわけない。
「何··んー。 しいて言うなら、異世界で亡くなった人の選別かな? 」
以外に神様っぽい答え帰ってきちゃった──
何本気の神様なのあいつ──
「ま、その話は置いといて、死にたくないのなら君は異世界に行かなくてはならないのだし、ていうかどの道このままだと強制的に異世界飛ばされるんだから、ささやかながらどうゆう場所なのか教えてあげよう」
「強制的なんだ····」
「ある日ある日····」
自称神様はどこか得意げでどこか適当に語り始める。
話を整理するとこうだ····
その前に、ある日ある日ってなんだ? むかしむかしの現代版? それほど昔でもない系?
あ、いっか····
ある日、二つの惑星を創造した仲のいい神がいたらしい。
1人は優秀な神と····もう1人は面倒くさがりでRPGゲームが大好きな神。
優秀な神は、地球を7日間で作り上げた。
RPGづきの神は、憧れ自分も作りたいと思ったが作るのがめんどくさいという理由で違う次元に優秀な神の作ったのを丸ごとそのままパクった惑星を作り、そこから魔法使い、悪魔、モンスターなんかを作り本物のRPG世界を作ったらしい。
要するに、ラストファンタジーやドリノコクエストヒューマンズみたいな世界なのだろう。
地球を丸パクリしたわけだから、人間、動物は、当然いる。
その神たちは自分たちの作った惑星を行き来するために4つの移動式カメラを作ったらしい。
異世界から地球に行くカメラと──地球から異世界に行くカメラ二つずつだ。
地球から異世界に行くカメラは優秀な神が二つとも封印したが肝心の異世界から地球に行くカメラは二つとも異世界にあり、厄介なことにその神は封印するのを忘れその結果、異世界民には地球へカメラを使えばいけることがばれ、邪神軍は地球と異世界両方の侵略を望み、異世界侵略ついでに地球侵略もするか的なノリで今異世界がヤバイらしい。
当然、地球行きのカメラは異世界人が守っているので異世界人が滅びれば地球も邪神軍だらけになる。
肝心のカメラは1つはリスクを和らげるため異世界人がズームレンズと本体に分け、ズームレンズの部分はまだ人間が守り本体の方は既に邪神軍に奪われているらしい。
さらにもう一つの貴重な地球行きのカメラは───どこかに行ったらしい。
つまりこうゆうことだ。
地球に早く帰りたければ、さっさと魔王軍滅ぼして異世界救ってカメラ取り戻して地球に帰れ····
え? 何それ、落ちてたカメラちょっと触ったら邪神滅ぼすまで帰れませんってか?
泣いていいですか?
絶望させてもらっていいですか?
「あのそんな暗い顔してるとこ悪いんだけど、もう一つ君が怒るかもしれないこと言っていい? 」
自称神は、ニコニコと不敵な笑みを浮かべながら言った。
「まだこれ以上何かあるのか?」
正直もう大抵のことを言われても俺は大丈夫だ! さぁ来い!
「その世界作ったの、この私!って痛った何するのさ」
初対面の人の頭を叩くのは、それが始めだったそれも神の
だが、このアホ神をいくら叩いても問題ないと思った。
むしろ異世界の人々は全員このアホを一発殴る権利はあるだろう。
「痛いなぁもー、そんなに怒るなよー」
「これで怒らない奴はただのバカだよ! ていうかなんで俺なんだよ、お前神だったら邪神ぐらい一瞬で滅せるんじゃないのかよ」
「それは無理なんだよ。私創造の神よだから誰も殺せないのよ」
なにそのご都合主義──
「あとなんで君かって? それは運だよ。 君がたまたま選ばれたんだよ。 よかったじゃないか確か今、あそこの人類って70億人ぐらいいるんだろう、てことは70億分の1の確率で選ばれたんだよ宝くじ一等当たるなんてレベルじゃないよ」
「そんな運いらねーよ、どうせなら一等当たってくれよ。 ていうかカメラって封印してたんだろ。 なんで出てきてんの」
「あの子優秀だったからね、もしかしたら私の方の世界がヤバイ時に適当に誰かの前に出てくるようにしてたんじゃないかな。 いやーあの子は賢い」
「おい、今適当って言ったか? 普通選ばれし者の前に現れんだろ」
「ま、選ばれたってことは何かあるんだよ、きっと···· もう君も選ばれたんだから選ばれし者でいいじゃないか」
まるで自分のことのように自慢げに言っているがすごいのは友達である。
だいたいなんでそんな優秀な神がこんな奴と友達なんだ。
どうせなら俺らの神と会いたかった····
「じゃあなんでさっき俺を殺そうとした」
「あれはただのハッタリよ、ああでも言わないと異世界行かないでしょ君。 チキンだから」
······こいつ!
もうこの際、ビビリでもチキンでもアホでもなんでもいい。
「わかったよ、、異世界行けばいいんだろ」
「ま、それしかないね。 ていうか強制だしね、せいぜいスライムに殺されないように頑張ってねー」
こいついちいちムカつく····
「うん。 じゃあ、はい」
俺は神に手を差し伸べた。
「え、なに? あ、これ? ポテチ欲しいの? はい」
「違うわい! 異世界行くための特典だよ、最強の武器とか」
普通、アニメとかで異世界行く時、みんななにかしらもらってる。
最強の剣、チート能力しかりだ。
今か今かと待っていたがこの神いつまで経っても渡そうとしない、ていうか忘れてるんじゃないのか?
俺みたいな一般人がそんなドリクエ世界に掘りこまれたら即お陀仏だ。
「最強の武器? なんのことよそれ? 私が作れると思う、そんなこと鍛冶屋に頼みなさいよ」
·····え?
「作れないのぉぉ?」
「作れるわけないでしょぉぉ!」
なにこの子、マジでなんの役にも立たないですけど。
「どこ常識よそれ、なんではじめからラスボス級の武器持ってんのよロ○さんでもはじめは鍋のふたで戦ってたわよ」
ロ○さんと俺を一緒にしないでくれませんか。
あいにく、俺にあんな最強の血は流れていない。
「仕方ないわね」
「武器くれるの? 」
そうするといきなり、俺の頭を小さな手で鷲掴みにしてきた。
「痛い痛い痛い痛い痛い」
このアホ神どんな握力してんだよ!
「はい終わり、これであなたは異世界の言葉がわかるようになったわ」
「え? もしかして、今まで俺異世界語わからなかったのか俺····地球丸パクリだから同じ言語かと」
「違うに決まってるよ、馬鹿なの? 一回死んだほうがいいんじゃない?」
「先言えよ、わからなかったらはじめから積みじゃねかぁ」
もう叫びすぎて、喋るのもしんどくなってきた。
「お、もう20分たったかなカケル君準備して、そろそろ異世界に飛ばされるよ」
「え?」
「いやぁ、言うの忘れてたけど転送すんのにこれ20分かかんだよ私も、地球行く時よく待たされたよ」
「え?」
「バイバイ、初めはカケル君でも死なないいい所に飛ばしてあげるから安心しなよ」
「え、何が何だか」
「そんなに心配なのじゃあひとつ私が助言してあげよう。 もじゃもじゃには気をつけて」
そう意味深なこと言うと····
自分の周りから白い光が現れ、包まれた。