主人公は標的でした
俺がアリスたちに監禁されてから三日が経過した。人質としての価値がある俺には三大欲求が保障されている。食事が与えられ、トイレにも行くことができる。
しかし自由に歩き回ることはできない。食事は決まった時間に運ばれる。トイレに行きたいと言えば、排泄も可能。もちろん逃走しないように監視されているが。
この三日間。俺はアリスに会っていない。アリスは俺の王国に出向き、水面下で交渉を進めているらしい。アリスは俺がテロリストに拉致されたという嘘の情報を流している。
国民たちは知らない。アリスが俺を拉致した張本人であることを。
国民たちは疑わない。アリスが俺を拉致した張本人であることを。
国民たちは信じない。アリスが俺を拉致した張本人であることを。
その翌日。俺の目の前にあるドアが開く。そこから金髪碧眼の少女アリスが顔を覗かせる。
アリスの顔を見て俺は疑問を口にする。
「交渉はどうなった」
俺の質問を聞きアリスは笑顔を見せる。
「簡単でしたよ。ヤムヤムから抽出されたエキスがあれば、あなたを助けることができると言ったら、快く受け入れたわ。エキスを抽出する機械はこっちで準備するって言ったら、大量のヤムヤムを提供するってさ。もちろんヤムヤムのエキスなんて必要ないんだけどね。国民はあなたの帰りを心待ちにしていますよ」
アリスと部下たちが俺を笑う。俺はアリスたちが俺を生きて返すわけがないと悟った。
アリスが俺の目の前で人差し指を立てる。
「さて大量のヤムヤムが手に入ったことですし、第二段階を始めましょうか。あれだけのヤムヤムがあれば、万能薬が開発できそうです。ナリタがヤムヤムを独り占めすれば、世界中の人々がナリタから万能薬を購入することになる。そうなればナリタが世界を牛耳る国家となるでしょう。ということで、あなたの国を植民地にします」
アリスのはっきりとした言葉。アリスは本気で俺の国を侵略する。
独裁者の手によって俺の国は崩壊する。それは変えられない事実。ナリタの軍事力があれば、一時間で俺の国が侵略される。俺の国は弱い。
それから十秒後、アリスの部下が険しい顔をして、監禁部屋に現れる。
「アリス様。大変です。怪盗サンシャインタウンの予告状が届きました」
怪盗サンシャインタウン。聞いたことがない名前だ。おそらくナリタを活動拠点にする盗賊か何かだろう。
アリスの部下が慌てて一枚の紙を取り出す様子が見えた。部下はアリスに白い紙を渡す。
アリスは予告状に目を通し、顔を曇らせる。予告状を届けた部下はアリスの顔色を伺いながら聞く。
「どうしますか」
「今夜十時。間宮勝弘を頂きに参上する。怪盗サンシャインタウン。面白いじゃない。この国に眠る秘宝よりも、こんな男の身柄を奪うなんて馬鹿な盗賊ですよ」
アリスの言葉から、俺は予告状の内容を知った。どうやら怪盗のターゲットは俺らしい。
なぜ俺が標的になったのか。もしかしたら俺の国の誰かがアリスの嘘を見破り、俺を奪還しようとしているのかもしれない。怪盗サンシャインタウンというふざけた名前を使って。
密な期待を抱き、時間が過ぎていく。
午後九時五十八分。縄が解かれ自由な状態になった俺は檻の中にいる。この場所は二回にある大きな部屋で窓がない。灰色のコンクリートの壁で覆われた部屋の中央には鉄の棒で覆われた四角い檻。アリスが言うには、この檻はかなり頑丈で壊れたことがないらしい。檻の鍵はアリスが所有している。もちろん鍵は一本しかない。
檻の回りを屈強なアリスの部下が囲んでいる。怪盗サンシャインタウンは、この状況から俺を盗むことができるのか。
俺は床に座り込み、事態を見守っている。
午後九時五十九分三十秒。突然周囲が暗黒に包まれる。十秒後、天井から黒い影が舞い降りる。
その影が甲高い声で挨拶する。
「どうも。怪盗サンシャインタウンです。それでは予告通り、間宮勝弘を頂きます」
午後十時。轟音が鳴り響き、俺が座っている床が突然崩れ始めた。アリスの部下の一人が現れた黒い影を押し倒し、馬乗りになる。
もう一人のアリスの部下が黒い影を照らす。黒い影の正体を知った部下は目を見開かせる。
「人形です。首にスピーカーが付いています」
そのアリスの部下の声が聞こえた時、俺の体は一階に落ちた。
一階の床が近づいてくる中で誰かが俺の体を抱きかかえる。その影の顔は周囲が暗いため分からない。
黒い影は俺の体をお姫様抱っこして、建物から逃走する。
この回は山本正純が担当しました




