プロローグ 「タケノコだけは見たくなかった····」
気がつくと見知らぬ光景が広がっていた。
人間本気で驚いた時には、叫べないというが
どうやらそれは事実なようだ·····
とりあえず落ち着け。
とりあえず、この世の空気中75パーセントの酸素を脳内にぶち込み脳をフル回転させ考えろ俺!
·······落ち着こう。
まずここはどこなのか?
記憶が曖昧だが、周りを見た感じここは部屋の中のようだ。
拉致られ監禁されているのか?
いや有り得るわけがない。
これに関しては、確信が持てる。
なぜなら、俺みたいな糞、拉致っても特に意味が無いからだ!
····自分で言うのもなんだけど
しかし、どうせ拉致るならもっと可愛い女の子か金持ちの家の子供だろう。
さらに言うと、俺は田舎生まれの田舎暮らし! 一般庶民! お金? あるわけないだろそんなもの!
少しずつ平常心を取り戻していき、周囲を見渡すとまず目に入ってきたのは金持ちの家でよく目にする大きなシャンデリアにファンタジーでしか見ないような大きなベッドが置いてある。
·······チッ、金持ちか
だがこれで、拉致という線は完全に消えた。
「あんた·····ねー」
部屋の奥から震えた声で女の人が、俺に言ってきたらしい。
俺は、その女性を見て驚いた。
宝石のように美しく光る青い瞳に、フランス貴族を彷彿とさせるドレスを纏っており、それでいてとてつもない金髪の美少女だ。
現実とは思えないほど可愛い。
だが少し気がかりなのは、この謎の美少女がさっきから俺に向けて怒りの視線を向けている事だ。
よく見るとたんこぶを付けている。
チャームポイントなのかな?
「あんた、ここまで私に嫌がらせするとはいい度胸ね」
·····え?
彼女はどこか怒っている様子だが、言っている意味がわからない。
どちらかと言うと俺の方が見ず知らずの場所に連れてこられて誰かの嫌がらせを受けている身なのですが?
それについては·········
「私が飲んでたオイティの中にそこに転がってる、見たことない食べ物が落ちてきてコップに入って地面に落ちて、お気に入りの絨毯にこぼしちゃったじゃない! 挙句の果てには頭にも降ってきてたんこぶ出来るし·······どうせこの食べ物が降ってきたのもあんたのせいなんでしょ? そうなんでしょ! えぇ、そうと思ったわ! で、どうしてくれんのよ」
その美少女は、俺に指を指し頭に怒りマークをつけながら、怒鳴ってきた。
······すごい言いがかりだ
「ちょっと待ってください。俺は······」
動揺しながらも、俺は答える。
「あー、もういい。あいつに言いつける」
話を全く聞いてくれず、そっぽを向いた。
「俺······」
「この私を怒らせたのが悪いのよ! あんたはもう死刑ね死刑! 」
「ちょっと待てぇぇぇ、おい」
彼女はまだ何か言いたそうに口をもごもごしているがとりあえず俺のターンが回ってきた。
「全部俺のせいにしているけど、俺もいきなりこんな所に連れてこられて状況把握出来てないんだよ。あと食べ物ってなんだよ食べ物ってそれに関しては俺、無関係だろ」
「は? あんた何言ってんの、ここはラティーンにある王城の中の私の部屋なんですけど瞬間移動の魔法かなんかでここに入ってきたんでしょ」
思わず逆に、「あんた何言ってんの? 」と聞き返したくなるが、相手の顔からして察するに適当なことは言っていない そもそもラティーンって······
「痛って」
後方からさっきの転がっていたものが俺の頭に飛んできた。
ただでさえ情緒不安定になりかけているのにお構いなしそれを投げつけてくるんですけど。
なにあの子、一発殴ってやりたい····
「これ、あんたと無関係とは言わせないわよ。だってこれが出てきた瞬間あんたも一緒に出てきたんだから」
こんなもの知るわけ····
······ん?
やばいどうしようとてもご存知だわ·····
何なら家の近くにふつうに生えてます。これ
ていうか、俺じゃなくても誰でも知ってるだろ。
······何で彼女は知らないんだ?
正直もう答えは出ているが、決断したくない俺がいる。
ズバリ! それの正体はタケノコだ!
······でも何でタケノコ?
「あ······」
今まで失っていた記憶がこのタケノコを見て、一瞬にして蘇ってきた。
······終わったー。
てかなぜ忘れていた?
俺はすべて思い出した。