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……でも、僕はいつまでも冷静なままだった。すべて明らかにするべきだ。
ようやく事実に向き合えたように思えた。もう、彼女に真実を聞く必要はないし、ほんとうは、なにもかもシンプルな答えに収束していたのだ。
「……諒人さん? 大丈夫ですか?」
ティナの声がした。気がつくと、さっきまでのめまいも、動悸も、不調はもうどこにもなかった。ひたすら冴え渡っている。カート・コバーンは自分の頭を散弾銃で撃ち抜いたけど、きっとその瞬間彼はきわめて冷静で、揺れ動くことのない、水面のようにフラットな思考のもと行為に移れたのだろうと思う。なにもかもを予見できるとき、人は自らの行動に疑問を抱くことはありえない。兵隊は誰も何も考えないのだ。
流し台のふちに手を置いて、僕は伏せていた顔をティナのほうへ向けた。整った目鼻が、いびつに動じたように見えた。
「諒人さん……どうしたんですか……いま、すごく怖い目をしていますよ……」
「……ごめんね。大丈夫だよ」
さらに立ち上がって、僕はキッチンの入り口に立つティナのほうへ半歩身体を進めた。
「でも、さっき言ったことを撤回しようと思うんだ。夕飯のあとに聞きたいことがあったけど、やっぱりやめるね」
「そのかわり、ひとつ確かめたいことができたんだ。すぐ済む。いますぐしてほしいんだ」
僕はあらためて、ティナのほうを見すえた。
「……なに、をですか」
「服を脱いでくれ、ティナ」




