お義母さんの突然の訪問
義理の母親と息子か嫁か子供か。それともその義理の母親の夫のことを書こうかと思ったが、結果こうなりました。以前ショート動画や動画サイトのニ十分くらいの動画物を見たことがあって、その様子を思い出しながら最後描きました。どうぞ。
「よくやっているじゃない」
義理の母親の突然の訪問と、唐突な話の切り口に唖然としてしまって、言葉を返せないでいた。
すると、義理の母親は、
「褒められたら、”ありがとう”って返事してくれたらそれでいいのよ」
とほほ笑んで、私の出した紅茶を美味しいと言って飲んだ。
何が起こっているんだ。
今日こんなひと時を過ごす予定などあったか?
少々気まずくなった関係性から五年以上お互いに訪問し合わなかったし、大した連絡もていなかった。夫の仕事が忙しいことや子供の習い事など好きなことに夢中でスケジュールの調整が付きづらいことで、さらに罪悪感も何のそのとなっていたのだ。毎年恒例のお盆や新年のご挨拶にもあまり顔を出さなかったことについて嫌味を言われるのを覚悟した私。
お母さんが、右手をおばさんのおしゃべりスナップを利かせた仕草で、
「ほら、どうしたの?”ありがとう”だけよ。言ってごらんなさい。それとも、もしかして私が想像した以上に疲れがたまっているの?あの子ったら何やっているのかしら」
と言って、心配そうな表情を見せた。
私はあわてて、
「いえ、私は大丈夫です」
「大丈夫じゃない人に限ってそういうのよ」
と請け合ってくれずに、お茶請けに出したお菓子を食べるお母さんは、
「じゃ、あなたのここ一か月の大まかなこの家の過ごしたことと一週間の一日のスケジュール時間割を教えてみなさい」
「えっスケジュールをですか?」
「そうよ」
ぴしゃりと肯定して後に引きそうにないお母さんに、
「わ、分かりました」
と告げて席を立ち家族の予定が書かれている手帳を取りに行った。
いや手帳を見せるのかと思ったが、ちらりと振り返って見たお母さんと視線が合ってドキリとする。
恐る恐る手帳を持って先ほどの席に移動する。そして先月分のマンスリーのページを開いて伝える。
「先月分はこのようなスケジュールでした」
「この色分けは?」
「夫とわたしと子供たちのスケジュールです」
「まぁ、あなた家族全員分のスケジュールを手帳に書いて管理しているの?」
「ええ、まぁ。夫は出張や朝早い仕事の日の予定が書いてあってそれに合わせて私も買い出しや家族と過ごす予定を決めているので、もちろん弁当の用意などもありますし」
「それで」
「子供は習い事があってそのスケジュールの管理を場合によっては送り迎えなどもときどき行って、必要になった物についてや欲しいものの買い出しを一緒に行ったりストレス発散できるように出かけたりの予定が」
「そう」
「あなたもストレスたまるでしょうに。ヘアサロンの予定くらいしかあなたのもの書かれていないじゃない」
「そ、それは。こどもと出かけたついでに私も少し発散を兼ねて軽食を楽しんだり、しているので」
「そう。では、あなたひとりでどこかへ出かけるのは、家に必要な買い物以外ではヘアサロンだけ?」
「そうですね。先月は」
と答えを返すと、お母さんは眉間にしわを寄せて、
「まぁ」
と否定的な態度で上半身を少し後ろに引いたくらいだ。
とっさに私は言った。
「お母さんお褒め頂きありがとうございます」
「そう、そうよ。私が言った誉め言葉しっかり受け止めて、自分でも自分を褒めなさい。あなたにはそれが必要だわ」
「こどももしっかりしてきて子供同士で過ごす時間もさらに増えるでしょうし。今後はあなたもあなたのことを聞いてあげなさい。あなたの心の声は何をしたいのか、を」
お義母さんが自らの心の声の在りどころが胸元あたりにあるかのように、右手を下にして左手と共に自らの胸元に両手を添える仕草をした。
「わ、私の心の声?」
「そうよ。もっとキッチンは片づいた状態になっていて欲しいとか」
「た、確かに。思わなくもない事柄」
「そうでしょう。リフォームを進めているわけじゃないの。ただたとえば、今ある物の整理整頓をする。巷で流行っている断捨離をして物を減らして整えてから今必要な分を調えるでもいいと思うの。これなら大したお金をかけずにあなたはあなたの生活圏を整えることに集中する時間を設けて、あなたという生活を充実させてもいいんじゃないかと思っているの」
「お、お義母さんどうされたのですか?」
「子供も巣立って、この方。あの夫の話しばかりでイライラするようになってしまって。家で出来る趣味を満喫するのはいいけれど。本当に家に居るものだから。私が何かしら用事を作って外出しなければならないの」
「は、はぁ。な、なるほど。お義母さん、ここよりもお店の方が良いですか?」
「いいえ。ここで良いわ。ここが良い」
「そ、そうですか」
「どこか出かけたい?」
「いえ、そういうわけでは」
紅茶を飲んで、自分の運転でお義母さんと出かけることに悲鳴を上げそうになる。
グッとこらえて、提案する。
「もうすぐお昼の時間もきますし、何か出前でもとりましょう」
「出前」
「ええ、そうです。お義母さんの好みに合いそうなものあったかしら」
と家の電話の傍に保管しておいている出前を紹介するチラシを何枚か手にして席に戻ってお義母さんに選んでいただく。
すると、
「これが良いわ。これにしましょう。私が奢るわ」
「いいんですか?」
「ええ。その代わり」
「なんですか?」
来た!今日訪れたお義母さんの本題だ!
選ばれなかったチラシの紙をまとめている私の手を握ってきて、目を合わせてお義母さんが言う。
「付き合って欲しいことがあるの」
「その付き合って欲しいこととは?」
このためのスケジュール確認だったか?
お義母さんは一度手を離すと、ご自身のカバンから広告を取り出して訴えてきた。
「私と一緒にこれを受けてみて欲しいの」
その広告の内容は、お義母さんがさきほど私に提案していた家の整理整頓をサポートする個人事業主から手作りのお知らせをする用紙だった。
”あなたの家のなかなか片づけていても片づかないなどの問題を解決サポートいたします!今流行の断捨離を行うもよし、残しておくものに対しての収納の仕方のアドバイスや実際に一緒に収納するのもよし!一度いかがですか?”
というものだった。
写真でこの仕事を始めた本人の顔が映っている。
「えっ」
私はもう一度この顔写真を見て、目の前のお義母さんの顔を見た。
「お、お義母さん。こ、これ。この写真の人物って」
「そう、始めて見たの」
「なっ!?」
開いた口がふさがらないような気がしていたら、さらにお義母さんは衝撃な一言を言い放った。
「あなたを助っ人で頼みたいのだけれど」
「えー、この家の状態を見てもそういうんですか?」
「まだマシよ。世の中にはもっと現状がすごい方いらっしゃるんですから」
「それはそうですけれど。お義母さんがこの断捨離を受けてみたいから付き合ってって言うのかと思ったのに。どういうことですか」
「言ったでしょ。距離を置く機会を得るためであり、年金以外の生活費を確保するためでもあるの」
「しゃ、社会復帰されたいと」
「そう。一応収納アドバイザーの資格も取ったしさらに勉強もしているのよ。あなたもどうかと思って」
「どうって」
「そりゃ、主婦しながら副業みたいに時々手伝って欲しくて」
「私の予定が合わない時はどうするんですか?」
「それは先方とも調整させていただきますとも」
紅茶を飲もうとしてもう空だったのを忘れていた。この小さなことにも腹が立ってきた。
どうしよう。
「紅茶を淹れ直してきます」
「ええ」
紅茶を淹れようとキッチンへ赴いて思った。お義母さんの実力を見るためと自分のキッチンが片づいた状態になるように、ここをお義母さんに仕事として見ていただいたらどうか。自分が第一号か分からないが、チラシの謳い文句のようにみてもらったらどうだろうか。
そうだ。そうしよう。
ちょうど断捨離には困らないくらいに物は溢れているのは確かだし。見えずらいところも物が入ってはいる。取捨選択したり整理したりしなければならないと思っているところは家の中にあった。
紅茶を淹れ直してお義母さんにお茶のお代わりを淹れながら、伝えた。
「それでは、私のこの家の断捨離や整理整頓をお手伝い願えますか?」
「それって」
「ええ、正式な依頼です。そちらに定められている金額設定を参考に金額については交渉させていただきたいです」
「・・・・・・分かりました。その依頼お受けいたします」
「お義母さん。本気なんですね」
「ええ。でしたら、出前を一旦保留にしていただいて、整理整頓や断捨離をする日を調整しましょう」
「はい。分かりました」
席につき今月の予定を見る。
「さっそく来週はいかがでしょうか?」
「それでしたら、おそらく水曜と木曜日が空いています」
「そうですか。行いたい範囲は?」
「それでしたら、この家全体。特に室内についてでお願いします。夫や子供の物については事前にしておいて欲しいことを教えていただいてもよろしいでしょうか。予定日までに行っておいてもらいますので」
「ええ、分かりました。それでは、来週の水曜と木曜に。何時頃がよろしいでしょうか?」
「そうですね。水曜でしたら、午前も午後も空いてます。私の手が空くのが朝九時以降になります。子供が帰ってきて夕飯の支度をし始めるのが遅くとも夕方四時半頃なので、それまでには終わっていると有難いです」
「分かりました」
お義母さんが、手帳を鞄から取り出してメモしていく。ちらりと見た手帳の中には何件かの依頼が入っているようで予定が書かれていた。
「お義母さん。実はもう始めてから数か月は経っているのですか?」
「いいえ。一年は経っています」
「わーお」
「ふふふっ」
お義母さんは帰っていった。お昼の出前を取ることもせずに。そして、当日。怒涛のように始まった断捨離と整理整頓は二日間に及び、合計十時間以上かけて、四十五リットルの市販のゴミ袋をニ十袋分の資源ごみと燃えるゴミ、不燃ごみ、リサイクル品を出して、棚や使用していないアウトドア用品などを粗大ごみで出した。
お義母さんのきっぱりとした発言をするタイプを裏切らないその決断を促す的確な言葉をこちらに与えて、判断するための私の基準を作り上げる様は圧巻だった。
本当に頼んで良かったと思った。
そして、その本気っぷりに私はどれだけくらいついて行けるのか分からないが、助っ人として参加した場合の報酬を聞かせていただいて、早速履歴書を作成して、お義母さんに送った。
私もあれから整理整頓や断捨離について独学で学び、助っ人として働いています。
いかがだったでしょうか。家にある物と向き合っていますか?私は実家暮らしで、家にある物を断捨離したり整理整頓する機会があって、その時から日常生活で疲れがたまったりイラついたりすると断捨離をしなければいけないんじゃないかと、物と向き合っています。あの当時は家族みんなの分を見ていきましたが、今はほとんど自分の物だけで済んでいます。まぁ、生活協同空間の物も断捨離することはありますが、以前よりも家族が参加してくれているので無理に断捨離はせずに、時折するくらいにしています。まぁ、ぼちぼちにしつつ徐々に分からないくらい徐々に整えさせてもらっています。




