主人公は陰謀の存在を知りました
「あのこうじが次期の王になったとは」
俺はその新聞の見出しを読み思わず呟く。怪盗サンシャインタウンはワイングラスを持ち上げながら聞き返す。
「誰かね。こうじというのは」
「俺の国で一番勉強熱心な少年。日本語が堪能だ」
「ところでこの新聞記事が意味していることは分かるか」
「政略結婚だろう。次期国王であるこうじとアリスが結婚すれば俺の国はアリスの物になる。無駄な侵略活動をする手間が省けるということだ。これで奴らの世界を牛耳る計画が進展した」
俺がサンシャインタウンの質問に答えると、怪盗がワインを一口飲んだ。
「正解。最もアリスちゃんの計画には裏があるんだけどね。彼女の部下たちはアリスに騙されている。ハッキリ言ってヤムヤムなんてどうでもいい。一言で説明するならそんなところさ」
俺はサンシャインタウンの言葉を聞き驚く。
「どういうことだ。ヤムヤムを独占して世界を牛耳るのが奴らの目的ではないのか」
「彼女は世界を崩壊させるパンドラの箱を開発しようとしているのさ。もちろんパンドラの箱というのは比喩表現。実際の物が箱とは限らない。私の情報収集能力を持ってしてもこの程度のことしか分からなかった。ただ一つだけ言えるのは、彼女が開発しようとしている物は時限爆弾や生物兵器のような可愛らしい物ではないということ」
時限爆弾や生物兵器という危険な物が可愛らしい物。俺はアリスの真の目的がかなり危険な物を開発することだと聞かされ鳥肌が立った。とても笑いごとではないことが分かる。
するとサンシャインタウンは言葉を続けた。
「ややこしくなって悪いけど、アリスちゃんの計画とは別にもう一つの陰謀が進行している」
「もう一つの陰謀」
俺がサンシャインタウンに聞き返すと、彼は新聞の広告欄を指さした。
『絶対合格。大学受験の攻略法。ここにあり。マザーズ・クラウンの大学受験講座。体験見学会参加者募集中』
サンシャインはその広告欄の上に一枚の写真を置く。そこには厚化粧がほどこされた醜い女が映っている。女の鼻の下には丸々と膨らんだほくろがある。
「彼女の名前はマザーズ・クラウン。アリスちゃんの母親さ。大学受験者向けの塾講師と製薬会社ドゥユーノーテニスの代表取締役という二足の草鞋を履く女。製薬会社ドゥユーノーテニスは食品会社アイアムペンと共同でサプリメントを製造している。調べたところによると転生して身寄りがなかったアリスを娘同然に引き取って育てたらしい」
俺はサンシャインタウンの話を聞いている間ワインを飲んでいた。彼の話が終わった頃俺は酔っぱらった。
「怪盗サンシャインタウン。製薬会社ドゥユーノーテニス。食品会社アイアムペン。どれもふざけた名前じゃないか。何だよ。製薬会社であなたはテニスを知っていますかって」
俺は酔った勢いで怒鳴った。サンシャインタウンは酒に強いようで、楽しそうに俺の顔を見つめてくる。
「製薬会社と食品会社に関しては何とも言えないが、私の名前がふざけているとは聞き捨てならない。会社の名前よりはマシだろう」
「うるさい。タウンがなかったほうがマシだった」
それから数分後。俺の酔いが一発で覚めるような出来事が起きた。
この回は山本正純が担当しました




