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この感覚は、過去に何度か経験した覚えがあった。確認するなら、いま僕は自分自身の顔を思い切り殴っても、「痛くない」と思えば痛くないだろうし、「空を飛びたい」と思えば、台所の窓を飛び出して空中を駆け昇ることだってできるはずだ。拳銃で頭を撃ち抜いてもなんともないだろうし、ナイフでめった刺しにされたってたぶん血の一滴も出ないだろう。
つまり明晰夢。ここは、僕の脳内が現実を模倣して作り出した、僕だけの意志が反映される世界だ。聞こえこそSFのような、荒唐無稽に聞こえるかもしれないけど、結局のところ想像の世界であり、ここには僕の願望や不安、記憶などの感情が基づいているにすぎない。だから、一見してあまりに不自然なこの状況に、僕が動揺するはずはなかった。僕自身が想起したことであり、たしかな理由が存在するからだ。
まずは身の回りを把握する必要がある。シドウの死体には他にも、いくつかのおかしな点が見あたった。




