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(かきかけ)モノクロム戦闘機:男3女3不問1

作者: 七菜 かずは

【モノクロム戦闘機】


 著者:七菜 かずは(創作ユニット塩化にゃぐる代表)






CAST


●モノクロ(ビスケット・リールと掛け持ち)

・男。アンドロイド。優しい好青年。言語能力に長けていて、限りなく人間に近い。ジルバの相棒。全身黒ずくめ。フードを被っていて。ジルバと色違いのもこもこマフラーをしている。


●クロム(ランプ・リールと掛け持ち)

・女。アンドロイド。ラジオを第一に守るようプログラミングされている。戦闘力が高い為、言語能力柔軟性がモノクロよりも低い。機械的な喋り方をする。真っ赤な長髪。白い甲冑を身にまとっている。


●ラジオ・リール

・元気な少女。人間。17歳。苦労人だが、そういう部分はあまり他人には見せない。小さな小島の小さな教会に、孤児たちと一緒に暮らしている。黄色いキャスケットに、黄色いTシャツ。白い、サスペンダー付きのバルーンスカートを穿いている。


●ジルバット・コルク

・自称冒険家。若年寄。25歳。ラジオのことが好き? ダナのことがキライ。正義心が強く。少し意地っ張り。緑色のもこもこマフラーに、動きやすい格好をしている。


●ダナジリア・ベルナス

・ラジオを超愛しているド変態。年はジルバと同じ。明るく陽気な性格をしている。本当は良い人?


●セピア

・ダナが創った最新女型アンドロイド。テンションが常に高い。ダナが大好き。ドピンク、ナースの格好をしている。





(男3、女3、不問1)※役者が足りない場合、ナレーターを誰かが掛け持つ。


●モノクロ(ビスケット・リールと掛け持ち) 男   :

●クロム(ランプ・リールと掛け持ち)    女   :

●ラジオ・リール               少女  :

●ジルバット・コルク            男   :

●ダナジリア・ベルナス           男   :

●セピア                   少女  :

●ナレーション               不問  :





<プロローグ>


ナレーション:優しいオルゴールの音が響く。暗闇の中。

ガラクタや廃棄されたものがあちこちに転がり。破壊の音が時を紡ぐ。

クロムとモノクロは永遠に。背を合わせ手をつなぎうつむいて立ったまま。

他の出演者達はふたりのまわりに横たわり、安らかに眠っている。

クロムとモノクロ、同時に瞳を開き顔を上げる。


クロム:ほんとうは


モノクロ:ほんとうは


クロム:どうしても会いたい


モノクロ:うん。会いたい


クロム:会ったらきっと、哀しくなるけれど


モノクロ:でも


クロム:いつも優しいあの言葉だけが


モノクロ:この胸に響く。だから


クロム:簡単に消えることなんて


モノクロ:ありえない


クロム:どうしても


モノクロ:どうしても


クロム:どうしても


モノクロ:どうしても


クロム:どうしても……どうしても、


モノクロ:きみは


クロム:あなたは


モノクロ・クロム:自分を許してはくれないのだと思う


■ノイズと二人の心臓の音が入る。胸を押さえる二人。


モノクロ&クロム:うっ……


モノクロ:願おう


クロム:いつか


モノクロ:いつか


出演者全員:再びめぐりあうその日を!!


■モノクロがジルバに。クロムがラジオに変化する。そこは、ずっと昔。

教会の裏にある二人の秘密の場所。まっしろい世界。ラジオが瞳を潤して落ち込んでいる。

ジルバはラジオを慰めながらやさしく頭をなでる。


ラジオ:やだ……やだっ


ジルバ:泣くなよ。一生俺が傍にいる


ラジオ:うそ


ジルバ:ほんとだって


ラジオ:ほんと?


ジルバ:ほんと


ラジオ:……


ジルバ:やくそく。ほら


ラジオ:……うん


■ジルバ、右手の小指をだす。ラジオは顔を上げてそっとその指に自分の小指を絡める。

照れて口を紡ぎ、すぐに手をうしろに隠してうつむいてしまうラジオ。


ラジオ:う……


ジルバ:ほら。笑え。はなれてても、いつも一緒だから。ちゃんと守るから


ラジオ:……うん


ジルバ:約束する。ラジオの心からは離れたりしない


■二人とも幸せそうに微笑む。






<シーン1>


■日差しが暖かい昼頃。騒がしい町のレストラン。

奥の席の丸テーブルでは、目付きが悪く大きな帽子を被り顎髭を生やしたダンディな男ジルバと。

優しい顔立ちの黒い服の男モノクロ。が、ものすごい量のオムライスをがつがつ食べている。

レストランの入り口から入ってきて、二人の席に同席して座る華奢な身体の少女ラジオ。手には新聞。

セピアは、この時レストランのウエイトレスに変装してラジオ達を監視している。


ラジオ:ラクイの首都ダットバグの大学で自爆テロあり。警察当局者によると、40人が死亡! 35人が負傷した! だって。……ふうん


■ジルバとモノクロ、ラジオの声には反応せず。


ジルバ&モノクロ:(ただひたすらに大きなオムライスを食っている)っ……っ!


ラジオ:流行ってるねぇ~テロ・テロ・テロ! テロ? 平和を語る世の中もおわりかなあ


ジルバ&モノクロ:(ラジオの最後の言葉にのみ反応し、身を乗り出してくっちゃべる)~~~~!!


ラジオ:うわっ! きたなっ!! なんだよ~!!


ジルバ&モノクロ:(水を飲み干す。二人同時に咳き込む)


ラジオ:(黒い服の男に向かって)モノクロ。食べすぎじゃない? いくら死ぬほど空腹だったからって、無理してジルバに付き合うことないんだよ?


モノクロ:大丈夫だよ。ちゃんと鍛えてるから


ラジオ:あ~あ


ジルバ:モノクロ! 俺のように立派になれよ☆(格好つける)


ラジオ:まったくジルバったら。わざわざごはん食べさせてあげてるこっちの身にもなってよね


ジルバ:いやっ! そうだな! ラジオさまっ! ありがトウっ


ラジオ:はぁ。調子良いんだから。いきなり真夜中に二人して倒れこんで来たと思ったら、めし食わせろだもんな~。

連絡もよこさないで! みんな心配してたんだよ? いつまでもそんなふらふらっと二人勝手にいなくなったりしてさあ!


ジルバ:ふっ。甘いなラジオ。俺たちは!(立ち上がる)金銀財宝あるところ! 美少女が俺を呼ぶ限り!!(シャキ~ン☆)

ひとつ所に留まってはいられないんだよ……。(落ち着いて座る)


ラジオ:くだらない


モノクロ:教会のみんなは変わりない?


ラジオ:え? ああ、うん。みんな元気だよ


モノクロ:そっか


ラジオ:……(じっとモノクロを見つめる)


モノクロ:俺トイレ(立ち上がってトイレへ)


ジルバ:おーっ! たっぷりだせよっ!


ラジオ:下品っ!!


ジルバ:(酒をぐっと飲む)あーあっ。っと(気分が良くなりにやにやしている)ひひっ


ラジオ:見たところ、今回も収穫なしみたいだね


ジルバ:まあ~、な


ラジオ:諦めたら?


ジルバ:諦める? ……へっ。そうだな。でもやつは俺がこの町に残ろうがなんだろうが


ラジオ:一人で探しに行くんだろうね。


ジルバ:頑固だからなァ


ラジオ:純粋なんだよ。わかるんでしょモノクロの気持ち


ジルバ:さっぱり?


ラジオ:はあ? じゃあ何でいつまでも付き合ってるの


ジルバ:あいつ一人じゃ行かせらんねえだろうが


ラジオ:理由を知らない教会の子供たちからして見れば、ただの遊び人だよ!


ジルバ:そうかあ?


ラジオ:あたりまえでしょ! 大の大人が、あっちふらふら、こっちふらふらって、もうやめればいいんだよ。

ひたすらに夢にこだわって何を探してるんだか知らないけど! どうせみつかりっこ無いんでしょ! モノクロだって、あんな身体で――! っ……なんでもない


ナレーター:ジルバ、笑いを堪える。


ラジオ:なんだよ


ジルバ:(からかうかのように)お前はいつも他人の事ばっかりだよな


ラジオ:え? ……そうかな


ジルバ:そうだよ。たまには自分のこと考えろよ


ラジオ:そんな暇ないよ! 子供たちだっているのに


ジルバ:そっか、そうだよな、だったら俺も……!


ラジオ:なに?


ジルバ:俺も働こうかな?


ラジオ:ハア?(ぷっ……っとふくみ笑いをした後、爆笑する)


ジルバ:何だよ


ラジオ:ジルバが働くなんて無理無理! どこかで雇ってもらったってどうせ三日坊主だって。あ、二日も続かないかもね


ジルバ:馬鹿にすんな! 大丈夫だって!(ぐいッと酒を流し込む)


ラジオ:あっ


ジルバ:俺は「鬼のランプ」の研究に五年も付き合ってたんだぜ!? お前の負担だって俺は……! ちゃんと、へらしたいんです……ぅ。ぅーーーー


ナレーター:テーブルに突っ伏す。


ラジオ:ちょっとジルバ……だいじょうぶ? 

  

ジルバ:(パッと顔をあげて)やくそくしたじゃんすか! おまえは、おれが、まもりゅ!!って、


ラジオ:ジルバ……


ジルバ:(またバタっと突っ伏して)ごめん。ひとりぼっちにして……でもおれは、……おれは~……。モノクロも、ラジオも……あいつも、だいじなんだよ……


ラジオ:もう完全に酔っ払いだ


ナレーター:ぶつぶつ言っているジルバの頭を、安心した顔でポンと撫でる。


モノクロ:(戻ってきて座る)弱いのに飲むからだよ


ラジオ:ほら、ジルバ! お水っ(鼻をつまんで水を飲ませようとする)


ジルバ:いー! いらないですぅ~


ラジオ:のめっ!!


モノクロ:あはは。可愛いでしょ。酔ったジルバ


ラジオ:可愛いって……。この外見でこんなんになっちゃうなんて、なんてはた迷惑な


モノクロ:ジルバ。ラジオが困ってるよ


ジルバ:んっ?(テーブルに顔を擦り付けている)


ラジオ:んっ? じゃないよっ! も~、お酒なんていつから飲むようになっちゃったの!?


モノクロ:まあまあ。ジルバももういい歳だしさ。少し位ゆるしてやってよ。


ラジオ:え、まぁ、モノクロがそう言うなら


ジルバ:(寝はじめる)ぐー……


ラジオ:(ジルバのほっぺをこねこねして)疲れた顔してる。変わらないね、二人とも


モノクロ:何、出てってから一年も経ってないよ?


ラジオ:そうだけど


モノクロ:あ、そうだ。ラジオにお土産があるんだった(胸ポケットを探る)


ラジオ:おみやげ? なになに?


モノクロ:うん。ジルバが作ったんだけど


ラジオ:えっ!? いらない。


モノクロ:なんで。(無い。身体に身につけていないか立って確認する)あれ? ない、ない……あれ? おかしいな 

  

ラジオ:ジルバが作ったものなんて、どうせろくでもないものなんでしょ


モノクロ:あー! 自分で渡せって言って返したんだったっけ。ごめん、起きたらもらってやって


ラジオ:いいよっ。べーつーに


モノクロ:ごめんね


ラジオ:モノクロが謝ることじゃ無いでしょ?


モノクロ:まあそうだけど


ラジオ:モノクロ?


モノクロ:ん?


ラジオ:顔色悪くない?大丈夫?


モノクロ:そう?


ラジオ:疲れが溜まってるんじゃないかな。早く戻って休んだら?


モノクロ:いや大丈夫


ラジオ:でも


ジルバ:(寝言)らじおおー!


ラジオ:え? なに?


ジルバ:らじおちゃん……えへへ


ラジオ:……?


モノクロ:寝言かな?


ジルバ:しあわせにします


ラジオ:無職無収入のジルバくんに言われても説得力無いってば


モノクロ:確かに


ラジオ:人見知りするから余計駄目なんだよ。人付き合いが出来ないんだよねえ……


従業員セピア:お客様。(モノクロとラジオに近付いて)お冷のおかわり如何ですか★


ラジオ:あ、くださーい。モノクロ、コップとってくれる?


モノクロ:うん


従業員セピア:失礼しまっす★


モノクロ:(コップをラジオに渡そうとした時、突然視界がぼやけて傾く。コアが疼く)――ぁ……


ラジオ:モノクロっ!?


ジルバ:あいっ(ジルバ、何故か返事をする)


■モノクロとクロムの鼓動。リンクし、高鳴る。


モノクロ:(座っていた椅子ごとその場に倒れてしまう)っ――


ラジオ:モノクロっ!!


ジルバ:んあっ? (ラジオの声で目覚める。)


■突然停電。レストランの人々がざわつく。


従業員セピア:あややっ? 停電っ?


■モノクロとクロムがすりかわる。電気、徐々に修復していく。


ラジオ:モノクロっ!(クロムを抱き寄せ、必死に呼びかける)


ジルバ:うあっ!? ど、どうした?


ラジオ:モノクロが……


ジルバ:ああ……。落ち着けよ、大丈夫


ラジオ:大丈夫って、前にもこんなこと何回かあったじゃん! モノクロ、ふっとこうやって倒れたりして!


ジルバ:いいんだよ。いつものことなんだから。平気だって


ラジオ:は!? なんでそんな余裕でいられるのさ!? 倒れたんだよ!?


ジルバ:貧血か何かだろ(煙草に火をつける)


ラジオ:ひどいよジルバ! モノクロの事何だと思ってるんだよ!


ジルバ:ああ!? んだよ、お前いっつもモノクロモノクロって!! 俺だってなあ!


ラジオ:なんだよっ! バカバカバカバカバカ!


ジルバ:ああ!?


■ラジオとジルバ、言い争い続ける。

レストランの入り口から、金持ちのダナが入って来る。


ダナ:騒がしいな。何だ、誰かと思ったら貧乏教会の方々じゃないか


ラジオ・ジルバ:誰が貧乏教会だっ!! (この時ラジオ、クロムを床に落とす)


ダナ:う~。大声を出さないでくれ。耳に響く。


ラジオ:あっ! ご、ごめんなさい、ダナ。何か用?


ダナ:ラジオ。今日も可愛いね。(ラジオの手をとって)そろそろあの返事を聞こうと思って


ジルバ:返事?


ラジオ:えーと……。ちょ、ちょっと、こっこっちきてっ


■ラジオ、部屋の隅にダナを連れて行く。


ダナ:ラジオ? なんだい?


ジルバ:お、おいっ!?


ラジオ:(もじもじ)あの~、その、あの~……今日は 病人がいて。すぐにこの後教会で休めなくちゃいけないの


ダナ:なに。それならうちの病院で診察を受けさせれば良いよ。もちろん、君のためだ。医療費はいらない


ラジオ:気持ちは嬉しいけど悪いよ。ただの貧血らしいし、大丈夫……だから話はまた今度で


ダナ:もう待てないよ、ラジオ!


ラジオ:ほ、本当にごめんなさいっ! 今日は帰って? お願い! 今度また病院に行くから


ダナ:嫌だ!(ラジオに触れようとする)


ジルバ:(ダナの腕を強く引き、頬を殴る)っ!! (ラジオを庇うように前に立つ)

……まったく。たった一年で妙な虫に付かれやがって


ラジオ:ダナ!(慌ててダナの側へ。身体を気遣う)


ダナ:うっ……


ジルバ:ラジオ?


ラジオ:大丈夫?(ダナを立たせる)


ダナ:ああ……


ラジオ:(ジルバを睨み付ける)ジルバ。ダナに謝って


ジルバ:は。何でだよ。そいつはお前を無理やり


ダナ:君たちの教会を守ってあげているのはこの僕だ


ジルバ:何だと?


ラジオ:ジルバとモノクロが出て行ってすぐ、教会を取り壊す話が町ででたんだ


ジルバ:……


ラジオ:でもダナが教会を買い取ってくれたから


ジルバ:じゃあお前はそいつが現れるまで何もせずにただいたのか?


ラジオ:っ!


ダナ:ラジオを責めるのはやめたまえ。孤児達を一人で守り育て。頼りの綱の幼馴染の男二人は海の果て。

この子一人に何が出来る。君にラジオの気持ちは分からない!


ジルバ:……そうか。辛かったな。


ラジオ:……っ


ダナ:(得意気な態度)ドヤア


ジルバ:でもな、それは生まれた時から俺のもんなんだよ。教会もラジオも返してもらう


ラジオ:ジルバ……


ダナ:(豪快に笑って)出来るものならやってみたまえ!


■ジルバ、ダナ、剣を抜き、戦う。


ジルバ:うぜえ!!


ダナ:はははっ!! 喰らえっ!! うらっ!!


ラジオ:あ~! どうしてこうなっちゃうの? ちょっと、やめて! 二人とも! お店の人に迷惑だよ! (クロムのそばに座り込む)


クロム:(横たわったまま、ぱっと目を開けて)ラジオ


ラジオ:は、はいっ!? あ、モノクロ!


クロム:(無機質にすっと立つ。モノクロとは明らかに口調が違い、機械的で)教会にダナに雇われた者たちが子供達をさらいに向かっているようです。

あなたは先に教会に向かい、子供達を守る事が懸命だと思われます。さあ、立ってください。(ラジオの手を引いて立たせてあげる)


ラジオ:えっ。う、うんっわかった! じゃあ、モノクロ。ジルバとダナをよろしくね! (レストランを出て行く)


クロム:了解しました


■ジルバとダナ、殺陣を続けている。


ジルバ:おおおっ!!


ダナ:はああっ!!


■クロム、ふっとジルバとダナに近付き二人の剣の先端をつまむ。


ジルバ・ダナ:ッ!!? クロム!?


ダナ:邪魔をするなっ! うっ!? クッ


■クロムの秘められた強力な力により、ジルバとダナ、剣を取り返せない。


クロム:ジルバ


ジルバ:何だよ! 放せ、クロム! 俺はこいつだけは!


クロム:ここでの争いは無意味です。貴方も速く教会に向かって下さい


ジルバ:教会!? おいてめえ、ガキ共になんかするつもりか!?


ダナ:教会は僕のものだ。自分のものをどうしようと勝手だろう!? っ! (剣を放し。ジルバに殴りかかる!)う゛ああっ!!


ジルバ:ッ!!


■ダナの上半身を張り手で押し返し、そのまま回し蹴りをしてダナを地面に突き落とすクロム。


ダナ:っぐあ!!


クロム:ジルバ


ジルバ:ちっ! わかったよ! ここは任せた!(ラジオを追う)


クロム:懸命な判断です(冷ややかな表情のまま)


ダナ:くっ!


クロム:(逃げようとしたダナの足元に、腰から取り出したナイフを突き刺す)


ダナ:ひっ!? ま、待て


クロム:貴方の目的は、ラジオ。ですね。


ダナ:はっ……なかなか頭がいいじゃないか。そうだ、僕と取引をしないか?


クロム:(ダナの顔の横ギリギリを殴る!)


ダナ:ひっ!


クロム:教会の権利書を渡して下さい。命までは奪いません


ダナ:ははっ……! 甘ちゃんが! タダでものを貰えると貰うなよ!! (煙幕をクロムに投げつけ、逃走)


■煙幕はすぐにはれる。一人その場に佇むクロム。


クロム:モノクロ……。


■暗転






<オープニング>


■モノクロ、クロム、ラジオ、ダナ、セピア登場。

暗い世界。皆黒いマントを纏い、全員花畑を踏みしめて。


モノクロ:決断の時が来るようだ


クロム:貴方が選ぶのは


ジルバ:自分の未来か


ダナ:他人か


セピア:それとも貴方は


ラジオ:わたしは……わたしが選ぶのは――


■全員、マントを脱ぎ捨てて去る。






<シーン2>


■教会の中。子供たち(モノクロ・クロム・ジルバ・セピア)が楽しそうに遊んでいる。そこへラジオが慌てて駆け込んでくる。子供たちの姿は見えないが、影は見える。


ナツ&ジーク&ディア&メグ:(楽しそうに笑って、皆追いかけっこをしている)……


ラジオ:ナツ! ジーク! ディア! メグ!!


ナツ&ジーク&ディア&メグ:(ラジオの声がすると、子供たちはすぐにラジオに駆け寄ってくる)あっ、ラジオー!


メグ(クロム):ラジオ? どうしたの?


ディア(ジルバ):おかえりなさーい


ジーク(モノクロ):おかえりーラジオ


ラジオ:(息を切らしながらみんなに近付く)よかった。みんな……


ナツ(セピア):おなかすいたよ~


ラジオ:あっ。ごめんね。すぐ何かつくるから


■ラジオが歩き出した瞬間に、子供たちの様子が豹変する。(機械人形のようになる)


メグ(クロム):ラジオ(裾をつかんで)どこいくの?


ジーク(モノクロ):ぼくたちはいつになったら会えるの?


ラジオ:え? ……どうしたの、ふたりとも


■子供たち、体の時がとまっている。口だけが開き、表情はよくわからない。


ディア(ジルバ):なんでラジオや町のひとたちには クロムがモノクロに見えるの?


ラジオ:クロム? 誰のこと?


メグ(クロム):わたしよ。ラジオ


ラジオ:メグ何言ってるの


メグ(クロム):わたしはメグじゃない


ジーク(モノクロ):きみはわかっていない


■四人、ラジオを取り囲む。教会が異空間に変わる。


ラジオ:みんな。からかわないで


ナツ(セピア):モノクロ。会いたいの……どこにいるの?


ジーク(モノクロ):ぼくはここにいる。でも君に触れる事すら叶わない


ディア(ジルバ):ラジオはクロムのオモテ?


ナツ(セピア): ジルバはモノクロのオモテ?


メグ(クロム):愛しているわ 私たちのはじまり


ジーク(モノクロ):はじまりの大地は崩れ。しかし魂は


ナツ(セピア)・ディア(ジルバ):分裂し、今!


メグ(クロム)・ジーク(モノクロ):きみのもとへ還る!


ラジオ:やめてっ……!


メグ(クロム):わたしに気付いて


ラジオ:モノクロ……く、ろむ……(意識が遠のき倒れる)


ナツ&ジーク&ディア&メグ:(楽しそうに笑い出す)……






<シーン3>


■教会。モノクロが、倒れているラジオを抱き起こし。ジルバは入り口に立ちダナの手紙を読んでいる。夢から醒め飛び起きるラジオ。


ラジオ:いやぁぁっ!!


モノクロ:!?


ラジオ:モノ、クロ


モノクロ:ラジオ。大丈夫?


ラジオ:う、う、ん……?


モノクロ:よかった


ラジオ:頭……痛い


モノクロ:横になってたほうが良いかも


ラジオ:うん、でも大丈夫


モノクロ:ほんと?


ラジオ:うん


モノクロ:ラジオがここに来たとき、誰かいた?


ラジオ:えっと……クロム。


ジルバ・モノクロ:えっ!


ラジオ:クロムっていう女の子が、メグだった。メグがクロムだったのかな……


ジルバ:何言ってんだよ。メグはメグだろ? 頭打って余計にアホんなったか?


ラジオ:ち、ちがうよ! 本当にそう名乗ってたんだってば! って……そうだ、子供たちは!?


ジルバ:もぬけの殻だ。ダナの手下にさらわれた


ラジオ:ダナ……


ジルバ:ん(読んでいた手紙をラジオの目の前に差し出して)


ラジオ:え、なに?


ジルバ:おまえ宛てだ


ラジオ:? (受け取って手紙をあける)「親愛なるラジオきゅんへ★」?


モノクロ:きゅん?


ジルバ:~~……(眉間に皺が寄っていく)


ラジオ:「きみの可愛い子供たちは僕が預かったよ。きみの本当の気持ちが知りたい。すべて。芯まで愛してる。

きみの心を僕が治療したい。愛するって素敵だ。目に見えないものなのにとても強くて大きい。……」

うぁ~、気持ちわるっ。一体どういう教育受けたらこういうの思いつくんだろ?


モノクロ:さあ……


ジルバ:うざ


■教会から離れた場所。自信たっぷり、愛に満ち溢れたダナ(白い素敵スーツ)のサスが点く。


ダナ:きみが僕のものにならないというのならば。僕は明日。涙を拭いながら心を鬼にして、君の愛する教会を壊そうと思う!


ラジオ&モノクロ:えええーっ!!!?


ラジオ:そ、そんなっ! 何言ってんの!?


モノクロ:ラジオ……


ダナ:きみが素直になってくれればそれで解決する話だ!


ラジオ:すなおってなに?


ダナ:一度でいい。素直に心に従い、愛していると言ってくれぇ!


ラジオ:なんで!?


モノクロ:……(半笑い)


ジルバ:死ね


ダナ:僕と結婚すれば子供たちだって毎日お腹いっぱいにものを食べられる!


ラジオ:あっ!


ダナ:あんなに無理して朝から晩まで働くことも無い!


ラジオ:マジ?


モノクロ:オレ達が無理させちゃってるのもあるしなぁ


ジルバ:そりゃそうだけどさ


ダナ:教会も再建しよう!


ラジオ:ぅぅううっ!


ダナ:好きなものを何でも買ってあげるよ。服だって、きみは綺麗なんだから。最近の若い娘たちに混じってお洒落や化粧をしたらいい!


ラジオ:うう~!!(もがく)


モノクロ:葛藤してるの? ラジオ


ジルバ:っうがーーー!! うぜえんだよ!! (ダナを蹴り落とす)


ダナ:客席に落っこちる。ダナのサスが消える。


ダナ:あ~~……(おちた)


ジルバ:金で何でも買えると思うなよ! この馬鹿女!!


ラジオ:なっ! なんだよ! 働いた事も無いくせに!


ジルバ:何だと!?


ラジオ:たった一人でずっと教会と子供達を守ってきたんだ! お金が簡単に手に入るのなら、じぶんだって……うっ~……(泣き出す)


ジルバ:あんなやつの言うこと聞くのかよ!


ラジオ:(涙混じりで)だってっ! モノクロもジルバも、いつもそばにいてくれなかったっ!!


ジルバ:!


モノクロ:ジルバ……


ジルバ:うっせーな。わっかってるよ! あーもう、泣くなブス。余計ブスになんぞ! (ラジオの頭をぐしゃぐしゃ撫で。涙を拭ってあげる)


ラジオ:う~~


モノクロ:(やれやれといった感じでそっと教会を出て行く。モノクロがクロムに変わる)……


ジルバ:ふぅ……。ちょっと下向け(腰のポケットからペンダントを出す。それをラジオにつける)


ラジオ:え? え、あっ


ジルバ:お守りだ。つけてろ


ラジオ:金運のお守り?


ジルバ:ちがう。ほんとに飢えてんな……ったく


ラジオ:ふふっ……。ありがと、ジルバ


ジルバ:(ラジオの額にキスをする。頭を撫でて)ちょっと奥で休んでろ。夜になったらダナの所に行く


ラジオ:うん……。わかった


ジルバ:(教会の外へ出ようとする)


ラジオ:(ふっと呼び止める)ジルバ


ジルバ:ん?


ラジオ:また、置いてきぼり?


ジルバ:(笑って)まさか(外へ出ていく)


ラジオ:(ペンダントを見つめ、涙を拭って微笑む。教会の入り口まで歩いて行き、ジルバとクロムの会話を聞いてしまう)?


ジルバ:……っ


■教会の扉の前でジルバを待っていたクロムが、出てきた彼に話しかける。


クロム:お供します。ジルバ


ジルバ:(煙草を吸いながら)……クロム、お前は――……なんなんだ?


ナレーター:当然のように返答する。


クロム:私は。一種の幻覚から創り出される人間の空想心理現象が具現化された物体と。

現実の、ラジオ・リール及びジルバット・コルク本人の心臓、臓器、身体組織の大量生成・細

胞分裂、複製によりつくられた。人類人型の――


ジルバ:そういうことを聞いてるんじゃねえ。


クロム:一言で言えば、私とモノクロは貴方であり。ラジオであり。

::人間と呼ばれるモノに最も近しいモノと言えます。

::人が私をモノクロだと認識した場合、私はモノクロという存在になるのでしょう。


ジルバ:モノ……か。ラジオは本当に何も覚えてねえんだ。今までのように、ずっと黙っててくれ


クロム:了解しました。


ジルバ:(煙草の箱を見て)これがー、モノクロなんだ!っていう思い込みが。

:: みんなの中からお前の存在を見えなくさせちまってるのかな?

:: まるで、俺には……お前の存在を否定された事で。

:: いつかラジオまでふっと消えちまうんじゃないか(箱を握りつぶす)って。怖いよ。


クロム:…………


ジルバ:よくわかんねえか。あ~あ

ナレーター:煙草の火を消す

クロム:それは、


ジルバ:ん?


クロム:例えば貴方の存在が否定された場合。モノクロが消滅する可能性が在るという事でしょうか。


ジルバ:なんだ。クロムも動揺したりするんだな。


クロム:モノクロが消滅すれば、私の存在理由は無くなります。


ジルバ:はは。殺し文句。今度モノクロに言っとくよ


クロム:ジルバ


ジルバ:へいへいっと


クロム:ラジオは私という存在にいつか必ず気付くと思われます。


ジルバ:確証は?


クロム:ありません。勘です。


ジルバ:(溜息混じりで)お前たまにそういう適当なとこあるよな。


クロム:貴方ははじめモノクロを私だと認識していましたね。今の貴方以外のものたちとは対称的です。


ジルバ:だから何だよ。そりゃ何年も前の話だろ?


クロム:しかし、自分の存在を定義する事でモノクロの存在に貴方は気付いた。


ジルバ:その推理も確かじゃないって。だってー


クロム:ラジオは自分の正体を知りません。理解できない状況に在るからです。


ジルバ:……結局何が言いたいんだよ。


クロム:……


ジルバ:クロム


クロム:貴方がラジオを解放する事で。私たちの道が開けるのではないでしょうか。


ジルバ:あいつに真実を伝えろって?まだ17だぞ?現実を突きつけるには早すぎる!


クロム:今現在彼女を最も他者として扱っているのは、貴方です。


ジルバ:それはー……


ナレーター:ジルバ、口篭る。


ジルバ:否定はしない。あいつを檻に閉じ込めているのは俺自身なのかも知れない。でも


クロム:先程言った通り。ラジオは、モノクロで在り。私自身です。貴方の恐怖がラジオを隔離し。

::貴方の心理意識がモノクロと私を何かの鎖で繋ぎ止めていると思われます。


ジルバ:……


クロム:ジルバ。貴方はー


ジルバ:失うよりましだった!消えてなくなるよりずっといい……!


クロム:……


ジルバ:お前にもモノクロにも。俺は生きていて欲しかったから!


ナレーター:雨がしとしと降り始める。ラジオそっと自分の部屋へ戻る……。


ジルバ:ランプさんだってそうだ。……俺は責任を取りたいんだ


ナレーター:暗転と同時に落雷。豪雨。(ラジオの母)ランプの声がジルバの心に響く。優しい世界。優しいその声。しかしもうそれは、二度と聞くことの無い声ー……。


ランプ:ねえジルバ。もしもの時はモノクロとクロムをお願いね。

::わたしはこの二人を本当の息子と娘だって思っているわ。はやく目覚めて欲しい。

::目がさめたらラジオに紹介して誕生日会をしたいなって思ってるんだけど、どうかしら。

::人間として生まれてくるの。この二人は。

::アンドロイドじゃなくて、人間として、生きていって欲しいの。


ジルバ:ランプさん……俺は……俺も、そう思います。


ランプ:最初はね、確かにただラジオの兄弟作りのためだった。でも開発を続けていく内に。

::この二人は、わたしとビッケの新しい愛の形なんじゃないかって思うようになったの。

::もしかしたらいつかわたしとビッケの意思を継いでくれる人が現れて。

::人類の役に立つ開発をしてくれるんじゃないかって思う。それを願ってる。


ジルバ:そうだ。モノクロとクロムは、貴方が夢見たアンドロイド。あんな事が無ければきっと……

::  


ナレーター:ランプとビスケットのモノクロム開発研究所。赤い警報が鳴り響く。:


ビスケット(モノクロ):一体どうしたっていうんだ!?


ジルバ:モノクロとクロム、自律起動を始めています!


ダナ:停止出来ません! 突然起動を始めました!


ビスケット:そんな馬鹿な! ランプ、電源を落とすんだ!


ランプ(クロム):駄目よ! 今日のプログラミングのバックアップとってないもの!


ダナ:そんな事言ってる場合じゃないですよ!


ジルバ:モノクロとクロム、起動停止を拒否! ランプさんどうしますか、このままじゃ!


ランプ:(巻き舌)うっさいわね!! わかってるわよ!!!


ダナ・ジルバ:こわ……


ビスケット:お、鬼のランプ……


ランプ:なに!!?


ダナ・ジルバ・ビスケット:なんでもないです!


ランプ:まったく……。って、なにこれ。戦闘プログラム!? なんでこんなものが……

::クロムの感情ユニットが書き換えられてる! モノクロは?!


ビスケット:モノクロは平気だ! ただ……何だ? 不明のシステムが入ってる!


ランプ:それ、解除出来ないの!?


ダナ:だめです!


ジルバ:内側からロックかかっちゃってますよ!


ランプ:ハーブはどこ行ったのよ!?


ジルバ:今日は午後から墓参りに行くって


ランプ:(パソコンを叩いて頭を掻き毟る)も~! こんな時に! 役に立たないわねあの男は!!


ダナ:起動プログラム、尚も進行! シャットダウン出来ません!:


ランプ:そんな。どうして止まらないのよ!? 二人の意思で動いてるとでも言うの!?


ビスケット:ランプ! 一から戦闘プログラムを消去していっても侵食されるスピードに間に合わない!


ランプ:どうしたらいいの……なんでこんなことに……


ジルバ:モノクロとクロム、起動開始します!


ランプ:そんなっ! だめよ二人とも! まだ駄目! 今起動したら!


ジルバ:起動まであと20、19、18……(カウントを続ける)


ランプ:モノクロ……クロム……一体どうして


ビスケット:ランプ……(ランプの肩を抱く)


ジルバ:!! クロム、フリーズしました!


ビスケット:フリーズ!? 何が原因でー


ランプ:ビッケ見て! クロムがモノクロの中に!


ダナ:融合体制です!!


ビスケット:そんな。こんなことがありえるのか?


ジルバ:モノクロとの強制融合を開始! このままではキャパが耐え切れずに両方暴走します!


ダナ:ランプさん……!


ランプ:……


ナレーター:ビスケット、不安に震えるランプの手を優しく握り締める。


ランプ:ビッケ……


ナレーター:二人頷きあう。


ランプ:モノクロとクロムの融合を許可します! みんな、協力して下さい。


ビスケット:ランプ……


ランプ:ジルバ! ダナ!


ジルバ・ダナ:はい!


ランプ:全制御システムを解除!


ジルバ:了解!


ダナ:良いんですか?


ランプ:ええ。基礎ネットワークをデリートします。


ダナ:了解しました。


ビスケット:……


ランプ:大丈夫よ。ちょっと誕生日が遅れるだけ。


ビスケット:うん……


ランプ:ごめんね



ランプ:ラジオ、もうちょっとだけ待っててね


ナレーター:雨の音と、落雷音。






<シーン4>


ナレーター:落雷音と激しい雨の音。教会のラジオの部屋。


ラジオ:(窓の外を覗き込んで)うっわっ! すごい雷! 教会壊れちゃうかも!


ジルバ:(部屋に入って来て)大丈夫だろ。


ラジオ:ちょっ! ジルバ! ノックもしないで勝手に入って来ないでよ! ばかっ!(枕を投げる)


ジルバ:(避ける)思春期の男の部屋じゃあるまいし。別にいいだろ?


ラジオ:よくない! って、……雨降られた?(布団の上にあったタオルで頭をふいてあげる)


ジルバ:(くしゃみ!!!)っ!!


ラジオ:あはは。大丈夫?


ジルバ:ぅ゛~


ラジオ:(笑って、呟く)……ーもう、行っちゃったかと思った。


ジルバ:あ?


ラジオ:一人で先にダナの所に行っちゃったかと思ったの!


ジルバ:は? さっき行かないっつったろ?


ラジオ:「行かない」とは言わなかったっ!


ジルバ:何ムキになってんだよ(座る)


ラジオ:だって! いつだってふらふらどっか行っちゃうんだから


ジルバ:そんなことないだろ(煙草を取り出す)


ラジオ:あるよ! 自覚無いのっ!?


ジルバ:……


ナレーター:ジルバがラジオの顔を見て笑い出す。ラジオもそれにつられて笑い出してしまう。タオルをジルバの頭にバサッとかける。


ジルバ:ダナにいくら借りてるんだ?


ラジオ:え?


ジルバ:お前の収入だけじゃ無理だろ?


ラジオ:(言いにくそうに)毎月、15。


ジルバ:15!? ……ぁー……んー……。まあそうか。


ラジオ:無理なのかな


ジルバ:何が


ラジオ:結局。自分一人の力でみんなを守る事なんて


ジルバ:もとから無理だろ。ダナがいなきゃお前ら全員餓死してんな


ラジオ:っやめてよ! 何でそんな風に言うのっ!(瞳が潤む)


ジルバ:じょ、冗談だって! 馬鹿、


ラジオ:ジルバの意地悪!


ジルバ:おいっおまえそんな、簡単に泣くなよ


ラジオ:確かに、子供達を拾って来ちゃったのはわたしだけどっ!

::はじめはジルバもモノクロも協力してくれるって言ってくれてたじゃんっ!


ジルバ:わかってる。わかってるって!


ラジオ:わかってないよっ! ジルバもモノクロもいっつもそう! 何も言わずに出て行って、何も言わず 

::に帰ってくるんだから!


ジルバ:……ごめん


ラジオ:謝るくらいなら一言言ってから出掛けてよっ……


ジルバ:ごめんな


ラジオ:……:


ジルバ:ラジオ


ナレーター:ラジオの頭を撫でる……。クロムが二人分のお茶を持って部屋にバタンと入ってくる。


クロム:ラジオを泣かせて玩んでいるのですか。ジルバ


ジルバ:もてあそんでいませんっ  


クロム:そうですか。


ジルバ:勝手に入ってくるなよ


ラジオ:ジルバは人の事言えないでしょ?


クロム:ラジオ、どうぞ。(お茶を渡す)  


ラジオ:あ、ありがとうモノクロ  


ジルバ:二人ともラジオには甘いし優しいんだよな……(クロムからお茶を受け取って飲む)


クロム:それは貴方も同じでしょう。

::しかし貴方の場合、別の感情から発せられる行動であると認識できますが。


ジルバ:はあっ!? うっるせっ!


ラジオ:なに?


ジルバ:お前には関係ない


ラジオ:なんだよっ! また仲間はずれ?


ナレーター:クロム、ラジオの額に触れる。

ラジオ:? なに?:


クロム:ジルバ。氷を詰めて持ってきて下さい。


ジルバ:は?


ナレーター:ラジオを抱き上げてベッドに寝かす。


ラジオ:ゎっ! ちょ、


クロム:40度前後の熱があります。このままでは命に係わります。


ジルバ:!!


ナレーター:ジルバ、部屋を飛び出して行く。


ラジオ:へ、平気だよ? ちょっと熱いだけだから、すぐ


クロム:大人しくしていて下さい。薬を探してきます。


ラジオ:ここには、薬なんてない! いつも病気したらダナが注射打ってくれてるから


クロム:ではダナの所に行ってきます。


ラジオ:子供たちは? 子供たちも迎えに行ってくれない?


クロム:今は、貴方の熱を下げるのが先です。


ナレーター:部屋を出て行こうとするが、ラジオに咄嗟に呼び止められる。

ラジオ:クロム!!


ナレーター:クロム、振り返る。表情は変わらず。瞬きして。


ラジオ:なんで 貴方を忘れていたんだろう。……ごめんね。辛かったよね。


クロム:ラジオ


ラジオ:お母さんはきっと、わたしの為に貴方とモノクロを……


クロム:……


ラジオ:わたしが兄弟が欲しいなんて言ったから。子供が産めるような身体ですらもうなかったのに。

::わたしのせいで無理させちゃったのなぁ。わたしとジルバの身体をもとに、貴方たちを創って


クロム:ランプ博士は、御自分の寿命を知っていました。

::それでも、貴方の願いをどうしても叶えたかったのでしょう。


ラジオ:……うん。わかってる。わかってるけど……でも


クロム:ラジオ。わたしとモノクロはあなたとジルバ、そしてランプ博士とビスケット博士によりこの

::世に生まれ出る事を許可された生命体です。貴方は、


ラジオ:ねぇっ。それって、すごい事だよね。ひとがひとをつくれたって事だもんね……


クロム:はい。わたしたちモノクロム戦闘機のコア・基礎理論は、ランプ博士により設計されました


ラジオ:せんとうき……?


クロム:貴方の身を最優先で守るため。プログラムされています。


ラジオ:ちょ、え、戦闘なんて……モノクロとクロムは人間として創られたんでしょ?

::そんな機械みたいな特別な力なんて。どうしてついてるの?


クロム:貴方を守る為です。


ラジオ:お母さんが、そのプログラムをしたってこと?


クロム:それはわかりません。


ラジオ:…………


クロム:ラジオ。わたしは、子供たちと薬を取りに行ってきます。


ラジオ:えっ、ひとりで?


クロム:いいえ、一人ではありません。モノクロも一緒です


ラジオ:そっか


ナレーター:クロム 部屋を後にする。


ラジオ:…………


ナレーター:ジルバの足音。


ラジオ:!


ナレーター:ジルバが部屋に戻ってくる。


ラジオ:ジルバ


ジルバ:大丈夫か? (氷枕をラジオに渡し)……あれ?(部屋を見回す)


ラジオ:クロムならダナの所に行ったよ。薬を取ってきてくれるって。


ジルバ:そっか、ん?クロム?


ナレーター:ラジオ、服を脱ぐ。


ジルバ:うわっ!?


ラジオ:なに?


ジルバ:い、いや、まぁ今がチャンスだからな。でも焦る事は無いんだぞ、夜は長い(ぶつぶつ):


ラジオ:何言ってんの? 汗かいたから着替えるだけだよ。


ジルバ:あっ、そっ、そっか。


ナレーター:ラジオに背を向けるジルバ


ラジオ:あのね。子供たちの事もね、教会のことも、別に心配はしてないんだ。

::ダナはわたしが傷付く事はしないから


ジルバ:は!? じゃあさらう事だってしないだろ!


ラジオ:週一位で子供たちいっつも勝手に連れてっちゃうの。


ジルバ:はあ?


ラジオ:面倒良く見てくれてるんだ。ダナは小児科医だし。優しいんだよね


ジルバ:そうか……


ラジオ:子供たちもダナになついてて。一緒に住まないかって、ずっと言われてる。だから教会を壊し

::たいんだと思う


ジルバ:一緒に暮らせるからか


ラジオ:うん。


ジルバ:良いのか?


ラジオ:良いわけ無いでしょ。ダナは良い人だけど、一緒に暮らす程の愛情なんか持てないよ。


ジルバ:ふーん


ラジオ:大丈夫! ダナに借りてる借金は一生かけてでもちゃんと返すから。 さっ! 行こ!


ジルバ:え?どこに?


ラジオ:病院!


ジルバ:病院て……お前そんな身体で、無理すんな。寝てろよ


ラジオ:ぜんぜん大丈夫っ!(ずかずか部屋を出て行こうとする)


ナレーター:ふらっと倒れてしまうラジオ。ジルバ、助ける。


ジルバ:馬鹿。寝てろっつってんだろ


ラジオ:平気なのっ! はなして!


ジルバ:ラジオ


ラジオ:心配なの


ジルバ:?


ラジオ:クロムとモノクロ……あの二人……


ジルバ:何だよ、どうした。


ラジオ:ジルバも知ってるんでしょ?どうして……二人が創られたのか


ジルバ:……ラジオ……


ラジオ:どうしても止めなくちゃいけないの! わたしは二人を、

::お母さんとお父さんがわたしに残してくれたものをまもりたいんだよぉっ!


ナレーター:ジルバ、ラジオを立たせる。


ラジオ:……


ジルバ:どうしても行きたいんだな?


ラジオ:うん!


ジルバ:わかった。行こう


ナレーター:ジルバ、ラジオの手を引いて教会を出て行く。






<シーン5>


ナレーター:ダナの病院最上階。ダナの部屋。部屋にはラジオの隠し撮りの写真。ポスターやグッズが沢山貼ってある。


ダナ:はあ……


ナレーター:ベッドの上で何やら手紙を書いているダナ。(昼間ジルバに殴られたほっぺには湿布がしてある)


ダナ:「愛しのラジオへ。君は今日、どんな夢を見ながら眠っているのかな?」

::う~ん。ありきたりだな。「こんばんはラジオ!今度僕と釣りに行かないか?」

::ん~……最近オススメのデートスポットは何処だろう?(旅行ガイドをPCで検索)


セピア:ダナ様っ★待ちに待ってた侵入者が来ましたようっ★

ナレーター:ダナの枕元にきゃぴきゃぴした女のセピアが現れる。彼女はクロムと同じ赤い髪の色をしている。


ダナ:おや! ラジオかなっ?


セピア:ブッブー! はずれっ★黒い男の子ですようっ★


ダナ:なんだ。モノクロか


セピア:モノクロ??


ダナ:ああ。行きたいのかい?セピア


セピア:ランプ博士の創った、モノクロム戦闘機のプロトタイプでしょ??


ダナ:そうさ。君に勝てるかな?


セピア:勿論ですっ★せぴあにお任せあれっ★


ダナ:お土産はラジオがいいなあ


セピア:善処致しますっ★ダナ様っ★


アナウンス:侵入者を確認。三階のハンガーを通過。直ちに排除して下さい。繰り返します。

::  病院棟内に侵入者を確認。三階のハンガーを通過………………


ダナ:セピア、大丈夫?モノクロはきみより強いかも。警備員なんて役に立たないだろうし


セピア:しんぱいごむよう! ですよっ★ いったいだれがせっけいしたと思ってるんですか??


ダナ:ははは。何を隠そうこの僕さ!


セピア:ダナさまがお医者さんをやってるのはオモテのかおですもんね★ ふふふっ★

::それじゃっ! いってきますっ★


ナレーター:セピア、部屋を出て行こうとする。部屋の扉が開き、モノクロが飛び出してくる!


セピア・ダナ:!!(セピア、ダナを守るように武器を構える)


ダナ:おやモノクロ。随分早かったね。しかし静かにしておくれ?子供たちが寝付いたばかりでね


モノクロ:ダナ、ラジオが高熱で倒れてしまって……


ダナ:何だって!? そ、それは大変だ!! セピア、私の救急セットを!!(うるさい)


セピア:あいっ★!(救急セットを用意する)


ダナ:……君たちが外国から何か病原菌を持ってきたんじゃないのか?


モノクロ:オレとクロムはちがうよ。あらゆる抗体があるもん


ダナ:じゃあジルバか。あの男、私の婚約者になんて事を!!


モノクロ:婚約? ジルバとダナが?そういう関係だったの? 時代は変わるね


ダナ:えっ? ち、ちが!


セピア:おめでとうダナさまっ★ おめでとう! おめでとう!(拍手か花吹雪)


ダナ:セピア……きみは調整が必要かな


セピア:???


モノクロ:セピア?


セピア:はぁいっ★ はじめまして、オリジナルモノクロム


モノクロ:! 君は……その髪の色、クロムと一緒? まさか


セピア:あたしは、モノクロム戦闘機No.004966


モノクロ:そんな……どういう事だダナ!


ダナ:そういう事だよ


モノクロ:母さんの設計図を盗んだのはやっぱり!


ダナ:そう。基礎原理・原則・理論。君を創りしランプ博士の計算はとても素晴らしかった。


モノクロ:……ダナ、


セピア:用意できたでありますっ!


ダナ:ああ、それでは行こうか。


モノクロ:ダナ、オレはここに残りたいんだけどいいかな


ダナ:子供たちが心配かい?


モノクロ:うん。


ダナ:じゃあこの子を置いていくよ。仲良くやってくれたまえ


セピア:はいっ。行ってらっしゃいっダナさま★(救急セットをダナに渡す)

::はやく帰ってきてくださいねっ★


ダナ:はいはい。行ってくるよ


ナレーター:ダナ、ラジオのもとへ。


モノクロ:…………(ベッドの側で子供たちの寝顔を見ている)


セピア:ねぇ、おにいちゃん


モノクロ:なに?


セピア:哀しいの? ないてるの?


モノクロ:……なんだろう、この気持ち。わからない


セピア:……モノクロ


ナレーター:セピア、モノクロを後ろから優しく抱きしめる。


セピア:哀しいんだね


モノクロ:どうしても会わなくちゃいけない人がいるんだ


セピア:でも、会ったらきっと哀しくなる。貴方はそれを、はじめから知ってたんだね


モノクロ:セピア、オレたち全員の中には。二人の女性と二人の男性がいるんだ。


セピア:ランプ・リールと、ラジオ・リール。ビスケット・リール、ジルバット・コルク。

::の四人ですよねっ★


モノクロ:そう、みんなオレの大切な家族だ。


セピア:モノクロ……クロムはここにいるの。会ってあげて


モノクロ:?


セピア:こっちよ。きて


ナレーター:セピア、部屋の奥にモノクロを誘導し。奥のカーテンを開ける


セピア:クロムの意識は貴方のなかに。クロムの身体は、ダナさまがずっと保管して守っていたの


モノクロ:クロム……!


ナレーター:そこには、美しい花に包まれたクロムが眠っていた。


セピア:ランプ博士とビスケット博士に頼まれて。

::ダナさまはハーブさまとお二人で、モノクロムの研究を受け継いで下さってたんだよ


モノクロ:盗んだわけじゃなかったのか、ダナ。でもどうして隠したりしたんだ?

:: それと、ハーブって


セピア:ハーブ・ベルナス。ダナさまの実父で、ランプ博士とビスケット博士の親友。

::ランプ博士とビスケット博士の死去後は。お二人の意思を継ぎ、モノクロム戦闘機を完成させました。


モノクロ:オレたちを完成させたのはダナじゃ……


セピア:ほとんどのプログラム補正、仕上げ補修はハーブさまが行いました。


モノクロ:……。セピア、ハーブ博士に会いたいんだけど。


セピア:先月感染症でお亡くなりになりました。


モノクロ:えっ!? そ、そう……か……。


ナレーター:クロムの顔に触れるモノクロ。


モノクロ:クロム


ナレーター:ぱっと瞳を開くクロム。クロムの身体から強烈な光が発せられる。


セピア・モノクロ:!!!


ナレーター:部屋にクロムの起動と同時に煙がたちこめ、クロムが二人の前に現れる。


クロム:…………


ナレーター:クロム、モノクロを突然攻撃する。


セピア:あぶないっ!!


ナレーター:セピアがモノクロをかばう。


モノクロ:セピア!?


クロム:私は、


モノクロ:クロム……


クロム:私はこの日を待っていました。モノクロ


ナレーター:クロム、自身の武器でセピアの背中を突き刺す!!


セピア:ぁ……――


モノクロ:っやめろ!!!


ナレーター:モノクロがクロムの手を払い、セピアを助ける。セピア、起動停止してしまう。


モノクロ:クロム、どうしてこんな


クロム:モノクロ……私ー……


モノクロ:!?……くろ


クロム:たすけて、クダサイ


ナレーター:クロム、剣をモノクロに向けて振り上げる


モノクロ:クロム!?


ナレーター:クロムのコア精神からの”心”の反応と、スローター戦闘プログラムがぶつかり合っている。


クロム:私ハ、貴方、を……ころしたくないっ


ナレーター:暗転同時に機械音が鳴り響く。


モノクロ:ああああぁぁぁぁぁっ!!!!!


ナレーター:病院の玄関。ラジオとジルバ。






<シーン6>


ナレーター:病院の玄関に走ってくるジルバとラジオ。


ラジオ:(空を見上げて)クロム……モノクロ……


ジルバ:大丈夫か?


ラジオ:だいじょうぶ、急がなきゃ


ジルバ:無理すんなよ


ラジオ:へいきっ!


ダナ:(玄関から出てきて)おや、ラジオ


ラジオ・ジルバ:ダナ!?


ダナ:熱があるんだろう?こんな所で何してるんだい


ラジオ:も、モノクロは!?


ダナ:私の部屋で子供たちを見ているよ。(ラジオの顔、首に触れて)熱いな、注射を打つよ。

   腕をだして(救急セットから注射を出す)


ラジオ:(腕を出す)……ダナ、モノクロがクロムの身体に触れたらどうなるの


ダナ:え? そりゃあモノクロの中にクロムの意識が入っているんだから、(注射を打つ)

   モノクロがクロムに少しでもショックを与えたりしたらクロムは復活……


ナレーター:時が止まる。


ダナ:復活……して


ジルバ:クロムのスローター戦闘プログラムは? 解除出来たのか?


ナレーター:ダナ、黙って首を横に振る。


ラジオ:モノクロが危ない!


ダナ:まって、ラジオ、止血を


ラジオ:早くしないとこのままじゃクロムにモノクロがっ!!


ジルバ:落ち着けラジオ。ダナ、お前クロムのスロータープログラムを一人で解除しようとしてるのか?


ダナ:きみには関係無いよ。


ジルバ:無いわけあるか。クロムは俺の妹みたいなもんなんだ。俺だってランプさんの研究を


ダナ:スロータープログラムを取り付けたのは僕の父さんなんだよ!!


ジルバ・ラジオ:えっ!?


ラジオ:ハーブさんが?でもハーブさんはお父さんとお母さんの親友だったんでしょ。どうして……


ダナ:ラジオ、父さんは……


ラジオ:?


ナレーター:玄関からクロムとモノクロが闇と共に三人の目の前に現れる。


ダナ:!! どうやら……もう手遅れのようだ。(救急セットからナイフを取り出して構える)

   ジルバ、ラジオを守りたまえ! 来るぞ!


ジルバ・ラジオ:!?


ナレーター:暗闇の中から飛び出してくるクロムとモノクロ。ダナ、ラジオ、ジルバに奇襲をかける。


ラジオ:きゃああっ!?


ジルバ:ぐっ!!? も、モノクロ!? おい、どうしたんだよ!


モノクロ:……


ナレーター:ジルバの声がまるで届いていない。攻撃を止めないモノクロ、クロム。


ラジオ:ダナ!


ダナ:何だいラジオ!


ラジオ:何か弱点とか無いの!?


ダナ:ないね。


ラジオ:なんでないのよ!?


ダナ:クロムがもし目覚めてしまった時の為に。セピアを創ったり。色々研究していたんだけどねえ


ジルバ・ラジオ:役立たずっ!!


ダナ:基礎理論において解明出来ない部分が多すぎるんだよ。この子達モノクロム戦闘機は。

:  セピアのコアも私が創ったわけじゃないし。父さんも何も教えてはくれなかった……


ラジオ:なんとかしてよっ! このままじゃわたしたち殺されちゃう!


ダナ:う~ん……


ジルバ:モノクロ! クロム! ――っラジオ!!


:クロムとモノクロがラジオ目掛けて剣を振り下ろす!!


ラジオ:!!!


ナレーター:ジルバがラジオを庇って斬られる。


ラジオ:ジルバ!!


ナレーター:クロムとモノクロ、容赦無くジルバを何度も斬るー


ラジオ:やめて……やめてぇっ!!!!!


ナレーター:あたりが青白い光に包まれて行く。


ダナ:ラジオ!!


ナレーター:光が晴れる。ジルバを支えているラジオを、クロムの太刀から守って立っているモノクロ。


ラジオ:モノクロ!


モノクロ:ラジオ、ダナ。ジルバを頼むよ。


ラジオ:モノクロ……


ナレーター:ダナ、ジルバの身体を診る。クロム、モノクロに斬り込んでくる。二人の殺陣。


ダナ:大丈夫だ。この位なら助かる!  


ラジオ:う、うんっ!


ダナ:あの二人……制御コードが働いたのか?

:  いや、スロータープログラムはこんなコードじゃ解除出来ない筈。じゃあどうして……


ジルバ:(気付く)ラジオ……


ラジオ:ジルバ! 大丈夫?ごめんね、


ジルバ:お前を守れって、ランプさんに言われてるからな


ラジオ:ジルバ


ナレーター:クロム、モノクロを蹴落として首ギリギリに剣を突き刺す!


ラジオ・ジルバ:モノクロ!


ナレーター:クロムの腕を止め、睨み合う二人。


クロム:モノクロ、私は


モノクロ:クロム……


クロム:貴方のコアを破壊する為に。ハーブ博士はスローター戦闘プログラムを追加したようです。


モノクロ:!


ラジオ:何の為にそんなこと!


ダナ:……


クロム:貴方にお願いがあります。


モノクロ:?


クロム:このまま戦闘を続ければ、私のコア精神フィールドが耐え切れず。

  エネルギー不足を超えるまでスローター戦闘プログラムが暴走を開始します。

  そうなる前に、私の機能を停止させて下さい。


モノクロ:……そんな


ジルバ:馬鹿野朗っ!! 何でんな事、モノクロに頼むんだよ!!


クロム:貴方達では、私に傷一つ付ける事が出来ないからです。


ジルバ:うっ……確かに……


ナレーター:再び二人、殺陣をはじめる。


ダナ:ジルバ、ラジオ


ラジオ:なに?


ダナ:父さんの書斎と研究室に行けば、戦闘プログラム解除のパスワードが分かるかも知れない!


ラジオ:ほんとう!?


ジルバ:行くしかないな!


ラジオ:うん!


ダナ:そういうことだ! だからもう少し耐えていてくれ、モノクロ!!


モノクロ:わかった!


ナレーター:三人はハーブの研究室と書斎へ。


モノクロ:クロム。もうすこしの辛抱だから


クロム:……


ナレーター:剣を合わせる。暗転。






<シーン7>


ナレーター:書斎と研究室は繋がっている。


ラジオ:わたしは研究室の方をみてくるねっ!


ダナ:ああ(書物を漁る)


ジルバ:(書物を手にとって)お前……クロムの身体を自分家に封印してた事。何で黙ってたんだよ


ダナ:何のことだい?


ジルバ:しらばっくれんな! はじめからこの街に有るって分かってれば、

::わざわざ遠回りなんかして俺はあいつを一人ぼっちにしなくてすんだのに!


ダナ:はぁ……


ジルバ:おい


ダナ:君はラジオの事を考えていない


ジルバ:何だと!?


ダナ:あの子を悲しませていたのは君だろう


ジルバ:!


ダナ:淋しい思いをさせたくなかったのなら一緒に連れて行けば良かったんだよ


ジルバ:だめだ。それじゃあ子供たちが


ダナ:今度は子供達を言い訳にするのかい?


ジルバ:……


ダナ:僕には 父さんの気持ちがわかる。


ジルバ:意味わかんねえよ。何で親友の子供にわけわかんねぇプログラムつけてんだよ!


ダナ:親友ならつけないさ


ジルバ:?


ダナ:憎かったんだ。ランプさんに愛されるビスケットさんが


ジルバ:は!? 何言ってんだよ……ハーブさんには奥さんがちゃんと、


ダナ:父さんは母さんの事なんてちっとも愛していなかった。だって セピアは母さんなんだ


ジルバ:どういう事だよ


ダナ:病気になってあっという間に死んでしまったと思ったら。

   父さんは母さんをモノクロムの実験台として利用したんだ!


ジルバ:ダナ……


ダナ:誰かに分かって貰おうとは思わない。でも、僕だってラジオがすきだから。

   ランプさんに振り向いて欲しくてやった父さんの気持ちが分かるんだ。


ジルバ:……


ダナ:例え非情と言われ様とも 父さんはモノクロの中に眠るビスケットさんを傷付けたかった。

   クロムの中に眠るランプさんにスロータープログラムを取り付け。

   クロムの手でモノクロを殺害するように……仕向けたんだ……


ジルバ:…………


ダナ:ははっ。馬鹿だな。そんなもの、どうしても許されないことだ!


ジルバ:えっ


ダナ:いくら好きでも やっていい事と悪いことがある! 僕の父さんは最低だ……

  そう思うだろ?ジルバ


ジルバ:あ、ああ……


ダナ:親友にも愛するヒトにも家族にも酷い事をして……穢れた魂のヒトだよ。まったく


ジルバ:きらい なのか?


ダナ:ん? ……う~ん どうかな。


ジルバ:ダナ


ダナ:ずっと君に申し訳なくてさ


ジルバ:?


ダナ:僕の父のせいで、リール一家だけでなく 君も沢山のものを失った。

   だから相談できなかったんだ どうしても

   父のせいで戦闘兵器にされてしまったあの二人を 僕一人の力で解放してみせて。

   驚かせたかった


ジルバ:……


ダナ:僕は父さんとは違う。それを証明したい


ジルバ:……十分だろ


ダナ:まだまださ


ジルバ:(小声で)ありがとな


ダナ:ん?


ジルバ:いや俺、やっぱさ。もう一度……研究したい。力貸してくれよ このままじゃイヤなんだよ。

 身寄りの無い俺を我が子のように育ててくれたランプさんに申し訳がたたない……。だからダナ


ダナ:それはー……ろくでもない戦闘機の開発かい? ジルバ


ジルバ:……ちがう。家族作りだ!今度こそランプさんとビスケットさんの夢を叶えるんだ


ダナ:僕は高くつくよ?


ジルバ:上等!


ナレーター:二人、がっと手を合わせる。


ダナ:戦線布告だ。ラジオの事も 僕は諦めたりしないよ


ジルバ:ラジオのことは俺はべつに……


ダナ:じゃあ僕が貰うよ?


ジルバ:好きにしろよ。俺はモノクロとクロムと一緒で。ラジオを守るようにランプさんに言われてる:  

::だけなんだって!いわばそうプログラムされてんのっ


ダナ:あはは。じゃあ……どうして


ジルバ:?


ダナ:一年前。寝ているラジオに黙ってキスしたりしたのかな?


ジルバ:!!


ダナ:ラジオが言ってたよ。どうなんだい?それも彼女を守るための行為かな?


ジルバ:……


ダナ:いいけど、ラジオは君の事どう思ってるのかなぁ


ジルバ:……ラジオは……


ラジオ:(ジルバの背後に近付いて)なに?


ジルバ:ぅわっ!!?!


ラジオ:えっ?!ご、ごめん。そんなに驚かすつもりなかったんだけど……


ダナ:何か見つかったのかい?


ラジオ:なあんにも。そっちは?


ダナ:おんなじだ。何か記録日誌でもあればわかるかと思ったんだけどね


ラジオ:んー……


ジルバ:……


ラジオ:ジルバ?


ジルバ:俺が、ラジオを解放すれば……


ラジオ:えっ?


ジルバ:クロムが言ってたんだ。

::俺がお前を解放すれば、クロムとモノクロの道が開けるかも知れないって


ラジオ:??どういう意味?


ダナ:ふむ……二人とも。僕も研究室を見てくるよ


ラジオ:あ うん


ジルバ:……


ラジオ:ジルバ?


ジルバ:俺は


ラジオ:うん?


ジルバ:お前が……帰る場所だった


ラジオ:……


ジルバ:なんでもない。


ナレーター:ジルバ、ラジオに背を向けて書物を漁る。ラジオ、ジルバに近付いてジルバの服の裾を掴む。


ジルバ:どした?


ラジオ:こっち向かないでっ!


ジルバ:は、はいっ!


ラジオ:ジルバはどうしてそんなにがんばるの?


ジルバ:?


ラジオ:自分の居場所を 確立させたいの?


ジルバ:!……


ラジオ:はじめはねジルバのご両親を探して旅してるのかなって思ってた。いつかはその親元に帰る 

::からって、だから苗字を変えないでいるのかなって思ったの。……でも違ったよね。

::ジルバはお父さんとお母さんの事すごく尊敬してたし、みんなに愛されてるのもちゃんと知っ

::てた。モノクロとクロムはあの二人が命を賭けてこの世に生み出した、わたしとジルバの兄弟

::だから。ぜったい助けるんだって……思ってるんだよね。きっと


ジルバ:ラジオ……


ラジオ:でも、でもわたしだって役に立ちたいよ!どうしていつもなにも言ってくれないの?


ナレーター:ジルバ、溜め息と共にその場に座り込む。


ラジオ:?


ジルバ:俺がお前を兄弟として見れないからだよ


ラジオ:え?


ジルバ:俺にとってクロムとモノクロが兄弟でも、お前にとって二人が兄弟でも、……

::俺は……お前のことが……


ラジオ:……


ナレーター:轟音と共にクロムとモノクロがその場に飛び込んで来る!


ジルバ・ラジオ:!?!!


ナレーター:クロム、モノクロに跨って殴る。そのまま戦闘再開。モノクロの隙をついてクロムが腹から地面へ蹴り落とす。


クロム:ビスケット……お前が憎いんだ……お前が……悪いんだよ!!!!


ナレーター:モノクロ弾き飛ばされる。ラジオとジルバはモノクロを庇う。


ラジオ:モノクロっ!!


ジルバ:クロム!?


モノクロ:クロムの意識が コアに眠っていたハーブ博士に乗っ取られかけてるんだ……


ラジオ:そんなっ


ジルバ:あの人、そんな事まで


モノクロ:完全にクロムの意識が消えかけてる……もうクロムは……限界だ……


ラジオ:モノクロ


モノクロ:ジルバ。オレのコアを壊して


ジルバ:は!? 何言ってんだよ……!


モノクロ:これ以上はクロムが……苦しむから。オレが壊れればハーブ博士の意識もクロムのコアか

:: ら消えるはずだ。頼むよ……

 

クロム:ジルバ ヤメテください



ナレーター:三人の間に斬り込んでくるクロム。モノクロが受け止める



クロム:貴方を失って。私はどうしろというのですか


モノクロ:クロム かなしいの……?


クロム:この痛みは 貴方から流れてくるものです


モノクロ:そうか……


クロム:ジルバ


ジルバ:えっ?


クロム:何とかして下さい。


ジルバ:!


ラジオ:クロム……


クロム:このままでは。このままでは……わたしはいやです


ジルバ:クロム


クロム:私は 悔しいです



ナレーター:クロムとモノクロ斬りあい続ける。



ジルバ:自立型の……


ラジオ:え?


ジルバ:消去されたはずの感情プログラムを、クロムは自分の力で再構築したんだ……


ラジオ:そ、そんな事出来るの?


ジルバ:さあ。でも あの二人は人間として生きる為に創られたんだ。だからありえるかも。

それとあいつ……はじめて俺に頼み事なんかしたな


ラジオ:……嬉しいね


ジルバ:ああ







続く

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