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 その左手は、彼女の髪を生え際からゆったりと撫で下ろした。渇いた素肌とうって代わり、みずみずしく滑らかなその感触は、わずらわしく繕われた理性から僕を解き放つにあたり、十分すぎる効力を持っていた。

 ついで僕の右手が、シドウの顎先から唇の端ほどに手をかける。シドウは拒むことなく、むしろ首を右手のほうへ沿わすように傾け、こちらを伺うように目を配せてきた。


「……今日のシドウは変だよ」


 こんな言葉がふさわしいわけじゃないけど、僕は言わずにいられなかった。


 今しがた明確に、はじめて「ふしぎ」と思うまでに成長したこの感覚、「距離感」と形容すればいいのか、でも納得には及ばない微妙な違和感……とにかく腑に落ちない。何かが違う。この一瞬を通じて、僕はシドウに対して「雇い主」だとか「気になっている女性」とかとは一線を画す、不自然なまでに親しい感覚を得た。

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