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 たぶん飛び起きたに近かったんだと思う。思い切り吸い上げた空気は湿気を欲して、身体中がいっきょに乾いていくのをつぶさに感じる。声が出ず、そのあとはごく短かな間隔で嗚咽のように呼吸するだけだった。動悸が止まらない。

 とにかく現実をむさぼった。「記憶」は戻らなくてもそれでも、今しがた見たらしいとんでもなく恐ろしい夢を払拭したかった。内容は覚えていないけれど、それがあんまりに衝撃的だったのだ。

 髄の痛む感覚が止まず、でもそれが今の僕には「夢」からの脱出を実感させた。何よりもそれが僕を落ち着かせ、呼吸は単調さを取り戻していった。


 首すじを撫でる感触があった。悪寒とともに、それは僕の上を這いずって、そして離れた。重い体躯だったけど、その行為が僕を揺動し、視界がはじめて平行を向く。

 影めいたシドウの姿。僕に対し、やけに思慮がちな目を向けている。それを通してはじめて、いまさっき突如倒れこみ昏倒したのだろうということを僕は察した。


「ごめん……大丈夫だよ」


 目線にあった、いっしゅの殺伐さが抜けたのを感じながら、僕の口は一瞬のあいだ紡がれる。思順がそうさせたのだ。

 危険な思考だ。もし真実を知ったとして、それは充足したいまほどの価値があるのか……と。剰さえ、僕はそれを行動に移そうとしている。もしかしたら、この二人がたちの悪い誘拐犯なのかもしれないのに。

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