主人公は女王でした
久々に食べたヤムヤム。たった1個なのに小さくなってしまった胃には十分な量だった。
生きる為にヤムヤムを掘り探す。いくらなんでもこれは貧乏という枠組みから大きく外れてしまっている気さえする。
このまま悶々と考え続けても腹が減るだけで無駄だ。それならば今のうちに寝てしまい、体力の回復を図ろう。昔から使っている草を敷き詰めただけの寝床で横になる。12歳になっても慣れない虚しさに耐えながら、体を丸めて無理やり眠りに付く。
照りつける太陽に無理やり意識を覚醒させられる。そのおかげでコレが現実なんだと意識させられる。
これからの事を考え、生きる目的を作る。まぁ作るも何もヤムヤムを掘り当てなければこの場では生きていけない。それでも何も馬鹿みたいに地べたに這い蹲って芋を探さなくてもいいんじゃないかと俺は思う。だから道具を作ろう。俺は人間だ、言葉も知らないこいつ等とは違う。前世の記憶が残っているのは有難い。だから俺はその知識を活かして道具を作る。このままヤムヤムを素手で掘っていては体が持たないしな。
道具を作る為にも俺にはヤムヤムが必要だ。周りの連中を無視して俺はひたすらヤムヤムを探す。馬鹿にされても払いのけ、俺は一心不乱にヤムヤムを探す。
日が暮れる頃にはヤムヤムを1つ掘り当てる事に成功した。それでも他の連中は俺より効率よく芋を掘り当てて、ホクホクした顔で帰っていった。
さて、この入手した芋をどうするかだ。正解は食べないで保存しておく。行動は明日から始めよう。
翌日、寝床に隠していたヤムヤムが残っている事に安堵しつつ、ヤムヤムをそのままにして密林に入っていく。そこで手ごろな木の棒を探す。なるべく丈夫な物がいい。それと平べったい石が欲しい。
しばらく歩き回ると木の棒と石を見つけることができた。それらを寝床に持って帰る。
帰ってそうそう木の棒の先端の中心に石の包丁で溝を作る。その溝に拾ってきた石を挟む。これで簡易シャベルと言いたいところだが、これでは簡単に木の棒から石が外れてしまう。何か固定する物が必要だなってところで、このヤムヤムが活躍する訳だ。
ヤムヤムの皮を石の包丁で剥く。石の上に葉っぱを敷き、その上にヤムヤムを置いて片手で固定し、空いた片手で石を掴んでヤムヤムを小さくなる様に砕く。途中水を加えてドロドロになるまでヤムヤムを潰す。
そのドロドロになったヤムヤムを石の上に敷いていた物とは違う葉っぱで包み、絞って白い液体を垂れ流す。が、ここで問題に気づいてしまった。
ヤムヤムが芋なら澱粉も含まれているだろう、そう考えて澱粉糊を作ろうとしたのだが、次の過程がこの環境じゃ無理なので断念。澱粉とその他で分離が出来ないからだ。
木の棒と石の間にドロドロしたヤムヤムを流し込んでみたが、普通に食えばよかったと激しく後悔した。
空いてきた腹を押さえながら密林に戻り、丈夫そうな蔦を持ってくる。それをシャベルに巻きつけて木の棒から石が外れない様に固定する。
この日は澱粉作りに時間がかかってしまい、日が暮れてしまったので空腹に耐えながら無理やり寝る事にした。
翌日、シャベルを持ってヤムヤムを堀に行く。
他の連中は俺の姿を見て馬鹿にする様な素振りをしたり声を出したりしていた。言葉も知らない猿共が何をしても辛くはない。お前等は黙って俺がヤムヤムを簡単に掘り当てるところを見てればいいんだ。
地面に石の先端を軽く突き刺し、片足を石にかけて体重を加えて石の部分を地面に深く差し込む。
それからゆっくりとシャベルを土を掬う様にして地面から出す。掬った土は地面に落として一段落。
ふむ、この程度なら木の棒から石が外れることはないみたいだ。それならここから先、ヤムヤムが見つかるのも時間の問題だ。
俺はそれからもヤムヤムが出るまでシャベルを使って土を掘りまくった。素手の時より穴掘りの効率が格段に上がり、この日初めて多数のヤムヤムを入手する事に成功した。
「ヤムヤム!」
笑ってしまうのを堪えられないので、ニコニコしながらヤムヤムとシャベルを抱え、寝床まで帰る途中で俺の顔にヤムヤムを擦り付けたあの男が俺の目の前にやってきた。ヤムヤムと言っているが俺はヤムヤムを渡すつもりもない。自分のやった事を忘れたのか? あの時の屈辱を思い出しながら男の顔を睨みつける。
が、男は俺がヤムヤムを沢山取れた事を単純に喜んでいる様だった。この男が何がしたいか分からない。無視して立ち去ろうとするが。
「な!」
尻を撫でられた。
俺は小さい時に母に貰ったぼろ布を体に巻いているだけだし、体が成長してしまったおかげでぼろ布が覆える面積も少なくなってきている。下なんか膝上20cm以上はあるぞ。そんな状態で尻を撫でられてみろ、死にたくなる。
猛ダッシュでこの場から去り、寝床でバクバクと煩い胸を抑えて眠る。
翌日、ヤムヤムを堀に出かけると、またあの男が俺の前に現れた。変に絡んでくる男を無視し、シャベルを駆使して穴を掘る。
俺がヤムヤムを探し当てると喜ぶ男。その度にイラっとしたが、俺に何かしてくる事はなかったので、黙々と俺はヤムヤムを探し続けた。
穴を掘っている時、何故この男の俺に対する態度が変わったのかを考えていたが、答えは出なかった。
昨日と同じぐらいのヤムヤムとシャベルを持って帰ろうとしたが、男が俺に何か伝えたそうな顔をしていた。言葉があれば便利なのにな。
ヤムヤムが欲しいのだろうか。そういえばこの男は、今日一日俺のそばで俺がヤムヤムを探して土を掘るとこをずーっと見ていたな。自分のヤムヤムを探さずにだ。
哀れみでヤムヤムを1つ渡すと「ヤムヤム! ヤムヤム!」と喜んでいた。なんだか餌付けしているみたいだ。
翌日、蔦がもう切れてしまいそうだったので、代わりを密林に探しに行くことにした。
ついでにもう1つ予備のシャベルを作ることにした。
昼過ぎにはヤムヤム掘りが出来そうだったが、今日明日の食べる分はある。無理に掘る必要はないかなと悩んでいると、あの男がやってきた。なんとなく予備で作ったシャベルを渡すと、男は何処かに行ってしまった。
この日は結局体の疲れを取るべく、ダラダラして過ごした。
日の暮れかけた頃、男がシャベルと複数個のヤムヤムを抱えてやってきた。シャベルの石に土が付着しているのを見る限り、俺の真似をしてシャベルを使ってヤムヤムを取ってきたのだろう。
「ヤムヤム! ンモー!」
オレ イモ クウ。そんな事を男は言っている。
持っていたヤムヤムを俺の目の前に落とし、男は火を炊き始めた。
男は2人分のヤムヤムを焼き始めた。この男の行動の意図が分からない。単に好意でやっているのか。それとも俺が異性だからか。後者っぽいがそれとはまた違う雰囲気がする。
農民が幕府に献上物を差し出すソレに近い。
男から焼けたヤムヤムを貰って食べていると、ある言葉が脳裏に浮かんだ。
『この場ではヤムヤムが掘れる者が偉く、ヤムヤムの掘れない者はゴミクズだ』
俺の立場が上になった事に気づいてからは事が進むのが早かった。
男と俺の2人でヤムヤムを探して土を掘り返していると、他の奴が寄ってくる様になった。寄ってきた奴にシャベルを作って渡すと、定期的に俺の元にヤムヤムを持ってくる様になった。
この規模が拡大していき、気がつけば俺はこの集落の頂点に位置する様な存在になっていた。
この回は銀魚が担当しました




