主人公はやっぱり歪んでました
(……砂浜でお城作り? 妨害?)
く、下らない。あまりにも下らなすぎる! 全くバカバカしいにも程があるだろう。そりゃ強襲部隊に囲まれて有無の言えない状況ではあったし、何より時間稼ぎする必要があるとはいえ、あまりにも自分の置かれた状況が情けなさ過ぎて泣きたくなってくる。
こんなゲーム、馬鹿正直にやる必要なんかどこにもない。第一、負けたら当然だが、勝ったってロクなことにならないのは目に見えている。時間稼ぎにしたって、現状から察するにおそらく無意味だろう。今頃別働隊にも何らかの処置が下されているに違いない。もう殺されているかもしれない。というか、その可能性が一番高い。だから、ここは敵の用意した舞台で踊らないことだ。俺は敵についての情報をこれっぽっちも持っていない。精々敵方のバックに郷田の野郎がいることを知っているぐらいだ。俺をこんなところに連れてきた目的、その他諸々は霧の中。まずここから脱出し、状況を整理しなくては。
(ん……?)
この状況に違和感を覚える自分がいた。状況、というのは、俺が持っている唯一の情報が『敵の背後に郷田がいる』であるという現状。
頭を軽く振る。いけないな。同時に何でも考えようとするのは俺の悪い癖だ。今はこの舞台からどう退場するかに集中しよう。話はそれからだ。
作戦はすでに頭の中にあった。同時にそれは女の体を手に入れた俺が一度やってみたかったことと密接につながっていた。子供じみた欲求ではあったが、まあこの下らないゲームにはぴったりだろう。
城取りゲームのルールは単純。チームの一部が城を作り、残りが他チームの妨害をする。船に乗ってライフルを構えてる敵の大半は女であり、砂場にいるのはほぼ男だった。男たちは皆遠目から見ても分かるほど筋骨隆々なシルエットの者たちばかりだった。当然だ。妨害で一番単純で明快なのは物理的に破壊することだ。それを防ぐには俺の世界でいうラグビー選手のような肉体が必要になることはむしろ自明である。その隙を突くために、あえて水鉄砲なんてちゃちなものがわざわざ用意されているのだろう。
俺はすぐ隣の陣地で城を作ろうとしている男にそっと近づいて行った。そして飛びかかるようにして男の腕をひしっと掴んだ。
「な、なんや!」
強面の男が、獲物を狩るような目でこちらを振り返ったが、俺が女であることに気付くとすぐに戸惑いの表情に変わった。男の、俺の脚より太い腕は砂と汗にまみれ、その感触は最悪だ。あまりの嫌悪感に背筋が震えるが、ここで引くわけにはいかない。
「あら、お兄さん、随分いい体してるのね」
俺は男の腕にたわわに実った胸を強く押し付け、男の耳のすぐそばで甘く囁くように言った。男の全身が硬直するのが手に取るように分かる。
「ねえ、お願いがあるんだけど、いいかしら。お礼にイイコトしてあげようと思うのだけれど……」
囁きながら、男の水着を上からそっと撫でる。
「い、イイコト……?」
「そう……」
男は俺が水着を撫でるたびに面白いように体を跳ねさせた。
「な、ナンデショウ」
ガチガチに全身を硬直させた男の耳に俺は顔をさらに近づけ、ある命令を下した。
男に命令を伝えた後、シャワーで気色の悪い感覚を洗い流してビーチに戻ってくると、ブルーがいつも以上に真っ青な表情で俺を迎えた。少し怯えて体を震わせているように見えるのは気のせいだろうか。
「み、みやみや……何してるの……?」
「ああ、お前も見てたか?」
そこで俺はついにこらえきれなくなり、笑いだしてしまった。
「ククク……みたか? あいつ! あそこまで分かりやすい童貞野郎もなかなかいねえよなあ。ククク……ハハハ……」
ああ、やばい。笑いが止まらん! 腹がよじれて息が苦しい。
「な、何言ってるの? みやみや……怖いよ?」
ブルーはこの面白さが理解できないのか、たじりと後ずさりした。 むう。この可笑しさ、伝わらないか……
生前、俺は散々女で遊んできた。呆れるくらい純情な乙女というのも世の中には結構な数いるもので、その娘たちを軽く弄ぶのに中学生後半くらいは随分ハマったものだ。あれは痛快だった。中には人妻のくせに一瞬でコロッといくお頭の弱い女もいた。まあすぐ飽きてしまったけれど。
当時から俺は女だけしか手のひらで転がせないことを物足りなく思っていた。俺は何だってできたから、どうせなら全ての人間を躍らせてみたい。人間の半分は男である。その男をうまく躍らせられなかったことがどれだけ歯痒かったか。それが叶ったのだ。
(女の肉体を手に入れて良かったことってこれが初めてだな)
「…………」
ブルーはドン引きしていた。まあこいつは結構頭がおかしいからな。この面白さが理解できなくても仕方がない。
「ああ、お前には作戦を説明しないとな。実は……」
この回はおもちが担当しました




