目に光を灯す 5
ハヤトマジックでやすやすと改札をくぐり抜け、僕たちはあっさりと空港へと到着した。
ヒカリがちらりと腕時計を確認する。さっき、スマホに送られてきた沼田さんからのメールにある予約番号をチケットカウンターに打ち込み発見された航空券の出発時刻はあつらえたようにちょうどいい。
僕たちが、一息ついてトイレに行き、ゲートに向かえば、それほど待たずして出発する、という感じだ。
「ほんと、ハヤトは何者なんだろう…。」ヒカリも同じことを考えてたのだろう。そう呟いた声はまさしく今僕が言わんとしていたことだった。
しかし、ヒカリに先に言われてしまったので、僕はその先を言う。
「今回の仕事もよくわからないよな…。鉄道も飛行機も自由自在で、打ち上げる衛星の問題点まで知ってる。でも、それだけのことができるのに、JAXAにはコネがないのかな。なんで、僕らにこっそり取り替えろってなるんだか…」
僕の問いかけにヒカリも首を 傾げた。
「確かに、ハルの言う通りだよね。問題点の指摘をJAXAにはできなかったのかしら。…ただ、鉄道や飛行機の件はきっと、コネなんじゃなくて、ネットワークやIT関連のシステムに強いだけだとは思うけど。」
「システムに入り込んでるのは沼田さんかな。あの人、ニコニコ顏でいつも何も言わないけど、手強そうだよな。」
「そうね。チケットの予約番号なんかはいつも沼田さんからくるものね。」
僕の問いかけに、律儀にヒカリは返事を返す。
その時、アナウンスが流れ、僕たちの乗る飛行機の搭乗が開始された旨が伝えられた。
ヒカリとさっと視線を交わして、二人で搭乗口へと向かう。
フライト時間は一時間もない。そのあともう一度だけ乗り換えて、また数十分のフライトを経れば目的地だ。
僕たちを狭いシートにしばりつけた飛行機の機内はさながら、ブロイラーを大量に飼うニワトリ小屋のようだ。
沼田さんがとってるのか、ハヤトの指示なのか知らないが、せっかくならエコノミーではなくてビジネスでもとってくれればいいのに。
きっと、ハヤトだな、と答えを出した頃、にわとり小屋は地を蹴って、空へと飛び立った。
飛行機が安定し、シートベルトのサインが消えるの、隣に座るヒカリが、ごそごそとリュックの中から例の小包を取り出した。