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僕は思わず息を飲んだ。さっきの反響が、ますます大きくなるのを感じながら、シドウの眼、一挙手一投足に注視する。しかし嘲笑するみたいに、椅子をずらす音が響いて、そのままシドウは席を立ち、日常の喧噪の中では聞き取れないような、小さな足音を立て自身の部屋へと行ってしまった。
……その時こそ、僕の心は悪寒のようにどっとささくれ立ったけど、しかしまた、一瞬のうちにそれは紀憂だと分かった。何やら察しのつかない物音とともにもう一度、シドウの部屋の扉が開かれたからだ。
シドウはそれを、まるで汁物の定食を運ぶようにして、両手を据え持っていた。そしてひどく繊細に、もの静かな手つきで、卓上、僕の目の前に置いた。
モノクロームに仕切られた盤、整然と並び立つ縦長の駒。まさかとは思ったけど、これは彼女の「回答」に間違いなかった。
僕は口角を必死に縛り上げて、彼女の顔を見た。首を小さく傾け、動じることのないはずのそれはまぎれもなく、どこか懐疑的な目つきで表情を語っている。
僕はできるだけはっきりと、余すことのない笑みを彼女に向けた。
「いいよ。僕もチェスは好きだからね」




