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僕の意識は回想のなかへまどろむことなく、再び現実へと引き戻された。ふと、久しぶりに掛け時計へ目をやるけど、そもそも何度の日夜を過ごしたか覚えていないから、時間の経過はわかるはずもなかった。
天井のしみを見つめるのをやめてみると、首の付け根が自分の身体でないみたいに痺れて、温さもまったく感じない。思い切りつねってみても本当になにも感じないから、もしかして、これもまた夢なのかと一瞬本気で期待してしまった。
むろんなにも進展はない。心なしか少しだけ、回想するほかに思考を差し向けることができるようになれたかもしれない。たぶんもう、彼女たちを悼んではいないからだろうか。
つまり、僕はもう彼女たちが死んでいた事実に対して嘆き悲しんでいるわけではないのだと思う。それは浅ましく感じる心の変化だけど、紛れもなく僕にとってよい変化だ。




