主人公は陰謀に近づき始めました
就活女……、ブルーの携帯が辺りに鳴り響いた。相手は当然--
『もしもーし。いつもチャーミングなこうじでーす。間宮様いますかー?』
ブルーが俺に向けたケータイからは、声変わりのしていない懐かしい声が聞こえてきた。
「こうじ!! こうじじゃないか! アリス達に酷いことされなかったか?」
久々に聞く部下の声に感動しながら、俺はこうじの現状を心配する。こうじはアリスと政略結婚させられたのである。もしかしたら、手荒な真似をされたかもしれない。俺は性格は悪くて残虐かもしれないが、仲間と決めたやつとは助け合うと決めているのだ。
『ふふ、間宮様って頭の中が空っぽですね』 しかし、そんな純粋な俺の心配をこうじはせせら笑った。
「なんだと? おい、こうじ。貴様、上下関係が分かってないみたいだな。お前はもっと頭のいい子だと思っていたが、それは俺の勘違いだったようだ」
『はは、立場を分かっていないのは、あなたの方ですよ』
こうじのバカにするような声を聞きながら、俺は考えを張り巡らせる。
どうも様子がおかしい。集落にいた頃のこうじはもっと従順で聞き分けのいい子供だった。それが今はこの俺をバカにしている。おそらく、こうじに何らなの変化があったのだろう。試しに一つ手を打ってみるか。
「ところでお前は今、いったいどこにいるんだ?」
『はい? どこって、間宮様は分からないんですか?』
「分からないなら聞いているんだよ」
そう言うと、電話のスピーカーから呆れたようなため息が流れてきた。
『そもそも、間宮様は僕とアリスが集落に向かった隙に、ナリタを襲おうとしたんでしょう? だったら、集落にいるに決まってるじゃないですか』
俺はきちんとこうじに聞こえるように、大きな声で高笑いをした。
「おまえが集落にいるだと? はん、やっぱりお前はまだまだ子供だよ」
『何が仰りたいんですか』
「いいか、こうじ。あの集落は俺が発展させるまでは本当に何もない土地だったんだ。今だってまだまだ発展途上の場所だ」
『ふん、僕だってあそこに住んでいたんですよ。そんなことぐらい分かってます』
「だったら理解出来るはずだ。あそこには携帯電話の電波は来ない。基地局がないからな」
電話の向こうでこうじが息を飲むのが分かった。ふふ、すこし動揺したいるようだな。もう少し揺さぶってみるか。
「さらにさっきお前は俺にナリタ襲撃のことを言ったよな。普通ならそれを知ることは出来ないんだよ。俺たちがクーデターを始めたのは、お前たちがナリタを離れた後だ。もし本当にお前がずっと集落にいるならば、クーデターのことを知ることは出来ないんだ」
『……、じゃあどうして僕がその事を知っているんだと思いますか?』 こうじが震えた声で尋ねてきた。
いい感じだ。会話をうまい具合に俺のペースに引きずり込めた。
「考えられる可能性は二つだ。一つはお前がナリタを出発する前に既にクーデターについて知っていた場合。これの場合は、俺、怪盗、襲撃女、ブルー、この四人の中に内通者がいたことになる」
『では、もう一つの場合は?』
「お前が今いる場所が、基地局のある場合だ。これの場合、お前は何らかの理由で行き先を隠したかった。だから国民にヤムヤムについての会議のために集落に向かうというガセネタを伝えた」
こうじは子供のようにクスクスと笑った。そのあと、今度は試すように
『じゃあじゃあ、仮に間宮様の仮説が正しかったとして、どうして僕はそんなことをしたんでしょうか?』
まるでクイズ番組にでも出たみたいである。ここが踏ん張りどころだ。こうじが望む答えを出せれば、俺の勝ちだ。
「俺は最初、お前は政略結婚させられた憐れな子供だと思っていたが違ったんだ。お前がアリスを利用していたんだ」
『あはは、つづけてください!』 興奮した様子でこうじは笑い続けている。俺の背筋がぞくりとした。この子供をみくびらないほうがいい。成長したら間違いなく化け物に成りうる器を持っている。俺の野生の本能がそう訴えかけてくるのである。しかし、そうは言っても相手に弱味を見せるわけにはいかない。俺は平静を装いながら続けた。
「アリスはお前を駒として利用するために結婚した。だが、お前はそのあとアリスに薬を盛った。ナリタでは食べ物もサプリメントで済ませるほど進んでいるんだ。効果絶大な惚れ薬や媚薬だって手に入れることは容易いだろう。アリスはお前の従順な人形になった。ナリタという国はアリスが動かしているように見えて、実は全てお前が操っているんだ」
『ふふ、面白い想像ですね?』 確かに証拠のない話だ。俺の妄想と言われても仕方がない。だが、そこを話術で補うのがこの俺様だ。
「つまり、お前は事実じゃないと否定するのか?」
『事実であってますよ』
「そうだろうな。確かにお前は否定するだろうさ。だがな、真実はいつも白日の下にさらされるんだよ。例え何年かかっても、証拠を見つけてやるさ。いいか、覚悟して待って……、今お前なんて言った?」
『ですから、間宮様が仰ったことは事実です』
……、ちょっと待て。
「え、お前は認めちゃうの?」
『だからそう申し上げてるじゃないですか』
「いや、でもこういうのってまず否定しといて、そこから俺がまた頑張って捜査していくんじゃないの? それがお決まりじゃないの」
『知りませんよ、そんなの』
「で、でもそれが皆が望んでるお決まりの流れじゃん。そこをやってくれるのが人情じゃん?」 気づくと何故か俺の目から一筋の涙が流れ落ちていた。いや、こんなん涙じゃなくて汗だし。体液だし。あれ、そう言えば今俺の姿は美少女だよな? 美少女の体液……。ぐふ、ぐふふのふ。今度いろいろ試してみよう。
『あのー、何を一人で笑われているんですか?』 こうじが不思議そうな声をあげている。
「何でもない。子供にはまだ早いことだよ。ところで、今回お前に入り知恵したのは、もしかして、郷田という男じゃないか?」
そう尋ねると、返ってきたのは称賛の拍手であった。
『ご名答。僕はですね、大国の王となった郷田さまの部下をやらせてもらってるんです』
「つまり、今やお前にとって俺は師匠でも何でもない。だからそんな生意気な態度をとるってわけか」
『そうですー。だってあなたより郷田さまの方が賢いですから』 明るい声で普通に俺のことをバカにしやがった。間違いない、こいつは頭のネジが何本か取れている。そもそも、振り返ってみるとこの世界に来てからマトモな人に会ってないような気がする。普通なのはこの俺だけ。困っちゃうね。
「それでお前さんはいったい何の用で俺に電話をかけてきたんだ。世間話をこのまま続けるわけでもないだろう?」
そう言うと、こうじはクスリと笑って、それも面白そうですけどねと笑った。
『でも、ま、本題に移りましょうか。今回あなたに連絡したのは--』
それを聞き終えた俺は、服を脱ぎ始めた。
この回は山元周波数が担当しました




