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目に光を灯す 2

無理難題に目を見開いた僕らを前に、舌の根の乾かぬうちにハヤトは淡々と説明を続けた。

その金属の箱は「スタートラッカー」と呼ばれる部品の一部らしい。

ハヤトの説明によればAstro-Hは宇宙空間で星の観測をするために回転して向きを変える。その時に問題が起き、自動では問題を正すことができないまま、最後には手動で間違った指令を与えて、機体の両側に翼のようにのばした太陽光パネルをへし折るほど機体をまわしてしまった。結果両翼が吹っ飛んで、そのまま機体もバラバラになる、というのだ。

このスタートラッカーは機体の回転を測るためのセンサーの一つらしい。問題のきっかけは、はじめに機体の回転をきちんと測定できなかったことによる。測定できないまま、おかしな回転をしていると勘違いした人工衛星のシステムは間違った測定値をもとに回転を正そうとし、更に事態を悪化させるのだそうだ。


ついていけない僕をよそに、ヒカリは横で青ざめだした。

「…ハヤト、まさか…?」

と口の中で小さくつぶやく。それを聞いて、僕はヒカリが何を考えているのかはわかった。心配性らしいこいつのことだ。でも、いい子ちゃんだから面と向かってハヤトに問うことができない。そんなときは僕が代わりに言う。いつものことだ。

「で、この箱がそのセンサー異常を引き起こすわけですか?僕らに衛星を落とせと?」


ハヤトは未来人かもしれない。でも、そんなことはあり得ない。時間の流れは一定で決してさかのぼることなんてできるわけがない。ほんの少し前に話題になった”光速を超えるニュートリノ”も実験中の手違いだということが証明されているのだ。


だとすると、ハヤトが言ったことは”未来”ではなく”シナリオ”だ。

この箱はきっと、衛星に異常を起こさせてしまう。


目の前のハヤトが小さくため息をついた。

「それは改良版だ。スタートラッカーが途中で捕捉モードから追尾モードに変わって測定をやめてしまったのがはじまりだ。その箱はモードの切り替わりが適切に行なわれるよう、プログラムを書き換えたものだ」

本当だろうか。僕はちらりとレイと沼田さんをみた。

沼田さんのニコニコ顔はいつもと変わらない。聞いてるんだか聞いてないんだかわからない様子でやっぱりニコニコしている。レイは僕の考えていることがわかるのか、訳知り顔でこっちを見ていた。


僕は最後にヒカリを見た。ヒカリも僕を見て、そして僕は言った。

「わかった。すり替えたらいいんだな。」


ハヤトは一つうなずくと、沼田さんに向き直り

「じゃあ、沼田さんお願いする。」

と言った。









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