目に光を灯す 6
ヒカリは取り出した小包を丁寧にあけた。ハヤトの指示に従って急いで出てきたため、小包の中身がどんなものなのか、まだ見ていなかった。
ヒカリの細い指先が梱包材を止めたテープを一枚一枚剥がしていき、包まれた機器が中から現れた。
ホログラムで見せられたものと寸分かわらない、ただの小さな箱だ。
「姿勢を知るための装置って言ってたよね、ハヤト。」
ヒカリは箱を持ち上げてよくよく調べながら言った。
「その装置を制御するアルゴリズムが実装された基盤だろ、中に入ってるのは。」
ヒカリのつぶやきを横から補足した。ヒカリは宇宙とか科学とか好きだ。好きだが…あんまり明るくない。僕の方がよほど、ハイテクには詳しい。
「あ、そっか。この小さな箱1つで、3トンもある衛星を動かせるのかと思っちゃった。」
「ある意味では正しいんじゃないか?要は頭脳なんだし。」
僕はヒカリに手を差し出して小さな金属の箱を無言で要求する。ヒカリはそれを察して、僕の手のひらに箱を置いた。僕はそれを受け取って手元でひっくり返した。
「ちょっと気になってたんだ。ケーブルとかないのに、どうするんだろうと思って」
箱の側面はつるつる。頭脳なら、手足に命令をおくる、言わば神経が必要だ。アルゴリズムの選択をおくるケーブルはどこにつなぐんだろうか。
僕の疑問に、ヒカリも首をかしげる。おまけに、これ、どこにつけたらいいんだろうね?ときた。
その通りだ。
二人で顔を見合わせる。
「どうせ、直前にハヤトからメールがくるよ」
と僕は言った。いつものことだ。ハヤトの指令はいつもギリギリなんだ。
なにがおかしかったのか、ヒカリがくすくす笑った。
「そうね、確かに、ハヤトっていつもギリギリだもの。」
「僕らの苦労も考えろっての」
「ほんと。でも、なんか憎めないよね、ハヤト。実はあんたに似てるよね、ハル」
僕はびっくりした。そんなことないだろ?と思わず否定する。僕はあんな嫌味なやつじゃないし、まぁ、なんだ、あれほど頭も回らない。
「そう?ハル、あんた怠けてるだけで賢いじゃない。ハルが真面目に勉強して、ついで、ちょっと捻くれるとああなるんじゃないかな?って」
うふふ、とヒカリが笑う。
うふふじゃないよ、と言ってるうちに飛行機は目的地へと到着した。
ヒカリは僕の手から箱をひったくり、慌てて梱包材に包みなおして小箱に入れた。