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目に光を灯す 16

敷地内の見取り図に示された侵入経路に沿って、VRの画像が進んでいく。まるで同じ画像を見ているかのごとく、寸分違わぬタイミングでハヤトの説明が入る。


まるでナレーションだ。


「ひとみは明日打ち上げだ。知ってると思うが打ち上げにはH-ⅡAロケットが使われる。」


ハヤトの淀みない淡々とした口調がほんの少し空気をピリリとさせる。SF好きの科学ファンともいえるヒカリが「H-ⅡAロケット」という名称にほんの少し頰を紅潮させたのは当然の帰結であったが、ハヤトの作り出す緊張感にヒカリが黙ってその高揚を抑えた。それを横目に見ていた僕は、実は「H-ⅡAロケット」という名称もうる覚えだ。


「ハル、ちゃんと聞いてる?」

レイの澄んだ声が突然僕を現実に引き戻した。今は最終打ち合わせの最中だ。ぼーっとするのはまずい。それにしても、レイは抜群のタイミングで僕によく注意喚起を促す。ハヤトにも心中を読まれているのではないかと思うことがあるが、レイはさらに一枚上手だ。しかも、ハヤトには反発心を感じることがあってもレイには感じない。人使いの荒いハヤトに苛立ちを覚えるような時には、必ずと言っていいほど、レイの声で心は中立な状態に引き戻された。彼女の声は心地よく、どこか懐かしい。


「聞いてるよ。続けて。」

そう答えながら、ふと、横から視線を感じて僕もヒカリに一瞥を返す。一瞬前までH-ⅡAロケットというワードに心奪われていたくせに、もう僕の心配をしている。


「ハル、ヒカリ、今夜ひとみは整備組立棟の中にある。」

ハヤトの声に合わせて、僕のスマホに写る敷地内地図の一点が煌々と光った。VRが示す現時点の場所からそこまでの経路が滑らかに描き出された。それに合わせてヒカリのスマホに写るVR画像がゆっくりと前進する。地図で見ても敷地内の建造物の中ではもっとも大きかったが、VRに写るそれはどこまで見上げても天井に届かないほど大きくて高い建物だった。


「その中にH-ⅡAロケットが入っている。ひとみが格納されているのはその先端部分だ。」

ハヤトの説明に僕はあんぐり口を開けた。もしや、これ、上まで登らないといけないのか?


どうやらヒカリも同じ思いだったらしく、整備組立棟の天井を見るために上へと掲げているスマホを見ながら、その口がぽかんと開いている。


やがて僕の視線を感じたようでヒカリがゆっくりとこっちを見た。そうして、僕が二人の気持ちを代表してハヤトに尋ねる。


「ってことは、登らないといけないの?」


ハヤトの答えはあっさりとしたものだ。ええ、わかっていますよ。あなたはそういう人ですよね。

「そうだが。まさか、建物中に階段ひとつ無いなんて思って無いだろうな?きちんと作業ができるようフロアになっている。整備も組立もするんだぞ。建物の名称でわからなかったのか」


呆れ返ったようなハヤトの言葉とともに、VR画像はゆっくりと整備組立棟の中へと進んで行った。


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