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昔から自分の顔が好きでなかった。べつだん整ってはいないし、目鼻立ちも起伏がなく凡庸だった。もちろん目立つ顔なんかじゃない。ビルボードを飾るようなアーティストたちのジャケットを眺めるたび、見とれるとともに、どこかで自分をあざ笑い(あるいは慰めていたのかもしれない)、いつも落胆していた。夢見がちだったけど、それも含めていろいろな意味で平凡な少年だったと思う。
いまになって思えば、僕は彫りの深さだとか、明瞭な顔立ちにコンプレックスがあったのだろう。はじめて父親に会ったとき、自分に外国の血が流れていることを知り(僕の父親はイギリス人とのハーフだった)、僕はそのときこそ喜べたけど、すぐにそれはささやかな失望と憎悪に変わった。だからといって何も変わるはずはなくて、窓硝子に写る自分の顔は平坦なままだったからだ。
だからシドウに対して、僕はある種憧れていたのかもしれない。どちらにしろ、彼女へ向けた執着のそのわけには、容姿だけでなく、少なからず羨望があったと思う。
彼女は僕を必要としてくれて、彼女の中で僕は特別な存在だったけど、僕は彼女を見てはいなかった。羨望や嫉妬、それから自己嫌悪で僕の目は濁りきっていて、それが僕の中の彼女を陽炎みたいに眩ませていた。




