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「ねえ、答えてよ」


 アレクサンドラの声色は今まで聞いたことのないくらい、配慮を欠いたものだ。当然、弁明する余地はひとつもない。

 だけど、「僕」の心を支配していたのは謝罪の気持ちでも、まして日記を読まれたことへのむかつきでもなかった。またひとつ、僕には新たな「予感」が芽生えていた。



「……うん、そうだよ。事実だ。この家には昔小さな女の子が住んでいて、その子の名前はティナだった」


「フルネームはマルティナ・フォン・シェーファー。シドウ・シェーファーと僕の間に出来た子どもだ」


「けど君の言う通り、彼女は3年前に死んだ。そしてその次の年、この家に君がやってきた。僕たちは君のことをティナと呼ぶようになった」


「……特別な意味はないよ。済まないと思ってる。でも僕はそれだけ、かつての娘のように君を愛しているんだ。君は許してくれないかもしれないけど、これは真実なんだ」


「そう」


 また、遮るようなひとことだった。奇妙に思えて、「僕」はふたたび彼女のほうを見るけど、顔つきには何の変化も見て取れない。

 よりいっそう奇妙だ。なぜって今の一言(たった2文字の発音にすぎないけど)、声色にさっきまでと明らかな違いがあったからだ。さっきよりもあきらかに、激動するものを押し隠している。怒っているように思えたけど、どうやらそれすらも違う。

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