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僕が話すことをやめたとき、それからこの家はいやに静かになった。僕はティナにほかの選択肢を与えないよう、視線を外したりすることはなかった。ティナの目線にはさっきよりもあきらかに、思慮と困惑に満ちた情緒が見て取れた。
「……正直言って、どうしてかわかりません。私も、どうしてこの家で、諒人さんと、シドウの3人でいるのかが」
「あの人と私も、似ていると思うときはもちろんあるんですけど、お互い……姉妹という関係からは、少し離れているような気がしていました」
「もし、諒人さんがそのわけを知ることができるなら……すごく嫌な予感がするけど、そうするべきなのかな、って思います」
話し終えてから数拍置いて、ティナは粛々と、自らの首元に手をかけた。整えられたネクタイの結び目を崩して、ワイシャツのボタンをひとつづつ、淡々と外していった。3つ目のボタンを外した時点で、ティナは僕に背を向けて、ブレザーを脱ぎ、右手をシャツの裏側へすべり込ませた。指で挟み込むように、器用にホックを外すと、そのままシャツを脱ぎ下ろした。
露わになった蒼白の素肌には、いたるところに、ちょうどシドウの唇のような、細い針金がびっしりと結われていた。




