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聡明な夢の中の僕はようやく真実に辿り着くことができた。記憶を解き明かすための欠片は、もう十分に取り揃えられたのだ。けれど、いまの僕はあんまりに手持ち無沙汰だった。代償は替えのきかない、それでいて僕にとって大切なものばかりだった。そして、やっとのことで取り戻したその記憶すら、犠牲から僕を救い出すことはせず、むしろすべてを裏切り、慟哭するこころをより深淵へ堕ちいれるだけだった。
それだけ真実は無慈悲で、ほんの少しの子種を僕にくれてやるかわりに、ひどいやり方で何もかもを奪い去るものだった。すべてを失って僕は、いまだ記憶と向き合うことができないまま、ただ失望と嗟嘆とにくれている。
雪の降る季節のなか、その家は刺すような冷たさにあるようでいて、それを感じさせないくらいの温さにも満ちていた。いまこの家はただ、どうしようもなく寒くて、凍りついた床と僕自身が同化していくような錯覚におちいるくらい、熱のあることを許さなかった。これ以上なく、殺伐としているといってしまってもいい。僕は血のりのついたシャツを着ているし、女の腹には穴が開いている。子供部屋は強姦殺人の現場なのだから。
悲しみをひけらかすわけではなく、ただ僕は嗚咽を混ぜて崩れ落ちた。
明晰夢なんかじゃない。これこそが「現実」だ!




