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ふたたび目を開いたとき、僕は頬に伝わるものを感じた。机につっ伏しているけど、そこに包容するような温もりはなくて、どうしようもなく寒く、乾いている。顔を上げた拍子に伝い落ちた滴は、ささくれた床板があっというまに吸ってしまった。
また同じ夢を見ている。
わかったことは、現実の僕がこの夢を決して思い出さないことだ。そして、僕はとんでもなく大切な過去を「忘れている」。つまり僕には、この夢で躍起になる理由ができたのだ。
可能性のはなしに過ぎないけど、これが僕の心理の見せる、いわゆる「記憶の海」ならば、ここに真相へつながる断片があるのかもしれない。現実に持ち帰ることはかなわなくても、せめて「僕」は知りたかった。
僕が目覚めたのは二階、もともとは物置に使われていた部屋だ。
屋根裏に位置する空間で、窓も明かりもなく、一年中じめじめした暗がりだけど、夏だけは異様に涼しく、寒い時期以外はいつもここで寝泊まりをしている。いわば僕の部屋みたいなかっこうで、椅子や机、ベッドが備えてある。




