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勇者、暁の刃を持つ!

 前回から随分と報告が遅れました。それも、勇者一行が長い間町の近くをうろつき続けていたためであります。そのせいか勇者一行は大変強力になっています。私、ジョビーノ・ガネーメの特注眼鏡によりますと、彼らは十も二十もレベルを上げております。そして、よぉく見ますと、パーティが勇者、女剣士、女魔導師、踊り子となっている。


『勇者の生態その十七 また、女追加である』


 そして現在、勇者一行は破竹の勢いでなんとチャメ・ワヨイの地下城を攻略しております。地下城に控える魔物たちは、これまで彼らが相手してきた魔物たちよりは強力な奴らばかり、苦戦を強いられている模様。……ですが、なんともうチャメ・ワヨイの目前にまで到着してしまいました!

「良く来た、勇者達よ……。この地方の魔物を支配していたのはいかにも、このチャメ・ワヨイ様だ。クッフッフッフ、ずいぶんと派手に私の部下を倒してくれたらしいが、私は奴らのようにそう簡単にやられはしないぞ……。クッフッフッフ、それに貴様たちのその防具はなんだ? 我ら魔物を、果てには魔王様を倒そうとするものが、そんな一般の鍛冶師たちが作ったような簡素な武具、防具でいいと思うのか? そのようなものでは私はおろか、他の地方を収める魔王様直属の配下、四天王を倒すことはできまい。クッフッフッフ。それはそうと……」

 長い! チャメ、話が長い! やっと勇者に遭えたからって、そんな流暢にしゃべんなくてもいいでしょうに! どれだけ勇者と話したかったのよアンタ! どれだけ勇者を待ち望んでたのよ! 

「……では、この私がお前たちの旅路をとだえさせてくれよう!」

 やっと戦いになりました。チャメは長身の魔族ではありますが、意外と魔法中心に闘います。そう言っている間に、強力な毒の魔法を使い、勇者一行を毒に侵してしまいました。僧侶がいない今の勇者一行は、毒消し草をもしゃもしゃと食べて回復しようとしますが、それを許さないのが巧妙な戦い方というもの。チャメは雷の魔法で圧倒します。

「……」

 勇者は片膝をついて、息を切らしています。

「大丈夫ですか、勇者様……うっ!」

 彼を心配する仲間たちも、毒に侵され、もはや虫の息です。いいぞ、チャメ、もっとやれ!


『勇者の生態その十八 最初の魔王の使いには大苦戦する』

「クッフッフ。さぁ、これで終わりだぁああああ!!」

 チャメは叫びながら、勇者のもとに走った。手刀で勇者に止めを刺すつもりだ。飛び掛かるように距離を詰め、勇者の頭めがけて突きを放つ。しかし、勇者が跪きながらも、それを軽やかに避けた。

「なあっ!」

 大ぶりの攻撃を放ったチャメの隙は大きかった。

「……っ!」

 勇者は、手に持った剣でチャメの長い胴を切りつけた。

「ぐああああああああっ! や、やられたああああああああああ!」

 チャメは切られた腹を押さえながら後ずさる。

「く、くそう。こ、この私が、この私がやられるとは……。く、くふ、クッフッフッフ。貴様ら、この私を倒したからとはいえ、いい気になるなよぉ……。この私がやられたことによって、他の奴らは本気で貴様たちを殺しにかかるだろう。多少油断していたとはいえ、この私がやられたのだ……。この私程度に苦戦するなら、他の奴らには敵わないだろう……。そうだ、奴らを倒すにはそんな貧相な武器では無理だな。伝説の、最強の武器、防具をそろえる必要があるだろう……。なに、どこにあるかだと? クッフッフ、それはだな……」

 いや、早く死ねよチャメ! なに饒舌に遺言語ってんだよ。しかも、結構大事なこと漏らしてんぞお前。それを勇者たちも聞き入ってるしぃ! 私たちにとってそれマイナスにしかなんねぇんだよ! 勇者達絶対それ知ってる、知ってる上で止めを刺そうとしてないわあれ! だってみんな毒消し草食べたり薬草煎じて飲んだりして回復しながら聞いているんだもん!


『勇者の生態その十九 死に際の敵の語りはきちんと聞いておく』


「それは、世界中に散らばった……」

 仕方ないわね。これ以上情報を流されるわけにもいかないわ! 私のこの、眼鏡手裏剣で!

「えいっ!」

 かけていた眼鏡をチャメめがけて投げる。

 サクッ!

「ぐはあああああ!」

 眼鏡はちょうど、チャメの心臓に刺さった。狙い通り、チャメは絶命したわ。さて、いったん魔王様の元に戻りましょう。この報告も済ませなくてはいけないし……。



「なに! チャメがやられたじゃと!?」

 魔王城に帰って早速魔王様に報告。チャメの死には大層驚愕し、お怒りのご様子。

「く、くっ! 儂の部下をよくも、よくも殺してくれたなぁ! 許さん、許さんぞぉ!」

 魔王様の怒りはまるでこの城が震えているように感じるほど。これは、私が止めを刺したことは黙っておいたほうがよさそうね……。

「魔王様、気をお鎮め下さい」

「心中、お察しいたします」

「ですが、我々がその無念晴らして見せましょう」

 突如、目の前に三人の黒装束に身を包んだ魔物が現れた。

「お前たちは残りの四天王!」

「魔王様、必ずや私たちがチャメの無念を、そして魔王様の野望を叶えてさしあげましょう……」

「われわれにお任せください、魔王様」

 残りの四天王たちは跪く。

「そうかそうか、よし、儂のために、あのにっくき勇者を打ち取るがいい! フッハッハッハ……」

 魔王様は上機嫌に笑う。これほどにまで忠義を尽くしてくれる部下がいることが、大変喜ばしいことのようだ。

 ……しかし、大事な部下がやられておいて、自らが出陣しないような統領に、普通は着いて行こうとは思わないのでは……?



『魔王の生態その五 やはり、魔王は部下からの信頼だけは非常に篤い!』


どうも、作者です。ここまで読んでいただきありがとうございました。いやー、ドラクエヒーローズ発売されましたねー。面白いのだろうか、と思いつつトルネコの大冒険をやっております作者です。ちなみに、次回がラストです。では、また会えましたらよろしくお願いします。

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