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近江の国友屋庄左衛門でおます  作者: 双鶴


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エピローグ

八幡堀の水面は、今も静かに町を映している。庄左衛門の姿はもうない。だが、彼が掲げた暖簾の言葉は、風に揺れながら町の人々の心に残り続けていた。


「売り手よし、買い手よし、世間よし」――その三つの響きは、世代を超えて受け継がれ、町の子どもたちの口からも自然にこぼれた。


時は流れ、江戸の町は変わり、大坂の市場も姿を変えた。だが近江商人の理念は変わらなかった。心得帖は家々に残され、家訓として読み継がれた。商人たちは新しい時代の波にさらされても、誠実を忘れず、信頼を守り抜いた。


ある若き商人は、師の言葉を思い出しながら旅に出た。

「利益は一時のもの。信頼は永遠のもの」

その言葉は彼の心を支え、遠い土地でも人々の信頼を得る力となった。


町人は語り続けた。

「近江商人の品は信頼できる」

農民は祈り続けた。

「肥料で田が肥え、子らの腹が満たされる」

船頭は声を張り上げた。

「荷を運べば町が潤う」

子どもたちは誇らしげに唱えた。

「父母の商いが町を育てる」


群像の声は時代を超えて響き、理念は共同体の遺産となった。


夜、八幡堀の水面に月が映る。安土の炎は遠い記憶となったが、その炎が生んだ理念は今も生きている。水面に映る月は、未来への希望であり、近江商人の誇りであった。

その理念は終わらない。庄左衛門の声は水面に残り、未来を照らし続ける。

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