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しかし日当たりのよいその部屋からは、ほかよりも少しだけ温い空気が吹きぬけた気がした。東向きに大窓があるから、この時間ここは本当に暖かいのだろう。事実として横たわる死体の現象はシドウよりも早く、斑が身体中にまで及んでいる。見たところ首筋や腋、足の付け根といった大きな血管のある場所を始点として繁茂していくようだった。
僕ははっと思い出したように、棚から適当な服を引っ張り出した。全裸で放置されたその姿があまりに痛々しいからだ。ワンピースを着せてみようと、おもむろに腕を持ち上げてみてはじめて、全身の関節が固まっていることに気づいた。
ただでさえ細い体躯だから、これ以上力を入れると折れてしまう気がして、いよいよ僕はあきらめてしまった。結局ため息混じりにシーツを被せ、できるだけ目にふれないようするのがせいぜいだった。
立ち上がった僕は、ベッドの横に佇む小さな机に目をやった。ちょうどホテルに置いてあるようなあんばいで、一段の引き出しが備わるだけの簡単な造りのものだ。
もし現実とこの空間に一定の共通点があるとすれば、引き出しの中には僕の日記がある。
さいきんメタルを聞きながら文章を書くとほのぼのした感じになることに気づきました




