第1話 プロローグ
今回で4回目の改稿になります。
第三稿であった「崩壊の兆しある世界にて」から設定の一部を引き継ぎつつ自由に執筆していこうかと思っています。
宜しくお願いします。
10歳の時に前世の記憶が戻った。衝撃過ぎる出来事のショックが引き金だった。どんな内容かは思い出したくもない屈辱だ。思い出させないで欲しい。
ただ気が付けば俺が過ごした傭兵団と相手勢力は物理的に消滅し、立ち尽くす俺の前に銀髪の美剣士が現れ微笑みこう宣った。
「ヴァルザス。やっと……見つけました」
そう言って殴りかかってきた。精根尽きて2人して地面に転がるまで半刻は掛かっただろうか?再会を祝した肉体言語での挨拶の様なものであった。
それから俺と前世での相棒であったこの美剣士フェリウスとの旅が始まる。
想定外だったのは、現在は始祖世界と呼ばれた世界が終末戦争の果てに崩壊したから2万年ほど経過していたことだった。
崩壊する始祖世界で恋仲だった1柱の女神と脱出不可能となった世界の成れ果てで来世での再会を誓って選択転生を決行し今に至る。
忘れていたが相棒は人族ではない。始祖世界で恐慌を引き起こした最凶8真龍の王の1体にして雷帝にして銀鱗の龍王と呼ばれる本来は全長120メートルに及ぶ巨体であったが活動に支障があり変化で現在の姿に変えて物質界で俺の生まれ変わりを探して放浪していたらしい。休眠期を間に挟んでも約2万年……不死と言われる龍にとってもそれなりの長い期間であった。再会した時ぶん殴られたのもそれが原因の一つだ。
その後前世の約束の女との再会する為に相棒と系列世界を幾重にも巡った。記憶が戻って7年が経過しただろうか。転生の魔法は15歳までに記憶と能力や姿を取り戻すのだが、既に記憶は戻っているはずなのに何の音沙汰もない事態に焦りを感じていた。そんな時とある系列世界で一人の少女と出会う。
辺境の寂れた村の出身の少女は大陸最大の王国と最大の宗派「光輝教」によって勇者と認定され魔王討伐に使命感を燃やしていた。
しかし使命感と準神話級の魔法の工芸品である勇者装備を身に着けただけで倒せるほど甘いモノではなく魔王軍幹部に全滅させられそうだった彼女らを救った縁で当時13歳だったアリアという少女をちょうきょ……教育しつつ3年ほどの歳月が流れ、ついに魔王の居城に攻め込んだ。
よく言われる魔族と言う種族は実在しない。
今では始祖世界と呼ばれているが、その時代に神と称した巨神族の終末戦争の時に闇の主神陣営についた種族を分類上そう呼称しているだけである。無論そう広めたのは「光輝教」である。
法と秩序を謳いながら上層部の実態は「嘘も100回付けば真実になる」「大声で叫べば我が通る」などと2万年近く実行し続けた結果は兄妹神の闇の女神は邪神扱いになり、彼女の陣営に着いたものはすべて邪悪な存在と呼ばれるようになった。
この系列世界で魔王と称する者は赤髪で6本角の龍人族であり、魔王の居城では眷属の龍人族や下位種族の竜人族やら妖魔と呼ばれる犬頭鬼、赤肌鬼、豚鬼、食人鬼などがおり、いくら切り伏せてきただろうか?と思うくらい切り倒した。
魔王討伐パーティは俺、相棒、前の世界で意気投合してそのまま着いてきた上位地霊族のバルド、教会の犬こと光輝教の司教、王国の犬にして斥候のふりをした暗殺者、宮廷魔術師団から派遣された八大魔術師、そして勇者認定されたアリアを含めた7名である。
途中下位竜や闇森霊族の魔人像使いやら岩肌鬼の脳筋集団などを蹴散らし、とうとう玉座の間に到着した。
王座の間は位階の低い4本角の龍人族の4人の幹部と2本角の龍人族の親衛隊30名が控えていた。
相棒とガラドには4人の幹部を抑え込み勇者であるアリアが後衛を守る。
うちの勇者は盾戦士向きにちょう……教育してある為に直接魔王を討伐させてやりたいが実力的に到底無理と判断し、俺が魔王と対峙する。致命傷を与えて止めだけ刺させる予定ではいるが……。
魔王の斬撃は準神話級の魔法の工芸品である魔剣デスブリンガーの威力頼りなのか一撃の威力は脅威なのだが、大技も多く剣技も雑であった。大技も必殺の斬撃も当たらなければどうと言う事はなく、紙一重で斬撃を避け、避けにくい斬撃は愛剣で受け流す。疲弊させることが目的なので此方から大ぶりの攻撃はせず、愛剣は牽制と防御にのみ使い隙を見つつ気功闘術で気功を纏わせた手撃や脚撃で打撃を与えるが、龍人族の特殊能力竜肌と竜鱗の恩恵かあまり打撃が通ってる気がしない。
ただこの魔王は戦場の選択を間違えた。この王座の間では竜化は使えない。6本角のこいつは竜化すると古竜と同等の能力を得るが大きさもそれに準ずる。全長30メートルの巨体がこの王座の間には収まるはずもない。
斬り降ろし斬撃を避けつつ後ろ廻し蹴りを放ってみたが大きく飛び退り距離を開けられてしまった。あ、これは大技くるわ。
距離を取った魔王は両手持ちである大剣を上段に構える。距離は7メートルほど離れている。待ちに徹するならカウンター気味に「強撃」か「真空斬り」だろうし、攻めなら「屠月斬」か「武歩」からの「強刺」のコンボか?
しかしあれは槍技で大剣でも再現はできるが、そんな小細工できるのかね?今のところ大剣を風車みたいにぶんぶん振り回すだけだったが、これのための布石とかだったらちょっと評価を変えてやらないとなぁ。
後の事を考えるとうちの後衛組は疲弊させておきたかったんだがな。なんせ世界を震撼させた魔王を倒した勇者は危険という理由でアリアを始末するついでに俺らも始末する段取りらしい。流石に親衛隊30人を抑え込めとか無理か。
魔王には個人的恨みはないけど逝ってもらうか。
そのとき、ふと気が付いた。魔王を中心に強い魔力を感じる。ただし魔王のではない。そして魔王の足元を中心にした巨大な魔法陣が表れ光り輝き始めた。
この事態は完全に考慮してなかった。輝きが強くなり視界が真っ白に染まった。