表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/75

43

 僕はさっき手に取った絵本のことを思い出した。あの内容はたしかに暗示めいていて、考えてみればあの夢こそが「ミッシング・ピース」に他ならなかったのかもしれない。物語は終盤、「ピース (Piece)」が「ラジオ」のもとを離れ、ひとりで旅をはじめようとする。でも、「ミッシング・ピース」の名の通り、彼はもともと「ラジオ」の一部だったから、その形状はいびつで転がることもままならない。くじけそうな彼は「ラジオ」に泣きつくけど、「ラジオ」は彼に「角は取れて、丸くなるものさ」と諭す。

 きっと「ラジオ」の言葉は、彼にとってひどく冷たくて、残酷なものだったと思う。だけど、それこそがいまの「ピース」にもっともふさわしい言葉だったであろう。それが突き放すような意味だったとしても、まちがいなく彼のためを想って言った言葉なのだ。

 いま確かめることも、証明することも叶わないけど、シドウが僕へ最後に残した言葉はきっと残酷だと信じていたい。僕があの言葉の意味を知れたなら、もう少し早く「現実」にたどり着けたかもしれない。もっとも、ひとりで旅をはじめた「ミッシング・ピース」とは違って、僕はいつまでも遡行していて、ずっと眠っていられたらどれだけよかっただろう、と本当に思っているのだけど。



 ふと顔を上げ、眠るシドウの身体を見た。すっかり体温を失った僕の手のひらは、彼女の首元をなぞって、うなじを持ち上げた。

 彼女の唇は刺すように冷たくて、鉛の味がする。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ