第30話 準備完了
「毎回、毎回、どうしてヴァルザスは(以下略」
メフィリアのきりっと、難しい表情で如何にも怒ってますという態度だが、そんな顔も可愛いなぁとか思って聞き流している。
「聞いてるの?」
とかたまに問われるが、
「もちろんだ、俺がメフィリアを声を聞き逃すわけがないだろ」
と瞳をじっと見つめ真面目くさって答えてやると赤面して、わたわたと慌てだすのが可愛くてついつい調子に乗ってしまう。結果として説教の時間が延びるのであるがある意味ご褒美だ。
竜人族を受け入れたその日の夜。寝静まった所を転移で商都ウィンダリアへ舞い戻る。そこで1人の人物と落ち合う段取りになっている。
その人物にここ数日の話を説明し、時空収納に収められた大量のアイテムを引き取って貰う。
「ではこの魔法の工芸品はタイミングを見計らって売り捌きます」
そう言って大量のアイテムを自分の時空収納に収めていく。
「しかしそちらは楽しそうですね。こちらは仕事とはいえ門閥貴族に取り入るために苦労しているのに羨ましい限りです」
月明かりがその人物のを照らす。長い銀髪が月明かりを受けて輝いた。言わずと知れた俺の相棒である。その後いくつかのやり取りをした後で別れる。商都ウィンダリア東区の冒険者ギルドの支部へ顔を出す。こちらは初めてで見知った人物はいない。まっすぐ依頼掲示板に向かいとある依頼書を物色し内容を覚えて立ち去る。
商都ウィンダリアは治安はかなりいいが、それでも裏通りは胡散臭い輩が多く集まる。そこである人物と待ち合わせをし簡単な打ち合わせなどを済ませてから中洲へ戻る。
特筆する事もなく気が付けば中州に滞在してあっという間に幾日が過ぎ去り春の中月の後週。
その間、アリアとエルナは若い竜人族の戦士達と箱庭を利用して延々と修練の日々だったし、瑞穂は語学の勉強を行って、その後は近接戦闘の訓練をメフィリアと一緒に行う。俺はといえば昼間は魔法の工芸品や水薬を作って過ごし毎夜、夜半に出かけて明け方に戻る生活をしていた。
そろそろ戻って報告して邸宅の建設作業を始めてもらうかとか考えていると、
「ヴァルザスは毎夜何処へ行ってるの?」
そうメフィリアに問われたがあまり答えたくはないなとか思っていると、
「そりゃヴァルザスも男の人ですからね、私に言ってくれれば幾らでも……」
「ボクも….」
エルナとアリアが頬を染め腰をくねらせながらそんな事を言い出す。
そんな2人を拳骨を落として黙らせておく。残念だが君ら思っている事とは違うんだ。あと残りの2人も頬を染めて思い思いの想像するの止めなさい。
これ以上詮索させないために明日以降の予定を話す事にする。
「明日の朝にはマネイナ商会へ中洲の作業報告してから建材などを輸送し終わったら邸宅完成まで少し商都から離れようかと思う」
「どうしてです?正直言うと生活の質が落ちるのが地味に辛いんですよね」
エルナの言い分もわかるが、ただ俺は君らを養う予定はない。冒険者ギルドの階梯はギルドの信頼度であるが実力ではない。第3階梯だと見習いを終えての下っ端なので効率のいい仕事は指名依頼しかない。商都に住む冒険者の多くは他で階梯を上げてから商都に住み着くものが多い。俺もそれに倣うだけだ。
「ん?なんだ皆は下水掃除で生計を立てたいのか?なら頑張れ」
「「「「いえ、結構です」」」」
見事に4人ハモった。もう黒蟲駆除は懲り懲りのようだ。
「なんか冒険者って夢がないですね」
そう瑞穂が言うが、夢はあるんだ。
「基本的に冒険者の多くが極潰しばかりなんだよ。親の遺産はほぼ長男が相続で次男は長男の予備。三男以降は独立しないと生きていけないが、職業の選択はあまり多くはない。資格がなく一獲千金を夢見れるのが冒険者という職だが、現実はほぼ人の嫌がる仕事をやるか頭ごなしに使い潰されるのが実情だ」
続きはアリアが引き継ぐ。
「でも運良く古代王国などの遺跡を発見し制覇すれば莫大な資産が手に入る可能性がある。大半の人は結果が出ないことにイラついて途中で引退か野盗落ちとかするんだけどね」
「他の街へ行く理由は滞在費とかの問題なの?」
今度はメフィリアが質問してきた。
「商都だと大都市過ぎて仕事が限られてのしかない上に拘束期間の長い仕事が多い。しかもただ延々と馬車に揺られてたりするだけの簡単な仕事だから俺はやらない」
「あ~地方は魔物も出るしボクらの訓練も兼ねて駆除系の依頼とか受けようって事だよね?」
アリアが確認をとってくる。連帯もそうだが、この世界はあまり優しくないから戦闘技術は持っておいて損はない。
最後にバルドから受け取った装備の魔力付与も終わったし、それぞれに渡していく。
基本的に魔力付与の内容は高位防護膜、魔力壁、害虫駆除、洗濯、重量軽減、抗魔、入れ物、保全、温度緩和、能力覚醒とたぶん売れば一生遊べる金が手に入るだろうな。
メフィリアの装備だけは特別製だ。ほかの娘とほぼ同様の魔力付与を行い、更に彼女の特性に合った魔法特化仕様に変更する。代償として能力覚醒の機能はなくなった。因みに素材は防具ではなく以前購入した衣服だ。
翌朝となり転移門にて商都ウィンダリアに戻り予定通りの手続きを終わらせる。職人やら魔術師やらを転移門で送り現地で仮設住居を設営しいてる合間に、邸宅に必要な材料などを時空倉庫に放り込み中洲の開けた位置に置く。職人たちは邸宅完成までこの仮設住宅で寝泊まりし作業に専念してもらうことになる。中洲周辺は竜人族達に警護を頼み、食料を置いていく。基本的に彼らには現金は不要だ。
全てが片付いたのは日も沈もうって時刻だった。
これは出発は明日の朝だな。
早くお嬢さん方を鍛えて本来の目的を遂行したいものだ。
お客さんの信用を失わせるくらいしょぼい仕事をした前任者の尻拭いで執筆に割く時間が大幅に減りました。
なんとか2~3000文字程度で頑張って更新していこうかと思っています。




