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 まずは表情。彼女の顔は、ふだんの張り付いたようなそれとは裏腹に、彫刻のような目鼻がたしかな笑みを浮かべているが、それだけじゃなかった。

 口に針金が結われていないのだ。解放された口元は緩く引き上がり、うっ血したような青紫色をしている。彼女を彼女たらしめ、アイデンティティーたるそれがないことは、端正な顔立ちをより美しく際立たせ、結果としてこの蒼白の肢体と相まって、あまりに扇情的なありさまを見せている。死体には目立った欠損が無いように思えたけど、よく見ると下腹部のほうから広く、血の滲んだ跡があった。黒いワンピースをしっとりと濡らし、ぬらぬらとした艶を出しているのが分かる。もしかして、と思って自分のワイシャツを確認したところ、やはり掠れたような赤黒い血痕が付着していた。

 服の袖に手をかけたところで、僕は躊躇する。いくら夢の中とはいえ、女の子の服を許可もなく脱がせるのは当然はばかられる。すこし考えて、僕は行動をやめた。たぶん銃撃による失血死だろう。


 僕は視野を部屋全体へ向けた。このソファーが置かれる空間は居間になるけど、あまり雑多なものは置かれていない。

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